子どもたちに人気の職業2位、3位の実際を知っていますか?(写真:Panama7/iStock)

2014年、Google社がYouTubeのTVCMを全国ネットで大量に投下したのを覚えている読者の皆さんも多いと思います。

そのキャッチフレーズは「好きなことで、生きていく」というもの。YouTuberの中でも圧倒的な知名度と視聴数を誇るHIKAKIN(ヒカキン)氏やBILINGIRL(バイリンガール)氏、ゲームジャンルからはマックスむらい氏らが出演するCMが大量にオンエアされました。

これらを観て「YouTuberって面白い」「将来はYouTuberを目指したい」と思った視聴者もたくさんいたと思いますし、その後も、つねに新しく注目を浴びるYouTuberが生まれていることは、時代が求めた新しい職業であり生き方だと思います。

その影響もあってか、『コロコロコミック』(小学館発行)のオンラインメディアである「コロコロオンライン」で2019年5月に発表された「子どもが憧れる職業」アンケートでは、1位が「YouTuber」、2位が「プロゲーマー」、3位が「ゲーム実況者」と、世相を反映した結果に終わりました。

アンケートに回答した子どもたちの親が、「YouTuber」になることそれ自体を完全に否定することはあまりないと思います。もちろん「YouTuberを名乗ることは誰でもできるが、限られた場所とステータスと収入をYouTuberとして維持できるのはほんの一握り」だということもある程度理解しているでしょう。

これらはテレビや動画、もっと言えば「番組や放送のしくみ」がどんなものなのかが、親世代にとっても容易に想像がつくからにほかなりません。それゆえに「YouTuberになって稼ぐ道を選ぶならば、それもその子の人生」と思っているフシも伺えます。

しかし、ゲームはどうでしょうか。先のアンケートによれば、2位「プロゲーマー」、3位「ゲーム実況者」と言われても、まだピンとこない親が多いのではないでしょうか。それは、YouTuberと違って「テレビのように類似するモデルの想像がつかない」「どのようなコンテンツがあるのか理解ができない」といった理由があるからにほかなりません。

そこで、今回の記事では、子どもが憧れる職業としてのプロゲーマー、およびゲーム実況者とはどんな仕事なのか、その実態についてご説明します。

プロゲーマーにはどうやってなるのか

私が執筆した書籍『プロゲーマー、業界のしくみからお金の話まで eスポーツのすべてがわかる本』では、4人のプロゲーマーにインタビュー取材を行いました。いずれも、日本でもトップクラスの実力を持ち、世界でも評価されているプロゲーマーたちです。

彼らを取材して思ったことは「現在でこそプロゲーマーとして活躍しているが、そもそもの始まりはゲームが好きでプレーをしていたらだんだん強くなり、その結果としてプロゲーマーという職業を選択した人々である」ということでした。

もちろん、彼ら自身もゲームを始めた頃は「ゲームをプレーすることが職業として成立する」とは思っていなかったでしょう。しかし、ゲームがテクノロジーの進化とともに、高画質・高機能化、ネットワーク対戦や多人数による対戦ゲームの登場など、ゲームを取り巻く環境が変化するなか、「圧倒的な強さと観客を魅了するプレーができる人たち」がプロゲーマー化していったのです。

プロゲーマーもYouTuberと同様に自称することはできますが、実際にそれを生活の基盤として生きて行くことができるのは、まだ一握りしかいません。プロの本分はつねに勝つこと、そしてその評価の対価である賞金を獲得することだからです。

その職業のあり方を理解するうえでは、ゴルフのレッスンプロを例にとると想像がつきやすいかもしれません。

レッスンプロは一般的に、トーナメントなどがないときはゴルフ場や練習場で研鑽しつつ、アマチュアゴルファーに指導することで収入を得ています。そして大会にエントリーし、予選を通過することができれば高額な賞金を賭した大会に参加できますが、上位に入賞しなければ大金を手にすることはできません。

このように日頃から練習を重ね、メンタルを強化して一戦にかけるゴルフのレッスンプロのあり方は、(戦うフィールドは違うといえども)まさしくプロゲーマーのそれに近いといえます。ゴルフのレッスンプロと同様に、年間を通じて賞金ランキングにその名前を残せるプロゲーマーは限られています。

プロゲーマーの中には、賞金獲得の不安定さをカバーするために、自身でYouTubeチャンネルを開設し、ファンからの「投げ銭」や、グッズ関係の販売で活動資金を稼いでいる人もいます。やはり本当の意味でのトップ・プロゲーマーでなければゲームのみで賞金を得て生計を立てることは難しいのが現状です。

ゲーム実況者の実際とは?

もう1つの子どもたちの憧れの職業である「ゲーム実況者」とは、簡単に言えば、自分でプレイした動画をアップして紹介したり、第三者がプレーしているゲームを解説する仕事を総称します。

野球など各種スポーツの放送で試合展開を視聴者らに説明し、わかりやすく伝える存在として解説者がいるように、ゲームにおけるその役目を担っているのがゲーム実況者と呼ばれる人たちです。

ゲーム実況者は今のところ、プロゲーマーが一線を退いたあとのセカンドキャリア的な位置づけの仕事という印象もありますが、昨年には大阪朝日放送(ABC)のスポーツ・アナウンサーだった平岩康佑氏がeスポーツアナウンサーとして独立起業しましたし、今後は注目の職業と言えるでしょう。

しかし、ゲームには多種多様なジャンルやソフトがありますので、各ゲームのルールやキャラクター、世界観などをよく理解したうえで臨まないといけません。ゆえに「ゲームが結構好きだから」「しゃべるのがうまいから」という理由だけで、誰でも簡単になれるというものではないでしょう。

こちらもプロゲーマーと同じように日々の経験を積み、努力を重ね、ゲームを愛したうえで、各ゲームやプレイヤーがもつ魅力・実力をどれだけわかりやすく、どれだけ楽しく視聴者に伝えることができるのか――ということが問われる仕事だといえます。

ライブエンターテインメント化するゲーム

最後に、プロゲーマーやゲーム実況者が実際に活躍するフィールドともいえるゲーム業界と、その変化に触れたいと思います。


(図:筆者提供)

現在、ほとんどの国内ゲームメーカーの売上の半分以上は、海外での販売によって成り立っており、なかには海外売上比率が80%というゲームメーカーもあります。また、右肩下がりを続ける家庭用ゲームの販売を補うべく、モバイルゲームやDLC(ダウンロードコンテンツ、ネットでの追加コンテンツ販売)などでカバーしているメーカーも多くなってきました。

私も1990年代の前半からゲームビジネスに関わってきましたが、2010年のiPhone4の導入の前後を境にしてゲームのあり方がモバイルベース、またはネットワーク対戦に舵を切ったことにより、エンターテインメントとしてのあり方が大きく変わってきたと考えています。

しかし、登場から間もなく半世紀を迎えんとするコンピューターゲームが「eスポーツ」と名前を変えて新たなエンターテインメントとして進化していくのか、それとも従来どおり「遊びとしてのゲーム」のまま続いていくのかは、その呼称自体はさほど大きな問題ではないと考えています。

ただ、昨今のゲームにまつわるビジネスモデルを見る限りでは、明らかに変化はあります。SNSのように参加型、鑑賞型、体験型、共有型のエンターテインメントという方向に変化しつつあるように思います。

これは、かつて1980年代に自動車産業が自動車レースを「モータースポーツ」と再定義し、レーサーという職業が浸透したことに近いといえるでしょう。

誰でも名乗ることはできても結果を出せるのは一握り

同様に、ゲームが参加型の「eスポーツ」に進化し、プロゲーマーやゲーム実況者という新たな職業が生まれ、子どもたちの憧れの職業として挙げられるようになったのは、ある種「時代が求めた必然」といえるのではないでしょうか。

さて、このeスポーツ・ジャンルおけるプロゲーマーは稼げるのか? ゲーム実況者は稼げるのか?ということが気になっている親御さんも多いことでしょう。


海外では賞金総額が約30億円というeスポーツゲーム(Dota 2世界大会『The International 2019』における賞金総額)が有名です。

また先日(7月27日開催)、アメリカで開催された「フォートナイト」の世界大会で、弱冠16歳の少年がソロ部門で約3億円の賞金を手にしました。

日本でも1億円の賞金を超えて、それを手にするプロゲーマーも生まれてきています。誰でもYouTuberと名乗れるように、誰でもプロゲーマーと名乗れる時代になりました。しかし、本当に限られたトップ・オブ・トップのプロゲーマーでもない限り、そのような結果を出せる人はいないのではないでしょうか。

それはeスポーツに限らずどんな職業でも一緒です。それよりも、まずはeスポーツを楽しんでやってみることから始めてみることをお勧めします。