ウクライナの首都キエフにあるロシア大使館前で、殺害されたエレーナ・グリゴリエワさんの肖像などを掲げるウクライナ人LGBT活動家ら(2019年7月24日撮影)。(c)Sergei SUPINSKY / AFP

写真拡大

【AFP=時事】ロシアの性的少数者(LGBT)人権活動家エレーナ・グリゴリエワ(Yelena Grigoryeva)さんは、「同性愛者狩り」集団の標的リストに自身の名前を見つけた際、その危険性を真剣に受け止めない様子を見せていた。

 この集団の名前は「ピラ(Pila)」。連続殺人犯が犠牲者として選んだ人々とゲームをする米ホラー映画『ソウ(Saw)』のロシア語タイトルにちなんでいる。ピラは複数の同性愛活動家に対し、「とても危険で残酷な、ちょっとした贈り物」を送ると予告していた。

 グリゴリエワさんは先月上旬、フェイスブック(Facebook)への投稿で、ピラのウェブサイトのスクリーンショットを載せ、「これは単なる脅し」「犯罪はこのような形では行われない」と書き込んでいた。

 そして先月21日、グリゴリエワさんはサンクトペテルブルク(St. Petersburg)の自宅近くにある草むらで遺体となって発見された。41歳だった。遺体には、顔や背中に少なくとも8か所の刺し傷があった。

 ピラとグリゴリエワさん殺害を直接関連付ける明確な証拠はないが、事件はロシアのLGBTコミュニティーを恐怖に陥れた。

 ピラから同様に脅迫を受けた活動家のミハイル・トゥマソフ(Mikhail Tumasov)さんはAFPに、「これらの人々の正体は分からないが、このような考え方をする人が私たちの中にいることは大きな意味がある」と指摘。「私たちに対してピラが脅迫していることを実際にやりたいと考えている人はたくさんいる。性的指向を理由とした殺人は普通なだけでなく、気高い行為だという考え方が登場した」と語った。

 ロシアのゲイとレズビアンはこれまでにも、暴力やヘイトクライム(憎悪犯罪)、同性愛嫌悪による殺人の被害を受けてきた。しかし、LGBTの人々に対する暴力をゲームに変え、遊び感覚でLGBTの人々を“狩る”ことを推奨する自警団的集団の出現は、状況のさらなる悪化を示していると活動家らは指摘している。

 活動家らによると、ピラのウェブサイトは約1年前に開設され、標的となる人物の名前と写真を投稿した上で、標的への襲撃に対し「報酬」を約束していた。

■「当局が捜査を拒否」

 サイトは最近になってようやく閉鎖され、暗号化が可能な人気メッセージアプリ「テレグラム(Telegram)」に開設していたチャンネルも利用不可能となった。だがピラは、サイト閉鎖後も「最後までゲームをする」と約束している。

 捜査当局は先月下旬、グリゴリエワさん殺害容疑で男を逮捕し、事件は個人的ないさかいが原因だったと示唆。その後、これは誤認逮捕だったとして、新たな容疑者の身柄拘束を発表した。

 ただ捜査当局は、グリゴリエワさんが受けていた同性愛嫌悪的な脅迫には言及せず、殺人犯はグリゴリエワさんの飲み仲間だったと示唆。また、過激派対策を担当するロシア政府機関は、ウェブサイトが閉鎖されているためピラに対する調査は行えないと説明している。

 LGBT活動家らは、当局がグリゴリエワさん殺害事件とピラに対する適切な捜査を拒んでいると非難。ピラは冷血な殺人集団ではないかもしれないと認めつつも、その主な目的は同国で弱い立場に置かれている同性愛者にさらなる恐怖を与えることだと主張している。

 ロシアでは1993年に同性愛が合法化されたが、同性愛者に対する嫌悪は今も根強く残っている。2013年には、未成年者に向けた同性愛の「プロパガンダ(宣伝)」を禁じる法律が成立。以降、同性愛者に対する暴力は増加している。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、日本で6月に開催された20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、ロシアは同性愛者の人権を尊重していると主張した一方で、性自認の問題をやゆし「トランスフォーマー、トランス……私はこれが何なのかさえ分からない」と述べた。

【翻訳編集】AFPBB News