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「今、SSDの値段、スッゴク安いの知ってた!?」自作からしばらく離れていそうな元パソコン雑誌編集者がこんなことを私に言ってきた。もちろん読者のみなさんは知ってますよね。だいぶ前から価格破壊は始まってたじゃないですかっ!

USBメモリの速度や容量に不満がある。手軽に持ち運べる大容量なUSB接続のストレージがほしいなら、NVMe SSDとUSB 3.1 Gen2対応の外付けケースの組み合わせがオススメだ。なにしろコンパクトで高速。ここではその魅力を手順と実際の速度テストを交えて紹介していきたい。

○大容量で爆速の手軽なストレージがほしい!

手軽なデータ保存場所、そしてデータ移動手段としてUSBメモリを使っている人は多いだろう。その一方で、USBメモリは一部の高級品を除いて、データ転送速度は遅く、容量も8GB〜128GB程度が一般的だ。動画や撮影した画像など容量の大きいファイルを扱うユーザーにとっては、速度的にも容量的にも不満を感じる場面もあるハズ。

そこでオススメしたいのが、データ転送速度が高速なM.2タイプのNVMe SSDを“外付け化”してUSBメモリのように使うこと。USB 3.1 Gen2対応の外付けケースと組み合わせれば、NVMe SSDの高速性を活かしたコンパクトで爆速なUSBメモリが完成するというわけだ。

オススメの理由は速度だけではない。2019年になってNVMe SSDの価格は大幅に下がってきている。250GBクラスなら5,000円前後、500GBクラスでも7〜8,000円台で購入可能なモデルが増えている。それに加えて1TBクラスの価格も下がっており、大容量モデルに乗り換えたことで、250GB前後のNVMe SSDがあまっているというユーザーも多くいるだろう。その活用法としても外付け化はオススメだ。

単純にコストパフォーマンスだけを考えるなら、2.5インチSSD(Serial ATA接続)と格安の外付けケースを組み合わせるのがベターではあるが、M.2タイプのNVMe SSDのほうが圧倒的にサイズが小さいため、当然外付けケースもコンパクト。しかも、速度面でも上回っているため、よりスマートに持ち運べて、ファイルのコピーも快適に行える。ただし、NVMe SSDの高速性を活かすには、USB 3.1 Gen2に対応した外付けケースを選ぶ必要がある点には注意しておきたい。

さっそく、外付け化の流れを紹介していきたい。ここではNVMe SSDにIntelのSSD 760p SSDPEKKW256G8XT(256GB)を使用(実売価格:6,000円前後)。USB接続の外付けケースにはUSB 3.1 Gen2に対応するORICOのTCM2-C3-BK-01(実売価格:6,000円前後)を使っている。ちなみに、SSDPEKKW256G8XTの公称最大読み込み速度は3,210MB/s、USB 3.1 Gen2の理論値は最大10Gbps(1,000MB/s)なので、SSDの性能をすべて使い切ることはできないが、USB規格としてはこれが現状最速。そこはどうにもできない部分でもある。

NVMe SSDを組み込むのはカンタンだ。ケース内部の基板にSSDを付属のネジで固定し、熱をケース上部のヒートシンクへと伝えるためのサーマルパッドを貼って、ケースのカバーを閉じるだけ。ポイントになるのはサーマルパッドの位置だ。NVMe SSDはコントローラ部分が一番熱くなるため、そこにピンポイントで貼り付けることが重要。SSDPEKKW256G8XTは、挿し込む端子の近くにコントローラがあるので、そこに貼り付けた。コントローラの場所は製品によって異なるので、事前にネットなどで調べておくのがいいだろう。

○徹底チェック、実力は如何に!

ここからは実際に実力をチェックしてみよう。USB 3.1 Gen2接続、USB 3.1 Gen1(USB 3.0と同速度)接続、USB 2.0接続のそれぞれでデータ転送速度を測る「CrystalDiskMark 6.0.2」と約43GB(461ファイル)のファイルコピーを実行した。

テスト環境

CPU:Intel Core i7-9700K(3.6GHz)

マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMING(Intel Z390)

メモリ:G.Skill F4-3600C19D-16GSXW(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2666で動作)

ビデオカード:Intel UHD Graphics 630(CPU内蔵)

システムSSD:Lite-On Plextor M8Pe PX-512M8PeGN(M.2/PCI Express 3.0 x4、512GB)

OS:Windows 10 Pro 64bit版

室温:24℃

最高速度という点では、CrystalDiskMarkの結果を見れば明らかだ。USB 3.1 Gen2接続はシーケンシャルリード、ライトとも1,000MB/s近くとほぼインタフェースの限界まで速度が出ている。USB 3.1 Gen1の規格は最大500MB/s。それを考えてもUSB 3.1 Gen1の結果も順当と言える。USBメモリでもここまで速度が出るものはほぼないので、USB 3.1 Gen1つまりUSB 3.0での利用も十分実用的だ。USB 2.0は当然一番遅い。参考としてみてほしい。

また、ファイルコピーになるとUSB 3.1 Gen2とUSB 3.1 Gen1の速度差はどれほど大きくない。SSDPEKKW256G8XTは、疑似SLCキャッシュと呼ばれるデータ転送を高速化するための領域を備えているのだが、数GB連続して書き込むとその領域が終わってしまい速度低下が発生する(キャッシュ切れとも言う)。今回のように大容量のデータを連続して書き込むと途中でそのキャッシュが切れが起きて、最終的にはUSB 3.1 Gen2とUSB 3.1 Gen1の速度差が小さくなってしまうというワケだ。

○問題は発熱量……

NVMe SSDはその速度ゆえに発熱が大きいことでも知られている。小さな外付けケースでの動作に不安を覚えるところだが、今回使用したTCM2-C3-BK-01はサーマルパッドにヒートシンクも搭載と対策が施されている。実際の効果についてTxBENCH 0.96βで5分間シーケンシャルライトを実行し続けるという高負荷な状況を作って確かめてみた。システム表示系のツールでは温度が表示されず、SSD/HDDの情報表示ツール「CrystalDiskInfo」では温度が表示されたが、正確か判断ができなかったため、赤外線温度計で外付けケースのヒートシンク部分を1分おきに手動でチェックした。

5分経過した時点でも書き込み速度に変化はなく、ヒートシンク部分の温度は67.2℃だった。NVMe SSDは温度が上がりすぎるとデータ転送速度を落とすことで発熱を抑えて故障を防ぐ「サーマルスロットリング」という機能が備わっているが、それが動作している様子は見られなかった。もちろん、容量の限界近くまで書き込みを続ければさらに温度が上がり、速度低下が起きる可能性は否定できないが、数GBレベルのファイルコピーでは心配不要だろう。ただ、当然だが67.2℃でもヒートシンクに触るとかなり熱い。触れないように注意が必要で、あまり熱が逃げない狭い場所には設置しないほうがいいだろう。そこは気を付けておきたい。

ここまでNVMe SSDの外付け化手順と実際の性能を紹介してきた。その小ささを活かした手軽に持ち運んで使える高速外付けストレージとして十分魅力的と言えるのではないだろうか。最近ではUSB接続のSSDやHDDに保存した動画ファイルの再生機能を備えるテレビも多い。パソコンで編集した動画ファイルをテレビに移動させる手段としても便利だ。また、容量の少ないノートパソコンの外付けSSDとして使うのもいいだろう。1台作っておいて損のない存在だ。