Jリーグ中継は2017年からDAZN中心に変わった。10年契約という話だが、その前の10年間はスカパー中心の時代だった。DAZNはネットで、スカパーはCS。純然たる放送局がメインだったのは、さらにその前に遡る。

 その間、様々な点で変化が起きた。誰でも視聴できる無料放送の時代から有料に変化すれば、視聴者は好きな人に限定される。ネットで動画を視聴することが一般的になっても、有料に抵抗を感じる人は少なくなく、DAZN経由での大衆的な広がりには限界がある。内輪になっている気がする。

 一方、よくいえば、難しい話をしやすい環境に変化している。サッカーらしさを打ち出しやすくなっている。たとえば判定。つい2、3年前まで、中継の中で審判の判定にはケチを付けないものとの不文律があった。1度下された判定は絶対で、素直に従うモノとされた。どこか教育的でお堅い感じがした。

 欧州から帰国するとなおさらそう感じた。オフサイドか否か、ハンドか否か、しつこいぐらい映像を幾度も再生させ、アーでもないコーでもないとやり合うのが欧州に限らず、日本以外のスタイルで、こちらがそれに慣れた頃、帰国すれば、日本の中継が嘘臭く感じられた。

 こう言ってはなんだが、NHKはとりわけそうだった気がする。明らかなオフサイドでも、実況のみならず解説も「微妙ですね」と口ごもるばかり。そこに日本のサッカー中継の限界点を見た気がしたが、DAZNの時代になって、そうした日本らしさは失われようとしている。

 昨年のロシアW杯で、VARが導入されたこともそうした流れに拍車を掛けている。それまで絶対だった判定が、簡単に覆るシーンを見せられると、さすがに「微妙ですね」とは言いにくくなる。好むと好まざるとにかかわらず、実況と解説は独自の見解を述べずにはいられない状況に立たされる。

 今季から欧州サッカーの多くもVAR導入に踏み切った。中継するDAZNの実況、解説者は、同時にJリーグの中継も行うので、欧州サッカーを見つめる目線を、気がつけばJリーグに対しても投げかけるようになっている。

 昨年のロシアW杯も大きな転機になった。そこで初めてVARに触れることになった日本人ファンは意識を大きく変えることになった。

 メディアしかり。「誤審」を簡単に活字にできる時代に一変した。憑き物がすっかり落ちてしまったという印象だ。その後、NHKのサッカー中継がどのようなノリになったのか定かではないが「微妙ですね」が死語になりつつあることは事実だ。

 ところが、JリーグにはまだVARが導入されていない。ルヴァンカップのトーナメント戦には導入されるらしいが、Jリーグにおいては2021年にずれ込む見込みだという。今季後半はもちろん、来季も審判の目を最大の拠り所にする旧式で行われる。このギャップがいま世の中に広がりつつあるように思う。

 やたらと誤審が取り沙汰されている。去る土曜日も一騒動起きた。横浜国際日産スタジアムで行われた横浜Fマリノス対浦和レッズの一戦だ。

 左サイドをエジカル・ジュニオとのワンツーで抜けだした遠藤渓太がシュート。そのボールが、横浜FW仲川輝人の上体に当たってゴールに飛び込んだかに見えた。それがオフサイドか否かで揉めたわけだけれど、つい2、3年前までならメディアは「誤審だ!」と大騒ぎしていないはずだ。テレビも「微妙ですね」で終わっていた。

 いま騒ぐことはすっかり解禁された状態にある。DAZNがそれをどう報じたか、確認していないのだけれど、スカパー時代よりテレビカメラの台数がずいぶん増えているので、事実関係はそれを見れば粗方明らかになるはずだ。実際、記者席で僕の前に座っていた記者は、DAZNに目をやりながら試合を観戦していたが、DAZN上で問題になっていることを、紙媒体が黙っているわけにはいかない。一緒になって騒がないと、遅れを取ることになる。騒動になった理由だが、NHKをはじめとするテレビが「微妙ですね」と言っている時代は、その他のメディアも右へならえすればよかった。