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<デジタルメディアアーティストが、モノクロ画像に彩度の高い色でグリッド線を加えると、カラー画像に見えるという"視覚トリック"を公表した......>

各々のパソコンに向かう学生たちの姿を写したこの画像に、どこか違和感はないだろうか。この画像は、実はモノクロだ。じっくり見てみると、赤、青、オレンジのカラフルなグリッド線をモノクロ画像に加えたものだということがわかる。

この画像は、デジタルメディアアーティストでソフトウェア開発者でもあるオルヴィン・コーロス氏が、自身の視覚実験プロジェクト「カラー・アシミレイション・グリッド・イリュージョン」の一環で制作したもの。

モノクロ画像に彩度の高い色でグリッド線を加えると、カラー画像に見えるという"視覚トリック"だ。コーロス氏は、2019年7月29日、色のグリッド線をモノクロ画像にかぶせるためのプログラムを公開している。

では、このモノクロ画像がカラー画像に見えるのは、なぜなのだろうか。豪シドニー大学のバート・アンダーソン教授は、科学ニュースメディア「サイエンスアラート」の取材において、「この色彩システムは『ローパス』と呼ばれるもので、色を符号化する受容野が非常に大きい。それゆえ、カラフルなグリッド線がモノクロの背景と平均化され、画像の一部となる」と解説する。つまり、ヒトの脳は、対象物を見るとき、視覚情報を圧縮し、対象物をじっくり見る時間をとらなくてもその対象物の大まかな印象を得られる仕組みとなっているのだ。

コーロス氏が様々なパターンを試行した結果、グリッド線が最も効果的であることがわかった。カラフルなドットでもこの視覚トリックが可能だ。

また、線と線との間を狭くすることで、一本線でも、同様の効果がある。

松岡由希子