<日本食は世界的に人気でも、外食チェーンの海外進出は一筋縄ではいかない時代――。ナスダック上場で勢い付く「くら寿司」が導き出した、成功を呼び込む「8:2理論」とは>

大手回転ずしチェーン、くら寿司の米国子会社「くら寿司USA」が8月1日、ナスダックに上場した。日本の外食チェーンによる現地法人株の上場は初めて。市場から資金を調達しやすくし、23年度までにアメリカの店舗数を現在の22から倍増させる計画だ。

回転ずしの海外展開では、業界5位の元気寿司が約200店と群を抜いている。一方、元気寿司との経営統合の計画を撤回した業界最大手、スシローも海外強化を掲げる。日本国内の市場で熾烈なシェア争いが続く中、大手各社はこぞって海外市場の開拓に力を入れている。

ただ日本の飲食チェーンの海外進出といえば、17年にニューヨーク1号店を出したものの、19年にニューヨーク市内にあった11店舗のうち7店舗を閉鎖し、ナスダックも上場廃止した「いきなり!ステーキ」の失敗例が思い出される。日本で受け入れられた立食形式、低価格のステーキを売りとしたが、ステーキの本場、アメリカには立って食べるといったスタイルがなじまず、途中から椅子を置くなど試行錯誤した末の撤退だった。この先例から、海外進出を目指す飲食チェーンは何を学ぶべきなのか。

アジア系は握り、白人層はロール

「店舗開発やメニュー開発、人事制度全てにおいて、日本のやり方そのままでは通用しない」。くら寿司USAの姥一CEOは1日にニューヨークで開いた記者会見で言い切った。米進出を進言して成功に導いたこの立役者は、店ごとに売れ筋のメニューが全く違うと話す。

実際、くら寿司は2009年の初出店以来、地域ごとに異なる人種構成や気候を分析し、受け入れられるよう日本式に手を加えて「和魂洋才」の現地仕様にしてきた。日本と現地仕様の理想の比率は8:2だという。例えば、同じカリフォルニア州内でも、アジア人の多い地域では握りずし、それ以外ではロールずしが売れるといった差が顕著に表れるそうだ。そのため、店舗ごとの客層に合わせ、回転レールに載せるネタの構成を変えるといった工夫をし、収益性を高めてきた。

サイドメニューを充実させてきたこともアメリカでの事業拡大につながった。くら寿司の創業者、田中邦彦社長が「日本の専門店に比べても引けを取らない」と胸を張るラーメンやうどん、日本にないすしネタもあり、品揃えは160に及ぶ。

日本の勝ちパターンに工夫を施し、現地仕様にする。くら寿司の場合、その割合は8:2が絶妙だとの答えに辿り着いた。「お客さんは刺激を求める。おいしい、安いだけでなく、アミューズメント、楽しいレストランを求めている」と田中社長は強調する。

同様に、「一風堂」など国内外で約300店を手掛ける「力の源(もと)ホールディングス」も、海外初進出で2008年にニューヨークへ店を出す際、日本のスタイルを現地仕様に変えた。日本での成功体験に囚われず、「白紙の状態から考えた」(河原成美社長兼会長)そうで、店の入口付近にウェイティングバーを設置。日本にはない店構えのラーメン店はニューヨーカーの心を捉えた。今や一風堂などのラーメン店は街で人気のデートスポットにもなっている。

南 龍太(ジャーナリスト)