糖質は多すぎず少なすぎず上手にとることで、「お腹をへこませる」ことができます(写真:CORA/PIXTA)

内科、循環器科の専門医として、数多くの患者と日々接している医学博士の池谷敏郎氏。血管、心臓などの循環器系のエキスパートとして『モーニングショー』(テレビ朝日)、『深層NEWS』(BS日テレ)などテレビにも多数出演しているが、過去15キロ以上の減量に成功し、57歳でも体脂肪率10.6%を誇ることはあまり知られていない。

このたび、その減量メソッドを全公開した新刊「50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド」を上梓した池谷氏に「お腹の脂肪が落ちる『プチ糖質制限』5大秘訣」について解説してもらう。

ダイエット中でも、「糖質」は必要なエネルギー

「やせるためには糖質をとらなければいい!」と、張り切って糖質をとらない生活を始めたものの、大好きなご飯もラーメンもパスタもいっさい食べることができない……。しっかり糖質をとっていた人にとっては苦痛ですよね。


糖質をとらないので体に変化が出てくると思いますが、同時に「食べたくても食べられない」というストレスもどんどんたまってしまいます。

ついには我慢できず、結局は「ドカ食い」をしてそれまでの努力が水の泡……という残念な結果の話は、私の医院に訪れる患者さんの中でもよく聞きます。

糖質制限は、内臓脂肪を落とすには効果的な方法ではありますが、「厳しすぎる糖質制限」は、私はおすすめできません。糖質は私たちの体を動かしたり、脳を働かせたりするために必要なエネルギー源の1つだからです。

主に炭水化物の食べすぎでメタボになっていた人が厳しい糖質制限を行うと、エネルギー不足から体調不良の原因となります。また、エネルギー源を肉類に求めれば、動物性脂肪の過剰摂取となります。その結果、脂質異常を招いて心疾患のリスクが高まる危険性もあるのです。

そこで「池谷式メソッド」では、「プチ糖質制限」をおすすめしています。

「完全な糖質制限」ではないので、糖質はとってOK、その代わりに糖質制限を軸に、上手に置き換えをしたり、「血糖値を上げない食べ方」をしたりなどの工夫をします。しかも、どれもとても簡単なので、ストレスなく内臓脂肪も落ちていきます

では、私がおすすめする「プチ糖質制限」5つを紹介します。

1つめの「プチ糖質制限」は、食事を「現状の半分」にすることです。

摂取カロリーを「1日」単位で調整する

【1】今までの食事の糖質を「現状の半分」にしてみる

まずは、今まで食べていた分の「半分の糖質」を目指してみましょう。これを実行するだけで体重は確実に減っていきます。

しかし、毎食のご飯を半量に、パンを半分に……というやり方は、ビジネスパーソンの皆さんだと、実践がなかなか難しいのではないでしょうか。

例えば、昼食が仕出し弁当になったり、夕食が接待になったり、友人とのディナーになったりすると、その場では主食を半分にしづらい状況になりがちです。

そう考えると、朝食をしっかりとってしまうことが、1日の摂取カロリーの制限を邪魔してしまう可能性があるのです。そこで、思い切って朝の「主食」を抜いてしまう作戦を提案します。

「完全な朝食抜き」ではなく、必要最小限の糖質と、1日の中で不足しやすい食物繊維やビタミン、そしてミネラルを、良質なタンパク質とともに効率よく摂取する方法です。

主食を抜くので、朝食のカロリーは低めとなります。そのため、昼や夜の食事のカロリーが少し多くなっても、1日で摂取するトータルエネルギー量を、糖質を中心に制限することができます。

私は朝、主食を抜いた朝食を続けていますが、効率よくダイエット効果を発揮してくれています。

【2】「食べる順番」に気をつける

食事をとるときに、いちばん大切なのが「食べる順番」です。

食事の最初に糖質を食べてしまうと、血糖値は急上昇してしまいます。血糖値の急上昇は肥満の原因になってしまいますが、問題はそれだけではありません。血糖値が急上昇すると血管を傷つけ、動脈硬化を起こしやすくなってしまうのです。

そこで、血糖値急上昇を抑える強い味方になってくれるのが「食物繊維」です。食物繊維を多く含んだ食品は血糖値の急上昇を抑えてくれるので、食物繊維を多く含んだ食品から、先に食べはじめるといいでしょう。

また、食物繊維には、水に溶ける「水溶性」と、水に溶けにくい「非水溶性」がありますが、「水溶性」のほうは胃腸でネバネバした物質に変化します。

すると、その後に食べた炭水化物の消化を邪魔して糖質として吸収されにくくして、食後血糖値の急上昇を防いでくれます

「水溶性食物繊維」は海藻、野菜、果物などに多く含まれるので、まずサラダや野菜スープから食べはじめる「ベジ・ファースト」がいいとされているのです。

3つめの「プチ糖質制限」は、食事はよくかんで「ゆっくり食べる」ことです。

1食に「15分以上の時間」をかけるようにする

【3】よくかんで、「ゆっくり食べる」

血糖値を急上昇させないためには、食べる速度も関係します。「早く」食べたほうが血糖値は急上昇しますし、早食いは食べすぎにもつながります

食事を始めると血糖値が上昇し、これを脳の満腹中枢が感知して「もう満腹だから食べなくていい」というサインを出します。

ところが、脳が血糖値の上昇を感知するまで約15分かかるといわれています。ですから早食いの人は、体が満腹を感じる前に食べすぎてしまうことになりがちです。

みなさんも忙しいときがあるでしょうが、早食いを避け、なるべくゆっくり時間をかけて食べることが、ダイエットにも大事です。

咀嚼も満腹中枢を刺激することがわかっているので、よくかみながら、少なくとも1食に15分以上かけて食べるよう心がけてみてください。

【4】食事の量は極端に減らさない

「体重を減らすには食べないほうがいい」と思って、極端に食事を減らしがちですが、「しっかり食べる」こともとても大事です。

主食であるご飯やパンなどの糖質を減らしたらその分、野菜や肉・魚などのタンパク質はしっかりとってください。

要は、食べる量を急激に減らさないことです。食べる量を極端に減らしてしまうと、空腹と戦うことになり、ストレスがたまって結局は長続きしません

また、食べる量を減らしてしまうと、タンパク質も不足しがちになってしまいます。タンパク質が足りないと、筋肉が落ちてしまいます。

食べる量を減らしたことで脂肪が落ちるでしょうが、その分、筋肉も落ちて代謝が下がり、結果として、身体機能が低下してしまいます

そのような状態で糖質制限をやめてしまうと、恐ろしいことに、失った筋肉の代わりに内臓脂肪がついてリバウンドしてしまいます。エネルギーを燃やす筋肉がないために、リバウンドは簡単に起こってしまうのです。

私が30代にメタボになってしまった原因も、リバウンドにありました。やせても最終的に健康を損ねたのでは何にもなりません。食事の量をむやみに減らさないことが大事です。減らすのは糖質だけです。

「自分ではとっていないつもりでも、糖質をとってしまっていた」というような「隠れ糖質」は、実は普段の食生活に多く潜んでいます。

【5】実は食べていた「隠れ糖質」を見抜く

「プチ糖質制限」で意外な盲点になるのは、「気づかずにとっている糖質=隠れ糖質」です。

「糖質制限をしているのに全然効果がない」という人がいますが、話をよく聞いてみると、自分では気づかないところで糖質をとっていたりするのです。

主食となるご飯やパン、お菓子以外にも 「糖質を含む食べ物」は結構あるものです。野菜では、じゃがいも、さつまいもといったイモ類のほかに、れんこん、かぼちゃ、そら豆なども糖質が多めです。

果物は、バナナ、ぶどう、もも、なし、マンゴー、柿なども糖質が高くなっています。シロップ漬けの缶詰は、もちろんもっと高いです。スポーツドリンク、市販の野菜ジュースなども糖質が高めなので注意しましょう。

そして、意外に見落としがちなのは調味料です。とんかつソース、ケチャップ、オイスターソース、みりん、ドレッシングなど、糖質が高いものが結構あります。調味料は「かけすぎない」「使いすぎない」の2つに気をつけてください。

糖質は「多すぎず、少なすぎず」で、お腹は十分へこむ!

どうしても「完全な糖質制限」がダイエットへの近道に感じられますが、厳しい糖質制限をすると、エネルギー不足になりやすく、だるくなる、やる気がなくなるなどの症状が出ることもあります。

私自身も、以前、完全な糖質制限を無理に行ってしまい、エネルギー不足となってやせこけた老人のような状態になってしまった経験があります。

だから「完全な糖質制限」はおすすめできませんし、長続きしないと思っています。

糖質は多すぎず少なすぎず、上手にとることが重要です。無理に完全な糖質制限をしなくても、「プチ糖質制限」だけで、「お腹をへこませる」のが目的なら、十分効果は期待できます

「プチ糖質制限」をすることで、「太りやすくなる」といわれる40代以降でも、「内臓脂肪」を落とし、「見た目」も若返った「健康な体」に近づくことができる、私は実体験からそう確信しています。