結婚したくてもできない男女のために、結婚できる条件を整えるためにはどうすればよいのか、山田昌弘氏(左)と植草美幸氏(右)が語り合いました(撮影:今井康一)

結婚したいのにできない――。この結婚困難社会はなぜ生まれたのか。生涯未婚率(50歳時点で結婚したことのない人の割合)は男性で23.4%、女性で14.1%と過去最高を記録した日本(2015年国勢調査)。

「それでも結婚したい」という生の声を聞き、年間100〜150組のカップルを結婚に導いている結婚相談所・マリーミー代表で本連載筆者の植草美幸氏と、結婚をめぐる問題について社会学の視点から詳細に論じた『結婚不要社会』を5月に上梓した、中央大学文学部教授・山田昌弘氏が、最近の結婚事情について語り合った。

日本と欧米で「結婚不必要」な理由が違う

山田昌弘(以下、山田):『結婚不要社会』では、タイトルのとおり、日本は結婚が必要のないものになっているということが、大きなコンセプトになっています。欧米も結婚不要社会です。

しかし、欧米の不要の意味と日本の不要の意味は違う。欧米では性的なパートナーは人間の幸せにおいて必要だけど、パートナーと結婚する必要はないし、ずっと同じパートナーと一緒にいる必要もないと考えているという意味で、結婚は不要になっています。


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一方、日本の近代社会は結婚しないと心理的に生きにくくなる「結婚不可欠社会」でした。それは現代も変わらず、結婚を望む人はいまだ多い。しかし、結婚が困難になりつつあるから、パートナーなしでも楽しく過ごす。そういう意味で不要になりつつあります。

植草美幸(以下、植草):確かに、昔は結婚していないと世間体が悪いと考える人が多かった。先日、うどん屋さんに入ったら6テーブル中5テーブルはおひとり様の女性でした。しかもその多くはおそらく独身。見ればだいたいわかります。

おひとり様を楽しんでいる女性は本当に多い。「いつでも結婚できるだろう」という人もいるのでしょうが、30代後半になって慌てて結婚相談所に駆け込んで来るケースは少なくありません。

山田:欧米だと、そういうところで女性が1人でいたら男性が声をかけますが、日本の場合、ナンパや偶然の出会いで付き合って結婚するケースは少数派。およそ5%程度です。これはずいぶん前から増えても減ってもいません。よく知らない人と付き合うのは危ないというリスク意識がすごく高いんです。

植草:その割には出会い系サイトに登録してしまう人が多い印象も受けます。出会い系サイトでは、異性に会うことができても、結婚までつながりにくいのでは、と思うのですが。

山田:いわゆる出会い系サイトで付き合ったり結婚したりする人は、5%以下でしょう。「遊び相手」を求める人が多いのでは。

男性はモテる人とモテない人に二極化

植草:学生さんのような若い人も恋愛しなくなったと聞きます。どうしてだと思われますか?


今の若い人は恋愛に対して消極的になっている、と語る山田氏(撮影:今井康一)

山田:リスク回避ですね。問題のある人と付き合いたくないんです。

結婚がしにくくなっているという事実が知られてきたので、「恋愛相手=結婚する相手」という確率が高まってくる。そのため結婚相手にふさわしくない人と付き合うのは時間とお金の無駄だと考える。

「好きという一時的な感情で付き合ってはいけないと思います」と言う学生もいますよ。どんな調査においても、今の若い人は恋愛に対して消極的という結果になっています。

植草:弊社では、お互いのデータとしてはぴったりの相手とお見合いしても、恋愛経験がないので自分が相手からどう見えているかわからずうまくいかない、という例が結構あります。とくに男性に恋愛経験が少ないがゆえの失敗が、しばしば見られますね。

山田:男性は、モテる人とそうでない人に二極化しています。女性は恋愛経験がある人は結構いるようですが。

植草:そうなんですよ。女性は恋愛経験もあるし、見た目もきれいにしている。そういう女性に「20代、30代前半で付き合った人となぜ結婚しなかったの?」と聞くと、「結婚を前提とした恋愛をしなかった」と言う。

山田:それは1990年代までの恋愛が活発化していた時代の特徴ですね。男性もその頃は猫も杓子も女性に声をかけたけれども、今はかけない。断られるリスク回避です。自分の価値、プライドを下げたくない。

女性が肉食化しても問題は解決しない

山田:スクールカーストという言葉がありますが、中学高校時代からモテる男性とモテない男性に分かれ、モテる男性はモテる男性同士と友達になり、モテない男性はモテない男性と友達になる。その構図が大人になってもずっと続く。

だからモテない男性は、友達からのアドバイスどころか、恋愛経験すら聞けない。それでいて恋愛のきっかけは相変わらず男性側から声をかけるのがほとんどで、女性から声をかけるケースは増えていません。だからモテない男性はずっとモテないままなんです。


肉食系女性がリードをするとサッと結婚が決まるので、女性には積極的に気持ちを伝えて、とアドバイスしていると言う植草氏(撮影:今井康一)

植草:弊社では逆プロポーズが結構多い。いわゆる肉食系女性がリードをするとサッと結婚が決まります。だから、女性には「待っていないで積極的に気持ちを伝えてね」といつもアドバイスしています。

山田:男性は、女性側からプロポーズされれば結婚を決めるでしょうね。男性が相手にこだわるのは年齢くらいで、あとは細かい条件よりもフィーリングで結婚を決めがちなので。

ただ、結婚相談所ではそれでうまくいくと思うのですが、社会全体で見ると根本的な課題解決にはつながりません。というのも、女性から声をかけるに足る、つまり“条件がいい男性”の数が絶対的に少ない。

積極的に声をかける女性がその男性と結婚すれば、結局、声をかけない消極的な女性や“条件が悪い男性”は余る。そういう人たちが結婚できる条件を整えない限り、日本全体としての結婚のあり方は変わらないんです。

植草:なるほど。男性の経済力の問題は大きい。

山田:男性は経済的に条件に合わないと、民間の結婚相談所に入会すらさせてもらえないでしょう。日本の未婚男性のおよそ3割は非正規雇用か無職。日本の未婚男性で年収400万円以上は約25%しかいません。一方、「適齢期の男性で年収400万以上を希望する」という女性は6〜7割。社会構造的に結婚は無理なんです。

女性側を調査すると、「自分が稼ぐから相手の収入はこだわらない」という人は2割程度。それは、高卒だろうと大卒だろうと同じ。どんな調査をしても2割。ちなみに、女性管理職比率もだいたい十数%、東京大学の女子学生比率も2割。不思議とこの数字は動かない。

結婚したら男性の収入で暮らすという考え方が、今もメジャーなんです。昭和の頃はそれでもよかったんです。収入が低かったとしても安定して将来アップする可能性が高かったから。

植草:弊社の会員さんにも、相手の希望年収を書いてもらうんですが、そこを空欄のままにしているのはだいたい2割ですね。ほとんどは自分の年収よりも多い男性を希望します。

ただ、最近はこだわらないという方が少しずつ増えてきたように思います。それに、年収400万円以下であっても結婚が不可能なわけではありません。そういう男性が弊社の会員さんにもいらっしゃいます。最初は女性に好かれるタイプではなかったのですが、「そのままじゃ結婚できないよ」という話をすると理解してくれて、身だしなみを整えるところから始めて、内面的にもどんどん変身しました。そういう人は結婚できる。

山田:前向きな努力が必要ですね。

植草:以前、農村のセミナーに呼ばれて行ったとき、セミナー後に婚活パーティーがあるというのに、普段着に長靴を履いてきた男性がたくさんいました。女性はきれいにしているんですよ。男女で意識に大きな違いを感じました。

山田:男性は「ありのままの自分を見てほしい」と考える人が多いんです。日本の男性の化粧がはやらないのもそのせい。

男女の意識が凝り固まっている

植草:「ありのまま」と言っても、若いうちはいいかもしれませんが、女性の目は厳しいですから……。

山田:女性は「自分を選んでくれる高収入の男性がいるかもしれない」と考え、男性は「ありのままの自分を選んでくれる女性がいるかもしれない」と信じているんでしょうね。その意識を変えないと。

植草:最近の男性のいい傾向を1つ言うとすると、「家事はおまかせください」とアピールする人が増えてきました。これは女性にはとても響くポイントだと思います。

山田:都市部や若い人はそうかもしれませんが、世代や地方によっては「父親が何もしないから自分も」という意識はまだ強いと思いますよ。でも、実際、男性は一人暮らし率が高いので、パラサイトしている女性と比較したら家事能力はあるはず。

植草:パラサイトと言えば、私は業界に入って間もない頃、山田先生の『パラサイト社会のゆくえ』などパラサイトに関する書籍を読んで衝撃を受けたのですが、現在のパラサイト問題はさらに深刻になっています。50歳を過ぎても親御さんが出てくる。

話がまとまりそうなときに、80代の母親が「その女性は家事どのくらいできるの? 働いていて家事をする時間はあるの?」と言い出してくるのです。母親としては息子には家事はさせないことが前提なんです。

女性が「働いていてもできます」というと「反抗的だ」と言うし、さらに、その女性の母親が再婚していることが気に入らないと破談にしてきた。昔ながらの固定観念を、息子や娘に託して結果的に結婚の邪魔をするんです。

山田:それは息子を不幸にしていますね。息子は反抗しないんですか。

植草:反抗せず「母親がだめと言うのでやめます」と従っていました。その方は収入も学歴も高いのにもったいない。

本人の意思ではなく、親の意思で結婚

山田:妻よりも母親を選んだということですね。親御さんには何を言っても変わりませんから仕方がない。本人がそれで幸せならいいですが……。パラサイトを容認する親の心理は、「子どもが1人で苦労して生活するのを見るのはかわいそうだから一緒に住む」。でも、それが本人にとっていいこととは限らない。


植草:親と一緒に相談所に来る人は、男性も女性も本当に多く、だいたいそこで親子げんかが始まります。先日は娘さんと父親が2時間くらいけんか。総じて、女性は父親にも母親にも強い。それでも親と一緒じゃないと来られないんです、不思議と。

山田:「仕方なく親に連れてこられた」というスタンスをとりたいんでしょうね。見栄です。

植草:先に親御さんが1人で来るケースもあります。

山田:親が子どもに代わってお見合いするパーティーがあるくらいですもんね。

植草:そうですね。そこに本人の意見は入らない。でも残念ながら親同士が話して結婚するケースは少ないのが現状です。

山田:でも親の満足度は高いんですよ。自分の息子、娘の自慢話ができるから。欧米では、成人したら男性でも女性でも親元を放り出されて一人暮らしを始めます。だから経済的にパートナーを見つけて一緒に暮らさないと生活できない。日本も成人したら、子どもを手放すようにすれば結婚は増える方に変わると思いますよ。

(構成:安楽由紀子)