30歳給料高く労働時間少ない会社ランキング。1位の年間総労働時間は1618.6時間

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若手に厚遇で、総労働時間が少ない会社はどこか (写真:EKAKI/PIXTA)

若手の賃金が比較的高く年間総労働時間が少ない会社はどこか。

今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2019年版のデータを使い、大卒30歳平均賃金が30万円超を対象にした、年間総労働時間が少ない会社をランキングした(全体のランキングは『CSR企業白書』2019年版に掲載)。つまり、ここに掲載されている会社は、給料が多いのに労働時間が少ない会社だといえる。

1位は生活協同組合の物流子会社

ちなみに『CSR企業白書』2019年版での大卒30歳平均賃金の平均値は、30万5654円(対象672社)。東洋経済CSR評価でも「30歳30万円」は、賃金が比較的高いと判断する目安と考えている。


では、ランキングを見ていこう。

1位は日本生活協同組合連合会の物流子会社のシーエックスカーゴで1618.6時間。大卒30歳平均賃金は32万6807円。ただ、労働時間は短時間労働者を含む数字のため、低くなっているようだ。

それでも月残業時間は13.3時間と少ない。有給休暇取得率も付与日数は少ないものの、94.6%と高レベルで働きやすい環境であることは間違いなさそう。また障害者雇用率が5.39%と高くダイバーシティーも進んでいる。

2位は塩野義製薬。管理職、裁量労働制以外の一般社員対象の総労働時間は1725.0時間で30歳平均賃金は34万375円だった。タイムマネジメントデーの設定やシステムを用いた残業時間管理、アラートの発信などで残業時間削減に取り組んでいる。フレックスタイム制度、短時間勤務制度、半日単位の有給休暇制度など「働き方改革」も推進している。

3位は日本生命保険で1730.1時間(大卒30歳平均賃金41万4370円、以下同)。時間を意識した効率的な働き方を定着させるため、ノー残業デーの設定やオフィスの強制消灯などを実施。2017年度から社員自身の成長につながる時間の捻出として、年間8日以上の休暇取得を推奨する「ブラッシュアップデー」を運営。多くの制度とともに適切な労働時間となるよう心がけている。

4位はキヤノンの1734.8時間(32万6200円)。同社は「働き方改革」を積極的に推進。フレックスタイム制度、半日・時間単位の有給休暇制度など多くの制度で勤務時間削減を進めている。

5位は西日本旅客鉄道(JR西日本)で1755.4時間(31万4172円)。2016年7月に社長が、「働き方改革」を全社で取り組むと宣言。フレックスタイム制度のコアタイム廃止と適用部署の拡大、テレワークの試行などを実施している。

6位はコニカミノルタの1756.0時間(34万4991円)。子育てや介護での短時間勤務、フレックスタイム制度、裁量労働制の導入など多くの制度を取り入れている。

以下、7位東京センチュリー1760.0時間(32万8550円)、8位大日精化工業1765.8時間(33万1800円)、9位東洋インキSCホールディングス1770.3時間(31万1685円)、10位千趣会1770.6時間(33万9629円)と続く。

15位までが1800時間を下回る

1800時間を下回るのは15位東京海上ホールディングス(1798.0時間)まで。1900時間を下回るのは、69位ファンコミュニケーションズ(1899.8時間)までと、一定以上の年収で労働時間が少ない会社は多かった。

なお、年間総労働時間を開示している662社全体の平均は1995.1時間。業種別では繊維製品1857.1時間(11社)、医薬品1879.4時間(22社)、電気機器1925.5時間(71社)、化学1928.4時間(63社)、卸売業1932.4時間(44社)などが平均を下回り、「労働時間が少ない業種」といえるだろう。

一方、建設業2166.6時間(40社)、輸送用機器2100.7時間(39社)、小売業2088.1時間(37社)、サービス業2085.5時間(42社)などは平均を上回り、「労働時間が多い業種」といえそうだ。

労働組合や企業が目標として掲げることが多い「年間総労働時間1800時間」という水準は1カ月で見ると150時間となる。1日7.5時間働くとすると20日働けばよい計算だ。「残業なしで毎月10〜11日は休み」。なかなか現実には難しそうなレベルで相当恵まれている環境だとわかる。

仕事と家庭の両立や介護など長時間労働が難しい人にとっては、こうした職場はありがたいだろうが、「もう少し働いてレベルアップしたい」と考える人もいるかもしれない。このように「年間総労働時間1800時間」がすべての人に適切かどうかは意見が分かれるところだ。

こうしたこともあり、CSR評価等で妥当な数値設定は現状では難しいと考えている。まずはフルタイム勤務の正社員の平均値やランキングを毎年ウォッチしていき、適正な時間を探っていくことがしばらくは必要となりそうだ。