(左から)福士蒼汰さん(2018年10月、時事通信フォト)、石原さとみさん、志尊淳さん(2019年6月、同)

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 2019年の夏ドラマがスタートして、間もなく1カ月になり、さまざまな話題を提供しています。

 プライムタイム(午後7〜11時)で放送されている新作ドラマに着目すると、「11作中6作」が女性主人公の作品であり、平日に絞ると「9作中6作」と、その割合はさらにアップ。夏ドラマには女性主人公の作品が多く、その全てが平日に放送されていることが分かるのではないでしょうか。

 曜日順に作品名を挙げていくと、「監察医 朝顔」(フジテレビ系)、「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」(TBS系)、「偽装不倫」(日本テレビ系)、「ルパンの娘」(フジテレビ系)、「凪のお暇」(TBS系)、「これは経費で落ちません!」(NHK)の6作。共通点を探してみたところ、法医学モノで東日本大震災というシリアスな題材を含む「監察医 朝顔」を除く5作で、「ヒロイン+Wイケメン」の図式が採用されていることに気付きました。

 なぜ、平日に女性主人公の作品が多く、2人のイケメンをキャスティングしているのでしょうか。どんな事情や効果があるのかを掘り下げていきます。

女性の共感を誘う30代主演女優たち

 平日に女性主人公の作品が多い理由は、「シビアな視聴率対策」「実力と人気を兼ね備えた30代の人気女優がそろっている」の2点。

 平日は在宅率が低い上に、まとまった時間が取りにくく、「1時間じっくりとドラマを見る余裕がない」「ネットや休息を優先させる」という傾向が強く、各局は視聴率対策に頭を痛めています。そんな状況で頼りになるのは、ドラマへの熱が高く、ある程度のリアルタイム視聴が見込める女性視聴者。必然的に「女性の共感を狙う」タイプの作品が増えているのです。

 また、今夏の主演女優を見ていくと、上野樹里さん(33)、石原さとみさん(32)、杏さん(33)、深田恭子さん(36)、多部未華子さん(30)と30代がズラリ。唯一の20代である黒木華さんも29歳と30代間近であり、その他にも、綾瀬はるかさん(34)、新垣結衣さん(31)、吉高由里子さん(31)、戸田恵梨香さん(30)、北川景子さん(32)とバリバリの主演女優がそろっているため、女性主人公の作品が増えているのです。

 かつては、20代女優が主演を務めるケースが多かっただけに、これは2010年代以降の傾向と言えるでしょう。

助演実績豊富なイケメンが次々にブレーク

 次に、なぜ1人のヒロインに対して、2人のイケメンをキャスティングしているのでしょうか。

 実際に、「Heaven?」は石原さとみさんに福士蒼汰さんと志尊淳さん、「偽装不倫」は杏さんに宮沢氷魚さんと瀬戸利樹さん、「ルパンの娘」は深田恭子さんに瀬戸康史さんと大貫勇輔さん、「凪のお暇」は黒木華さんに高橋一生さんと中村倫也さん、「これは経費で落ちません!」は多部未華子さんに重岡大毅さんと平山浩行さんがキャスティングされています。

 もともと、男女の三角関係はドラマの基本ですが、近年は「女性1人と男性2人」という図式がほとんど。これは前述したように、女性視聴者を中心にドラマ作りをしているためであり、「異なるタイプのイケメン2人を楽しんでもらおう」という狙いがあります。

 イケメン2人の人選は、「石原さんの華やかさを際立たせるために福士さん、志尊さんの人気者でガチッと固める」「演技派の黒木さんに幅広い層から人気の高橋さんと中村さんを組み合わせる」など意図はそれぞれ。ただ、あくまで男優は、主演女優を引き立てる助演のポジションをしっかり演じられる人が選ばれています。

 このところ、高橋一生さん、田中圭さん、中村倫也さんら助演としての実績豊富なイケメンがブレークしていること。また、仮面ライダーや戦隊ヒーローでイケメン俳優が量産され、助演で経験を積んでいることも、「女性1人と男性2人」の図式を加速させていると言えるでしょう。

 2020年代に入っても、しばらくはこのまま、「ヒロイン+Wイケメン」の図式が続いていくのではないでしょうか。