米ニューヨーク市ロングアイランド・ネスコンセットの「パーズ・オブ・ウォー」での訓練を終えたミリーとマイケル・キッドさん(2019年6月10日撮影)。(c)Johannes EISELE / AFP

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【AFP=時事】マイケル・キッド(Michael Kidd)さん(84)は、朝鮮戦争(Korean War)で戦った退役軍人だ。夜に混乱状態に陥ることがあるが、ジャーマンシェパードのミリーが気持ちを落ち着かせてくれる。

 ボスニアやリベリア、ナイジェリアで任務に就いた元海兵隊のハリー・シュトルベルク(Harry Stolberg)さん(42)が悪夢にうなされると、3歳の暗褐色のラブラドルレトリバー、ロッキーが起こしてくれる。

 フィル・ダバンゾ(Phil Davanzo)さん(31)は2011年、ソマリア沖で人質救出作戦中に倒れた同僚兵士らの遺体を運んだ経験を持つ。パニック発作を起こすことがあるダバンゾさんの支えとなるよう、ロットワイラーの子犬が訓練を受ける予定だ。

 米ニューヨーク市ロングアイランド(Long Island)に住むこれら3人の退役軍人は心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでおり、犬によるペットセラピーに癒やしを見いだしている。

 2014年から活動を行う「パーズ・オブ・ウォー(Paws of War)」は民間からの寄付金により設立された。退役軍人らが困難な時期を乗り越えられるよう犬を訓練し、無料で提供している。退役軍人らがすでに犬を飼っている場合は、その犬の訓練も行ってくれる。

 パーズ・オブ・ウォーのパーズは犬の足を意味し、略称「POW」は戦争捕虜(Prisoner of War)の略称と同じだ。これまでに訓練された犬は100頭を超えており、飼い主に大きな治療効果をもたらしている。

 シュトルベルクさんはロッキーについて「悪夢を見ていると起こしてくれることが一番ありがたい」と語る。「ドアを開けて部屋に入ってきて明かりをつけ、アイマスクを外して…手をなめて起こしてくれる」

 ロッキーは6か月前に1年半に及ぶ訓練を終えた。シュトルベルクさんのPTSDの引き金となることもある人ごみを歩く時は誘導してくれる。「動けなくなると、ロッキーが人ごみから連れ出してくれる」

■50人が順番待ち

 重度のPTSDを患うキッドさんは、ミリーのおかげで薬の摂取量を減らすことができた。夜につらくなると「ミリーがそばに来て、前足を肩や胸に置いて慰めてくれる」「『そばにいるよ』と言っているようだ」

 シュトルベルクさんはかつて、夜を乗り切るために睡眠薬が欠かせなかった。だが、ロッキーのおかげでもう必要ない。「睡眠が最大の問題だった…毎日悪夢を見たが、いまでは月1、2度に減った」とシュトルベルクさんは語った。

 パーズ・オブ・ウォーのベテラン訓練士レベッカ・ストロムスキー(Rebecca Stromski)さんは、退役軍人が苦悩のしるしを発したときに何をすべきか犬に教え込むには1年半から2年かかると説明する。ストロムスキーさんは「退役軍人と犬がお互いを尊重し、絆をつくっていくというのは非常に大変なプロセスだ」と語った。

 共同設立者ドリー・スコフィールド(Dori Scofield)さんによると、現在犬を求める人が増加しており、50人の退役軍人が順番を待っている。

 米退役軍人省が昨年末に発表した報告書によると、退役軍人は銃を所持している人が多く、2008年から2016年の自殺者数は毎年6000人以上に上っている。

 また、米ブラウン大学(Brown University)の調査では、2001年から2018年までに主な戦闘地域で死亡した米兵は計6951人に達していた。

【翻訳編集】AFPBB News