「アナロジー思考」とはどのような思考法なのか、なぜ重要なのか、どう使うのかを解説します(写真:gremlin/iStock)

AI(人工知能)の時代に、人間に求められるのは、自ら能動的に問題を発見し、やるべき解決策を考えて、それを行動に移していく力です。すなわち「自分の頭で考える力」です。

思考(法)には、戦略的思考、ロジカルシンキング、仮説思考、アナロジー思考、具体と抽象、MECE、ロジックツリー、無知の知、メタ認知……など、基本となるキーワードがあります。

『入門 『地頭力を鍛える』 32のキーワードで学ぶ思考法』から、ここでは「アナロジー思考」とはどのような思考法なのか、なぜ重要なのか、どう使うのかを解説します。

【WHAT】アナロジーとは何か?

創造性の根本は「借りてきて組み合わせる」ことです。

斬新に見えるアイデアもよく見れば、既存のアイデアの組み合わせにすぎないことがほとんどです。


ただし、その「既存のアイデア」の使い方に工夫が求められます。そこに必要なのがアナロジーという発想です。

要は、ビジネスであればほかの業界やビジネス以外の世界で行われていることを参考にして自分の業界や製品・サービスに適用できないかと考えるのがアナロジー思考です。

アナロジー思考は、新しいビジネスモデルをどこまで活用できるか、ということでもあります。

例えば、ウーバーを単に「タクシーの代替手段」と捉えずに「オンデマンドマッチングモデル」であると気づくことができるか?

スマートフォン時代ならではのビジネスモデルで、必要なときに(オンデマンドで)スマホを使って、ユーザーと周囲にいる適切な個人サービス提供者とのマッチングを行うビジネスモデルです。配車サービスのほか、買い物、掃除、犬の散歩や駐車など、いろいろな仕事に適用が可能なため、数え切れないほどのビジネスがこのようなモデルでスタートしています(最近、利用者が増えて都心でよく見かけるようになったウーバーイーツもその一例です)。

このような動きはギグエコノミー(Gig Economy)と呼ばれ、個人の働き方そのものにも大きな影響を与えつつあります。

アイデアを借りてくるというと、そっくり何かのアイデアをコピーしてしまう、いわゆる「パクリ」がありますが、アナロジーはこの「パクリ」とどこが違うのでしょうか?

そのキーワードが「遠くから」です。遠くからとは、「一見しただけではわからないような抽象度の高い共通点」を持ったものから借りてくることを意味します。

「アナロジー」と「パクリ」の違いは真似するものの抽象度の高低にあり、以下のような違いがあります。

アナロジーが「遠くから借りてくる」に対して、パクリは「近くから借りてくる」

アナロジーが「目に見えないもの」であるのに対して、パクリは「目に見えるもの」

アナロジーが「根本的(本質的)」であるのに対して、パクリは「表層的」

アナロジーが「属性レベル」であるのに対して、パクリは「関係・構造レベル」

アナロジーが「一見わからない」のに対して、パクリは「簡単に気づく」

アナロジーが「抽象的」であるのに対して、パクリは「具体的」

抽象度の高い共通点とは…

同じ業界の中や誰が見てもわかる類似の商品のアイデアを借りてきても斬新なアイデアとはなりません。そればかりか下手をすると意匠権や特許権、あるいは商標権の侵害で訴訟の対象になります。

抽象度の高い共通点とは、商品やサービスの売り方や「要するにこういう特徴がある」と表現できるもので、例えば、以下のようなものです。

・顧客ニーズのつかみ方(「少数だが確実に存在するグループをターゲットにする」など)

・流通チャネルの関係性(中間業者をなくすなど)

・製品の特徴(「レトロの性質を復活させる」など)

例えば、「オンライン書店」で始まったアマゾンは、今では靴や服など、従来の常識では通販で売ることは考えられなかったものを含めて「ありとあらゆるもの」を、本を売るのと同じ仕組みを作って販売しています。

これは抽象度の高い「売り方」(中間業者を極力排するとか、購買履歴を使って個別の顧客へのリコメンデーションを次々と発信するとか)のレベルを一見異なる商品につなげていった事例です。

デジタル化が進んだ世界では、これまで以上にそのような業界や商品・サービスを超えたアナロジーの応用が進みます。それは、デジタルの世界はリアルの世界に比べて抽象度の高いビジネスのモデル化が簡単にできるからです。

例えばウーバーを表面上の配車サービスと捉えるのではなく、「個人と個人が必要に応じてマッチングされる」という「オンデマンドマッチング」というモデルで考えたり、エアビーアンドビー(Airbnb)を「民泊」と捉えたりするのではなく、「稼働率の低い資産をシェアする」というモデルで考えることで、そこから無数の応用が考えられます。

ウーバーを「単なるタクシーの代替手段」と考えるのは、20年前のアマゾンを「単なるオンライン書店」と考えるのと一緒だということです(ウーバー自身もウーバーイーツのほか、ジャンプ[JUMP][電動自転車シェア]、ウーバーボート[水上タクシー], ウーバーMoto[二輪タクシー]、ウーバーエレベート[空のライドシェア「構想」]、ウーバーフレイト[トラック配送]といった乗り物に限らず、過去にはウーバーパピーズ[子犬と短時間遊べるサービス]といったものまでマッチングを試みています)。

近年ではビットコインを「単なる暗号資産の1つである」とだけ考えるのは、その上位概念である「ブロックチェーン」の「分散型台帳」としての限りない可能性にふたをしてしまうことを意味しています。このように、1つの事例を見てそれを抽象化してアナロジーでほかの応用を考えられるかどうかはビジネスにおける機会発見の重要な分かれ目になるのです。

【HOW】ロジカルシンキングとアナロジーの異なる視点

思考にも大きく「守り」と「攻め」があります。

守りの代表がデータやファクトをベースに論理的に考えること、つまりロジカルシンキングだとすれば、攻めの代表がこのアナロジー思考です。

アナロジー思考は創造的に斬新なアイデアを考えるのに有効な手法です。

同じ思考でもロジカルシンキングとはまったく異なる視点も重要になってきます。

守りのロジカルシンキングでは「合理的な結論を導く」のが目的であり、連続的に(飛躍なしに)考え、ひらめきの要素はありません。

一方、攻めのアナロジー思考では「大胆な仮説を導く」のが目的であり、不連続的に(飛躍ありで)考え、ひらめきの要素が大切になります。

いわば、ロジカルシンキングを「物的証拠」(これが出てきたら犯人確定)とすれば、アナロジー思考は「状況証拠」(怪しい容疑者をリストアップする)という違いといえるでしょう。

守りとは「当たり前のことを当たり前にやる」(その代わりによくも悪くも個性は出ない)ことであるのに対して、攻めのアナロジー思考は大胆な仮説を創造的に導くためのものなのです。

ここで1つアナロジーのクイズを出しましょう。

「手羽先」と「カニ」の共通点は何でしょうか?一見まったく異なる2つの食べ物に何か「要するに」という特徴としての共通点はないでしょうか?

「手羽先」と「カニ」の共通点を見つけるメリット

ここで着目する共通点は「食べるのに手間がかかって手が汚れる」ことです。箸では細かいところまでは食べきれず、どうしても直接手を使うことになるので、面倒くさいうえに手が汚れるので、無精者やきれい好きの人は敬遠するという点でこの2つは見た目や味はまったく違うにもかかわらず「似ている」ということがいえます。

では、このような共通点を見つけると何のメリットがあるのでしょうか?

例えばここから、手羽先を食べない人と(同じ理由で)カニを食べない人に何らかの相関があるのではないかという仮説が立てられます。さらにはこれらが両方嫌いな人の一定割合は「(骨つきの)焼き魚」や「具が段重ねで入っているハンバーガー」も嫌いではないかという仮説が立てられます。

さらにこの話を「無精者ときれい好き」というキーワードで発展させれば、食べ物とは無関係な「キャッシュレスに移行しやすい人」の特定につなげられるかもしれません。

このような相関の仮説は、ビッグデータの時代の顧客の行動パターンの予測に役立てられる可能性があります。もしかすると、「居酒屋の(手羽先や焼き魚の)購買データからハワイアンレストランの(ハンバーガー割引)キャンペーンのターゲット顧客の特定」ができるかもしれないのです。

データ活用時代にデータ解析を行う「データサイエンティスト」が求められていますが、単なる数値計算だけであればコンピュータ(+AI)のほうが優れています。人間に求められるのは、このような仮説を立てる力といえます。