いよいよ、治験の第III相に突入した「光免疫療法(PIT)」のこれまでの治験結果は、今後にかなり期待を持たせるものだった。

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■光免疫療法とは

 米国立がん研究所(NCI)の小林久隆医師が開発した「光免疫療法」は、従来とは全く違う新しいがんの治療法である。この治療法は、1)抗体、2)IR700、3)近赤外線の3本柱から成り立っている。抗体はがん細胞(抗原)にくっつく役目、IR700は特殊な光に反応してがん細胞を殺すキラーの役目、近赤外線はIR700を活性化する役目をそれぞれ持つ。

 まず、抗体にIR700を結合させて体内に入れ、抗体が、がん細胞を見つけて結合したところに近赤外光照射を行う。すると、IR700が近赤外光に反応して熱を出し、この熱でがん細胞が破壊される。殺されるのはがん細胞だけで周囲の正常細胞は残る。このため、壊れたがん細胞の中身を抗原として認識した周囲の免疫細胞が、がん細胞に対する強力な抗体と化して、転移がん細胞までも殺傷する。

■これまでの治験結果

 薬の発売前の臨床試験、いわゆる治験(ちけん)は、安全性の確認に始まり、中規模〜大規模なデータ収集まで順調に行けば、第I相から第III相へと進む。

 光免疫療法の治験第II相については、治験者28名に対して、4名でがんが消失し、8名でがんが縮小したことが報告された(米国臨床腫瘍学会、2019年6月1日)。第II相の治験者は、治療手段のない再発転移性の頭頸部扁平上皮癌患者であり、がんの進行が抑えられた期間と患者の余命が伸びたことも明らかにされた。一方、この治療法と関連する重篤な副作用が3名で認められたことも報告された。この結果は、「驚異的な」という程ではないものの、治験者の重症度からすると、今までにない優れた成績である。

■現在の状況

 2018年12月に、国際第III相試験(LUZERA-301)が開始された。対象は、進行性・再発頭頸部扁平上皮癌患者275名で、日本でも、約10施設がこの治験に参加している。2019年8月1日現在、国立がん研究センター東病院が治験者を募集中だ。

 日米で、頭頸部扁平上皮癌だけでなく、食道がん患者に対する第I/II相試験も開始された。8月1日現在、国立がん研究センター東病院が治験者を募集している。

 2019年4月に、光免疫療法で使用する薬品「ASP−1929」が、厚生労働省の「先駆け審査制度指定制度」の対象方法に認定され、光免疫療法の認可を促進させる体制も整いつつある。

 この治療法は、副作用が少なく再発の心配がない。また、どんながんにも使え、何度でも治療でき、治療費も安いなど多くの画期的な特徴を持つとされる。このため、世界中から注視される夢のがん治療法なのである。第III相の結果発表が待たれる。