運動後も脂肪が燃え続ける「アフターバーン効果」とは?(写真:Ushico/PIXTA)

梅雨明けしたと思ったら、あっという間に8月。「今からでも急いでダイエットしたい」「でも時間がない」という人たちに最適なのが「HIIT(ヒット)」です。1日たった160秒ほどの運動で、脂肪燃焼と筋肉量アップが同時に叶うという最新トレーニングについて、医師であり科学者でもある川田浩志氏に聞きました。

なぜ数分で効果があるのか、そのヒミツは、運動後も脂肪が燃え続ける「アフターバーン効果」にあるといいます。

時間のない現代人にぴったりの効率のいい運動法

近年、世界の医療界、プロスポーツ界を中心に注目を集めている「HIIT(ヒット)」という最新のトレーニング。フィットネスクラブやリハビリ施設などでも取り入れられるようになっているので、ご存じの方も増えてきているかもしれません。

前回記事でも詳しくご紹介しましたが、このHIITがほかの運動とどう違うのかというと、週に2、3回、1回たった数分程度の運動をするだけで、ダイエット効果や筋トレ効果、健康効果が表れること。つまり、「圧倒的に短時間で大きな効果が期待できる」からです。

科学的なエビデンスも多くあり、先述したように、リハビリ施設でも導入されているので、安全な運動であることも折り紙付きです。

このHIITのやり方を簡単に説明すれば、文字どおり「高強度(High Intensity)の負荷のかかる運動と休憩を短い間隔(Interval)で繰り返すトレーニング方法(Training)」ということです。

つまり、数十秒ほど全力(もしくは全力に近い力)で動き、ちょっと休憩して、再び全力で動き、休憩する……ということを数セット繰り返すのです。

このトレーニングに適した運動はたくさんあり、例えばダッシュでもいいですし、スクワットやバーピー、ジムならランニングマシンや適切な負荷をかけたエアロバイクなどでもできます。

時間のない現代人にとって、HIITは実に効率のいい運動法だといえるでしょう。

「でもちょっと待って、有酸素運動は20分以上続けないと脂肪燃焼効果が得られないってよく聞くけど?」

という疑問を持つ人もいるかもしれません。確かに、ウォーキングやランニングなら30分〜1時間ほど続けなければ効果が出ないイメージがあります。

しかし、HIITには、ある大きな特長があるのです。それが、「アフターバーン効果」。

これは、「EPOC(excess post-exercise oxygen consumption)効果」とも呼ばれるもので、簡単にいうと、運動を終えた後でも普段より酸素摂取量が増えていて、エネルギー産生が続く状態のことです。しかもその際、エネルギー源として脂肪が優先的に使われます。つまり、運動後、休憩中も寝ている間も脂肪が燃え続けるということです。

このアフターバーン効果はちょっとした運動では十分得られません。EPOC効果は最大酸素摂取量の50〜60%以上の運動強度で、運動するほど増加し、運動後3〜14時間、場合によっては24時間程度も持続することがわかっています。

たった160秒間の運動で、就寝中も脂肪が燃え続ける!

2017年に発表された研究結果を紹介しましょう。これは、HIITとアフターバーン効果の関係を調べたものです。


この調査研究では18〜35歳の男性をHIITグループ(20秒間のオールアウトのトレッドミル・ランニング(=全力ダッシュ)と10秒の休憩を8セット実施)と持続運動グループ(最大心拍数の90〜95%の負荷で30分間、トレッドミル・ランニング)に分けました。

運動後の酸素摂取量とエネルギー消費量をグラフにしたのが上の図です。

HIITグループは、「20秒間の全力ダッシュ×8セット」ですから、実質の運動時間はたったの160秒ということになります。

それに比べ、持続運動グループは「最大心拍数の90〜95%の負荷で30分間、トレッドミル・ランニング」というかなりキツい持続運動です。

それにもかかわらず、HIIT群は持続運動群と比べていずれの値も高く維持されており、持続運動よりもHIITのほうが運動後にエネルギーを消費していることがわかります。

このアフターバーン効果は、HIITのような運動強度の高い運動ほど長く続くことがわかっています。

つまり、例えば朝にHIITを行えば、少なくとも午前中は体がエネルギーを消費しやすい状態(脂肪を燃焼しやすい状態)が続くということです。運動時間の短いHIITに脂肪燃焼効果があるのは、こうした運動後の体の変化・反応があるからなのです。

「内臓脂肪」と「お腹周りの皮下脂肪」にダブル効果

さらに、「脂肪」の減少効果だけを比較すると、ジョギングよりもHIITのほうが効果が高いこともわかっています。

とくに、中高年以降気になる「お腹周りの脂肪」と「内臓脂肪」を減らすのに効果的です。

体重減少効果を見るとジョギングなどの中等度の持続的運動と同じくらいなのですが、その理由は、HIITを続けていると脂肪が減っていくと同時に、筋肉もつくからです。

一度でも本気でダイエットや筋トレをしたことがある方なら、「脂肪を落としつつ、筋肉をつける」ということがいかに大変なことかご存じでしょう。

専用の器具がそろったジムに行ったとしても、最初の30分くらいはトレッドミルで有酸素運動をして(脂肪を燃やすことと基礎代謝アップが目的)、そのあと筋トレをするといった手間がかかります。

ですが、HIITは「有酸素運動」と「筋トレ」の2つを同時にできるトレーニングなので、脂肪減少と筋肉量アップがいっぺんに叶うのです。

HIITと中等度の持続運動の脂肪減少効果を比較した調査研究の結果もあります。

この調査では45人の若い女性(20歳前後、BMI値23前後)に被験者になってもらい、次の条件で「HIIT」「持続的な運動」「普段通り」の3群に分け、15週間後の脂肪量を計測しました。

【HIIT】自転車エルゴメーターで「オールアウト(全力)で8秒こぎ、12秒ゆっくりこいでリカバリー」を1セットとして、これを60セット(計20分間)。週3回実施。

【持続的な運動】自転車エルゴメーターで最大酸素摂取量の60%の運動強度でこぎ続ける。最初は10〜20分間から始め、徐々に運動時間を延ばして40分間。週3回実施。

【普段通り】できるだけ日常の活動性を変えずに15週間過ごす。


いずれもHIITがほかのグループと比べて有意に減少

その結果、グラフからも明らかなように、体全体の総脂肪量とお腹周りの脂肪量のいずれも、HIITがほかのグループと比べて有意に減りました。

ただし、この論文の結果だけを見て「HIITは痩せて、持続的な運動は痩せない」とはいえません。おそらくこの研究で持続的な運動を行ったグループが痩せなかったのは(むしろ脂肪が増えたのは)、負荷が軽すぎたせいではないかとも推論できます。

それはともかくここでお伝えしたいのは、「HIITには優れたダイエット効果がある。おまけにHIITはより短時間の運動で済む」ということです。

HIITを続けていれば、確実に脂肪が筋肉に入れ替わっていきます。ですから2、3カ月続ければ明らかにシルエットが変わります。仮に体重は同じだとしても、体は筋肉質になり、引き締まるのです。

脂肪だけを減らすダイエットと、脂肪を減らして筋肉をつけるダイエットでは雲泥の差があります。

短時間だから挫折しないで続けられる

見た目が変わることも大きなモチベーションになるかと思いますが、それよりも大きな意味を持つのは、「筋肉がつくことで、リバウンドしにくい体」が手に入ることです。

筋肉量が増えると基礎代謝が上がります。そうすると、栄養分や酸素といった、体内に取り込まれた生産資源を無駄にしなくなります。肥満は、工場で使われなかった余剰な栄養分が原因ですから、HIITで筋肉をつけることで、同じ食事量を食べても体につきにくくなるわけです。

ちなみに、HIITを行うことで食欲が抑えられる効果もあることがわかっています。もともと激しい運動をすると血中乳酸値と血糖値が上昇して、食欲が低下することはわかっていましたが、それに加えてHIITを行うと、食欲を刺激するグレリンという、胃で産生されるホルモンの濃度が下がることも判明しているのです。

また、「家庭でできる」「短時間で済む」というところも途中で挫折しにくいポイントでしょう。実際、かつて出勤前のジョギングにチャレンジしたものの、「早起きがツラい」という理由で運動を挫折した私の知り合いにHIITを勧めたところ、いまだに続けられているそうです。もちろん、私自身も長年続けています。


「太っているから運動がキツい……」という肥満体型の人でも、HIITなら体が悲鳴を上げる前に短時間でサクッと終わるため、無理なく続けられるでしょう。

季節柄、一時的に痩せたり筋肉をつけたりすることを目標にするのもよいのですが、せっかく運動をするなら「健康維持」を最上位の目的としてもらいたい、というのが医師としての本音です。

運動は続けることに意味がありますから、ぜひ、みなさんにも、歯みがきなどの生活習慣のように、日々の生活にHIITを取り入れてほしいと思っています。