横浜Fマリノス対マンチェスター・シティ。先週の土曜日に横浜国際日産スタジアムで行われたこの一戦は、ほぼ満員の観衆で埋まった。

 その中で、有料入場者数がどれほどだったか定かではないが、誘われるままに訪れた人も少なくなかったと思われる。サッカー大好き人間は試合が少々つまらなくても、またスタジアムに足を運ぼうとするが、そこまでのファンではない人には、面白かったか否かは重要なポイントになる。サッカーファンはリピーターの数が増えないことには増加しない。

 この試合はそうした意味で合格だった。普及発展に貢献する試合とはこのことを指す。見る側を気持ちよくさせるいい感じの撃ち合いを、両チームは最後まで演じ続けた。

 マンCが撃てば横浜も撃ち返すーーという試合展開の中で、最も活躍が光ったのは横浜のGKパク・イルギュ(朴一圭)だった。ペナルティエリアから幾度、飛び出し、ピンチを未然に防いだだろうか。

 サッカーは枠内に飛んだシュートをGKがセーブする瞬間が最も華のあるシーンだとされる。しかしそれはゴールのフレームが四角形として鮮明に描かれていれば、の話だ。主にゴール裏で観戦するファンを対象にしたお楽しみになる。

 パク・イルギュの飛び出しは、そうではなく正面及びバックスタンドで観戦するファンに訴求するお楽しみになっていた。そのナイスセーブに負けないナイスな飛び出しは、この試合を盛り上げた一番の要因だった。

 飛び出しは間一髪のタイミングだ。10分の1秒レベルの動きではない。わずか数センチと言いたくなるまさに100分の1秒台の交錯なので、飛び出した瞬間は、間に合うのか、大丈夫なのか、ハッキリしない。異様なほどハラハラさせられる。そうしたスリリングなシーンがこの試合では10回ぐらいあったように記憶するが、パク・イルギュはそのほぼすべてをノーミスで通した。お金の取れるプレーとはこのことだ。

 今季、FC琉球から加入したパク・イルギュだが、当初からこのようなプレースタイルではなかったはずだ。このマンC戦の後半30分、パク・イルギュと交代で出場した飯倉大樹しかり。横浜がパク・イルギュを獲得するまで正GKを務めたこの選手が、スタイルを従来型から飛び出し型に変えたのは、アンジェ・ポステコグルーが横浜の監督に就いてからになる。

 マンC監督、グアルディオラはこの横浜GKのスタイルを見て、さぞ驚いたに違いない。彼の現役時代、ヨハン・クライフが監督を務めた時代のバルセロナのGKが、このスタイルを取っていたからだ。監督グアルディオラが、バルサBから引き上げたセルヒオ・ブスケツの父親、カルロス・ブスケツはその代表的な選手になる。何を隠そう、こちらには彼が出場した試合を幾度か観戦したことがあるが、最初に目にしたときは吃驚仰天だった。

 最終ラインを可能な限り高く維持し、ひたすら相手陣内でボールを回そうとしたバルサ。その後方に広がるスペースを、ブスケツはリベロ然とカバーした。ペナルティエリアから出ている時間の方が長いGK。横浜の飯倉もミスを犯し、失点を招いたことがあったが、ブスケツも同じだった。しかし、そのミスをミスとせず、織り込み済みの事象とていたところにクライフサッカーの真髄はあった。その大らかさが魅力の源泉になっていた。

 これまでにも再三述べているが、クライフは「つまらない内容の1-0で勝つなら、2-3で負けた方がいい」と、こちらに言い切ったものだ。「勝利と娯楽性をクルマの両輪のように目指す」。「勝つときは少々汚くてもいいが、敗れるときは美しく」など、人生観に影響を与えるような名言を残した、攻撃的サッカーを代表する監督として知られるが、彼の主張はとりわけこのGK像に表れていた。

 その時、グアルディオラはブスケツとコミュニケーションを交わしながらプレーする背番号4をつけたアンカーだった。そしていま、グアルディオラは、当時そのサッカーに憧れ、感化されたポステコグルーと対戦することになった。因果は巡るという感じだ。

 マンC戦で披露したパク・イルギュのプレーは、そのかつての同僚ブスケツそのものだった。飛び出しの鋭さはブスケツ以上だったかもしれない。

 バルサで正GKを務めたこともあるマンCのGKクラウディオ・ブラボには勝っていた。より魅力的に映っていた。もしペナルティエリア内にへばりついていたら、あと2点ぐらい食らっていた気がする。試合を面白くした立役者。マン・オブ・ザ・マッチと言いたくなる。客を呼べるプレーとはこのことだが、彼も飯倉同様、いずれ失敗を犯すだろう。それが原因で試合に敗れることもあるかもしれない。だがそれはミスではないと、腹をくくっていそうなところに、横浜好調の理由を見る気がする。その覚悟がチームに勢いをもたらしているのだと。

 GKが面白く見えるサッカー。もっと追求してみる価値があると思う。