韓国ドラマの撮影現場で“セクハラ問題”が再燃…喉元を過ぎれば熱さを忘れるのか

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「MeToo運動」以降、落ち着きを見せていた撮影現場で最近、セクハラ問題が再び注目を集めている。

下半期の放送を目標に、JSピクチャーズで制作中だったドラマ『キマイラ』(原題)が、スタッフのセクハラ問題で直撃弾を受けた。去る6月24日、『キマイラ』制作陣による飲み会の席で、アシスタントディレクターのAがスクリプターBさんにセクハラする事件が発生したのだ。

しかも、そのアシスタントディレクターはドラマ制作から外されたが、被害者Bさんが2次被害を受けたと主張し、波紋がさらに大きく広がった。

そもそもBさんは公開的な謝罪を望んだが、実際には主要関係者だけを集めた席で謝罪が行われていたことが判明。またその場でプロデューサーのCに「逃れなかったお前のミスだ」「これから怖くてドラマを作れない」などと非難され、Bさんは2次被害を受けたと主張した。

制作会社側はプロデューサーCの言動について責任を問い、Bさんが経験した被害について適切な措置を取ると明らかにしたが、ドラマ制作陣の傲慢な“性に対する倫理観”への非難は激しくなるばかりだ。

先立ってTV朝鮮の『朝鮮生存記』(原題)に出演していた俳優カン・ジファンは、一緒に働くスタッフの女性2人に性的暴行とセクハラをした疑いで緊急逮捕された。ドラマの主人公がセクハラで拘束される初の事例だ。

拘束された俳優カン・ジファン

特にカン・ジファンが犯行前に、女性たちにゲームを強要して酒を飲むようにしたという陳述が出ている。被害者たちは、カン・ジファンが相次いで回答しづらい性的な質問を投げかけてきたため、仕方なく酒を飲むようになったと話しているという。

カン・ジファンは逮捕直後の警察の調査で「酒を飲んだことは覚えているが、その後の記憶がない」と容疑を否認していたが、拘束後に「間違っていた。被害者に申し訳ない」と準強姦容疑を認めた。今回の事件は、カン・ジファンという個人に対してはもちろん、作品の主演者としての責任感のない態度が失望感を抱かせた。

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何よりも2つの事件は、いずれも撮影現場に近い場所で起こり、歪んだ倫理観を原因としたセクハラという点で類似している。そこには“慣行”を言い訳にした閉鎖的な文化が背景にあるといっていい。

実際に撮影現場の劣悪な環境への懸念は、長らく提起されてきた。そんな制作環境を正そうと、標準勤労契約を締結して週52時間労働を守るなど、映画をはじめドラマも制作環境を改善するための努力が続いている。

台本読み合わせ前に“セクハラ予防教育”もしたが…

しかし相次ぐセクハラ問題で制作が中断される事態まで発生している現状では、週52時間労働を守るだけではなく、性に対する倫理観を向上させるための努力も必要不可欠だとの指摘が出ている。

MeToo運動が盛んだった昨年、キム・ギドク監督をはじめ、俳優チョ・ジェヒョン、チョ・ドクチェなど、有名監督や俳優にまで矛先が向かった暴露は、撮影現場がいかに倫理観の“死角地帯”であったかを白日の下にさらした。

以降、自省の態度が高まると、韓国ドラマ界では台本読み合わせ前にセクハラ予防教育が行われたり、台本自体に性的暴行防止案内文を添付したりするなどの措置を取ってきた。

だが時間が経つにつれてうやむやになり、結局のところ当事者の倫理観自体が向上しなければ、上のような措置は“びぼう策”(物事を取り繕うために講じる措置)にすぎなかったと指摘されている。

とあるテレビ局関係者は、「撮影現場は上下関係や規律が厳しいだけに、閉鎖的に運用されてきたことは事実だが、MeToo運動後のドラマ制作現場は意識が改善されている。台本の表紙に性的暴行防止案内文を付けたり、テレビ局内に性平等センターを作って広報したりして、撮影現場の内外で気をつけるよう努力している」と話した。

そのうえで、「もちろんこのような教育とともに、現場にいる当事者たちが正しい倫理観を確立し、自らより厳しい基準を持とうとする努力が必要不可欠だ」と強調した。