このアレックス・テレスと左サイドを支える選手、すなわち、中島翔哉とはポジションを争うことになるライバルとしては、前述のコロンビア代表FWルイス・ディアスが候補だろう。その中でも左サイド候補の選手のうち、現状最も監督からの信頼が厚いのは、ブラジル人MFオタービオ・モンテイロだ。

 オタービオはどのような役割を与えられても器用にこなす、ユーティリティ性の高い選手だ。4−3−3の場合はインサイドハーフに組み込まれることが多いが、一方で、4−4−2の場合は、左右どちらでもクオリティを維持できるサイドアタッカーとして重宝される。昨季終盤には、エースのブラヒミをベンチに追いやり、左サイドで起用される例が目立った。

 彼の特徴は、選手としての総合力の高さ。中盤で起用されれば、自陣後方のビルドアップに加担して、低い位置から決定的なパスを配給。自らドリブルで相手を剥がし、数的有利の局面を独力で生み出すこともできる。サイドで起用されれば、右サイドからは精度の高いクロスを放っては相手ゴールを脅かし、左サイドからは破壊力抜群のミドルシュートでネットを豪快に揺らす。当然、敵味方両方の噛み合わせやチーム状況を踏まえてあらゆるポジションで起用されるため、中島にとっては、ポジション争いのライバルになる場合もあれば、自らのチャンスを演出してくれる相棒にもなり得る。

メガクラブへの登竜門で活躍することができれば…

 中島にとっては、このようなヨーロッパでも指折りの実力・ブランド力のあるクラブで、未来のフットボール界を背負うスターの卵と競い合いまたは共演する、またとないシーズンとなるはずだ。

 ポルトの愛称は『ドラゴンズ』であり、文字通り、欧州のメガクラブへの“登竜門”として、数々のスター監督・選手を輩出してきた。モウリーニョ監督期のカルバーリョ、パウロ・フェレイラ、デコ。ビラス・ボアス監督期のフッキ、ファルカオ、ハメス・ロドリゲス。そして、セルジオ・コンセイソン監督期のエデル・ミリトン、フェリペ、E・エレーラ。すでに「監督としての登竜門」をくぐり抜けようとしているセルジオ・コンセイソンに率いられ、中島は自らも「選手としての登竜門」を元東京ヴェルディという共通点を持つフッキのように通過できるだろうか。その先に、もしポルトミュージアムに像が建立されるほど躍動する中島翔哉の姿があったのなら、日本サッカー界にとってはこの上ない誇りだろう。

文=FutePor-ふとぽる-
写真=ゲッティイメージズ