ちなみに、ポルトのかつてのホームスタジアム「Estádio das Antas(エスタディオ・ダス・アンタス)」は、EURO 2004の母国開催に伴い、現在のホームスタジアム「Estádio do Dragão(エスタディオ・ド・ドラゴン)」に建て替えられた。創立10周年を迎えた2013年には、隣接するミュージアム「Museu Futebol Clube do Porto(ミュジ・フットボール・クルブ・デ・ポルト)」が建設されたが、そこにはモウリーニョやビラス・ボアス、フッキらの像が建立され、今でもポルティスタにとって崇拝の対象としてまつられている。

モウリーニョを上回り覇権奪還を成し遂げた現指揮官

 ハイライトの最後は、現監督のセルジオ・コンセイソンが王座奪還を果たした2017−18シーズンだ。ベンフィカにリーグ4連覇を許し、5連覇を阻止せんと意気込んだ監督初年度に、モウリーニョが2002−03シーズンに記録したクラブ歴代最多勝ち点記録86を上回る同88を積み上げ、ポルトに5シーズンぶりのリーグタイトルをもたらした。

 2018−19シーズンこそ、ベンフィカにリーグタイトルを譲り、2つの国内カップ戦はスポルティングの後塵に拝する屈辱に見舞われたが、CLではベスト8まで進出。この年優勝を飾ることになるリヴァプールにこそ敗れはしたが、ベスト16では延長戦の劇的ゴールでローマを下すなど、ポルトにかつての勝負強さを取り戻す2シーズンを過ごした。

 このような印象深い歴史を経て迎える2019−20シーズン。セルジオ・コンセイソン率いるポルトは、上記2シーズンで完成させたチームのいちサイクルを終え、転換期を迎えようとしている。

中島翔哉への期待が重くなる理由

 守護神のイケル・カシージャスは、シーズンオフに心筋梗塞で倒れ、今シーズンのプレーは見送りに。クラブスタッフとしてチームの成長を手助けしながら、自身も回復を図る1年間を過ごす。

 守備の要であった2人のブラジル人、エデル・ミリトンとフェリペは、それぞれレアル・マドリードとアトレティコ・マドリードに移籍。アトレティコには、昨季キャプテンを務めた中盤の要、メキシコ代表MFエクトル・エレーラも引き抜かれた。

 攻撃の主軸であったアルジェリア代表FWヤシン・ブラヒミは、アル・ドゥハイルから加入した中島翔哉と入れ替わる形でカタールへ。欧州各国クラブからの関心が伝えられる中、フリーでアル・ラーヤンへと移籍した。(ブラヒミのゼロ円移籍については、選手を「安く買って高く売る」商売に秀でたポルトが、珍しく売却の判断を読み違えた失敗例と言えよう)

 彼らはまさに、セルジオ・コンセイソンが2シーズンで築き上げた黄金時代を彩る中心選手。その穴を埋めるために、今季から日本代表MF中島翔哉、コロンビア代表FWルイス・ディアス、アルゼンチン代表SBレンゾ・サラビアら、それぞれの所属国からコパ・アメリカに出場した若き代表選手を獲得し、チームの再構築に挑んでいる。

 セルジオ・コンセイソンは、対戦相手に応じて4−4−2と4−3−3を使い分ける。中島翔哉はいずれの場合も、ポルティモネンセや日本代表と同様、得意の左サイドが主戦場となるだろう。ポルトの左サイドは、チームの得点機が多く演出されるまさにチームの生命線であるため、10番を背負う中島への期待はその番号以上に重い。

チームの“核”は左サイドの住人たち ポルトにおける戦術的キーマンは、紛れもなく左SBのアレックス・テレス。攻撃に持ち味があり、毎シーズンポルトガルリーグのアシストランキングで上位に名を連ねる。その左足から放たれる高精度なクロスを前線の屈強なFW陣がゴールに結びつける形は、ポルトの重要な得点パターンのひとつになっている。また、その左足はセットプレーにおいても威力を発揮。特に、コーナーキックに高身長の選手がニアで合わせる形は一撃必殺の必勝パターンと言えよう。中島翔哉を含め、左サイドアタッカーとして起用される選手は、カットインして自らゴールへ向かうのか、アレックス・テレスのオーバーラップを利用するのか。ゴールに直結するための認知・判断の質がハイレベルに要求される。