甲本ヒロトと内田勘太郎によるユニットのブギ連が7月4日、東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブ『ブギる心』をおこなった。6月26日にリリースされたアルバム『ブギ連』を引っさげて、7月4日を皮切りに9月28日の東京キネマ倶楽部まで全5公演をおこなうというもの。アルバム曲を中心にカバー曲も披露。2人のみで表現されていく音楽は多くの人の心を揺さぶった。以下にそのライブの模様をレポートする。【取材=村上順一】(※ネタバレあり)

もっと騒げ〜! 演奏むちゃくちゃ上がるぞ〜!

甲本ヒロト(撮影=柴田恵理)

 BGMにはラグタイムやカントリー、心地よい音楽がリラックスさせてくれるかのように流れていた。フロアはこれから始まるショーへの期待感も高まりつつ、お酒を片手に2人の登場を待ちわびている観客の姿。

 2人がステージに登場すれば、大きな歓声で出迎える。魂を揺さぶられる、そんな事を素直に感じさせてくれた「あさってベイビイ 」。音源で聴いていたものとはまた、ひと味もふた味も違った、一期一会の生きた音楽が目の前に広がる。

 憂鬱な梅雨の時期、それを吹き飛ばすとは違ったむしろ寄り添うような感覚もあったステージ。ブルースを決定づける、ドミナントセブンスの和音がそう感じさせてくれるのかもしれない。

 観客の歓声はヒロトのモニター音に影響を与えるほどで、序盤でPAに「お客さんが元気で賑やかなので、勘太郎さんのギターの音を少し(上げて)下さい。最高です(笑)」と言わせるほどの、フロアからの声だった。ヒロトは「もっと騒げ〜! 演奏むちゃくちゃ上がるぞ〜!」と煽る。

 ブギ連を結成するきっかけになったのは5年前の横浜でのライブだったという。内田はヒロトと音楽を奏でられることに「僕は嬉しいなあ、半分抱かれてもいいくらい(笑)」と、優しい口調でユーモアを交え話した。

 再び、曲が始まれば恍惚の瞬間が何度も訪れる。日本語にこだわったジャパニーズ・ブルースの真髄を見せてくれるかのような、内田がアコースティックギターを弾き始めれば、その様子を笑顔で見つめるヒロト。会話をするかのような演奏で、おそらく尺も特に決まっていないのだろう。お互いの演奏の出方を伺いながら、フレーズを奏でていく。

 終始2人は楽しそうに音を奏でていた。ステージ上では何とも雰囲気の良い空気感が流れていた。それは、内田の演奏をピュアな眼差しで見つめる、ヒロトの笑顔がよりそうさせていたのかもしれない――。

 「バットマン・ブルース」の演奏後にヒロトが「ドキドキする」と話していたが、それは毎回違う演奏への高揚感だった。「この後もどうなることやら」とストーリテラーのような語り口から、内田のブルージーなギターへと紡がれていく。

お前もブギ連

内田勘太郎(撮影=柴田恵理)

 ライブはアルバムからの楽曲を中心にカバー曲も披露。2人のルーツが垣間見れる選曲だ。ヒロトは「勘太郎さん、キーが違う」と呼びかけたが、内田は「このまま行くぞ」と強引に転調し、そのまま曲を続行するという、良い意味で緩い空間。内田は「そんなに違和感ないじゃん。距離にして2センチぐらいだし(笑)」とユーモアを交えながら、エモーショナルな演奏を響かせれば、ヒロトも泣きのハーモニカの音色で応えていく。ライブならではの駆け引きが存分に出ていた。

 ヒロトの歌も様々な表情を見せていた。「闇に無」や「ナマズ気取り」で聴ける感情を解き放つような力強い歌声。「闇に無」でのロングトーンから垣間見える説得力は、ヒロトのキャリアから滲みでる叫びだ。対象的に「軽はずみの恋」で見せたような憂いを帯びた繊細な歌声はザ・クロマニヨンズの時とはまた違った側面を打ち出していた。

 たった2人でのステージだが、スピーカーから放たれるサウンドはダイナミックで、素晴らしく豊かだ。内田のギターは、憂いを帯びたフレーズを聴かせたかと思えば、スライドバーを使用し、はち切れんばかりの激しい音を放つ。弦が擦れる音も生々しく、アコースティックギターのポテンシャルを存分に発揮。その躍動感に心揺さぶられた。

 このユニットのテーマソングとも言えるナンバー「ブギ連」では、<お前もブギ連>と観客を指さし、言葉を投げかけると、大きな歓声が巻き起こる。ステージとフロアのキャッチボールは、大きなシナジー生み出していった。アンコールも当然起こり、この日は3曲ほど披露し『ブギる心』の幕は閉じた。

ブギ連(撮影=柴田恵理)

 次回のワンマンまで少し日が空いてしまうが、9月24日の愛知・名古屋CLUB QUATTROでのライブを予定しているブギ連。きっとまた違う演奏で楽しませてくれることは間違いない。残り4公演2人の“ブルース魂”を感じてほしい。