ミッキーマウスを大きく描いたJR九州の883系と、ハローキティをデザインしたJR西日本の大阪環状線(記者撮影)

ミッキーマウスをあしらった新幹線や在来線特急の車両が九州の各県を疾走する――。JR九州の鉄道車両はユニークなデザインが多いことで知られるが、ミッキーマウスが車両側面いっぱいに描かれた「800系」新幹線や在来線特急「883系」のデザインは、多くの鉄道関係者を驚かせた。

まず登場したのは「JR九州Waku Waku Trip 新幹線」と名づけられた列車だ。5月17日から9月1日まで1編成が博多―鹿児島中央間を走っており、6両編成の車両すべてにディズニーのラッピングを施している。ディズニーと鉄道のコラボは2016年の冬に東急電鉄が行っていたことがあるが、デザインのインパクトは今回の方がはるかに上だ。

ライセンス料は高額じゃない?

ミッキーのデザインを使うとなると、さぞかし高額のライセンス費用がかかるようにも思われるが、JR九州によれば、この列車を導入するために要した費用は「通常のラッピング列車と変わらない」。


5月17日にデビューした「JR九州Waku Waku Trip 新幹線」(写真:JR九州、© Disney)

今回のラッピング列車は、ミッキーマウスのスクリーンデビュー90周年を記念して企画されたものだ。では、なぜ九州新幹線が選ばれたのだろうか。東京ディズニーランド(TDL)を運営するオリエンタルランドは2008年にキャナルシティ博多にディズニーの屋内型娯楽施設を造る構想を持っていたが、リーマンショックによる景気悪化で断念。その意味では、ディズニーにとって、九州は因縁の地ともいえる。


6両編成の全車両にディズニーキャラクターをデザインしている(写真:JR九州、© Disney)


車内にもミッキーマウスのデザインが(写真:JR九州、© Disney)

近年はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人気が急上昇中。九州からUSJに向かう客も多く、TDLも指を加えて見ているわけにはいかない。そのため、「九州エリアでディズニー人気を掘り起こすためにJR九州と組んだのではないか」と見る鉄道関係者もいる。

車両の外観には巨大なミッキーマウスが描かれ、車内にも座席のヘッドカバーなど、ミッキーマウスのアートが散りばめられている。

九州新幹線は今年の3月で車内販売を終了したが、このラッピング列車は一部の便に客室乗務員が乗務し、オリジナルグッズの車内販売を行う。「グッズの売り上げは運行開始から約1カ月で1000万円を超えた」と、JR九州の担当者はホクホク顔だ。

「ソニック」にもミッキーが

5月30日からは「青いソニック」の愛称で知られる在来線特急車両「883系」にもミッキーマウスをデザインした車両1編成が登場した。博多―大分間、大分―中津間を8月下旬まで走行する。7両編成のうち、4号車と5号車にラッピングを施している。


883系に描かれたミッキーマウスのデザイン(記者撮影)


883系客室シートのヘッドレスト。確かに「あの形」を思わせるデザインだ(記者撮影)

車内に特別な装飾は施されていないが、883系の座席のヘッドレストはもともとミッキーマウスの耳と頭を想起させるデザインである。883系がミッキーマウスデザインとなるという知らせを聞いて、ニヤリとしたファンも多いことだろう。

さらに8月1日から11月27日までは、ミッキー新幹線の第2弾が運行する。今度はミッキーマウスに加えてミニーマウスもデザインされる。8月1日から9月1日までの間は、ミッキー新幹線第1弾と第2弾が並んだり、すれ違ったりする姿が見られるかもしれない。

ミッキーマウスが組んだのはJR九州だったが、日本が世界に誇る人気キャラクター、「ハローキティ」が選んだのはJR西日本だった。

JR西日本は2008年に同社の交通系ICカード「ICOCA」のイメージキャラクター「イコちゃん」とキティのコラボ商品を発売しており、JR西日本とキティの関係は古い。昨年6月30日には、男の子に人気の高い「500系」新幹線をピンク色に染めた「ハローキティ新幹線」に変身させ、関係者の度肝を抜いた。(2018年7月2日付記事「世界が絶賛、『ハローキティ新幹線』の衝撃度」)


ピンク色の「ハローキティ新幹線」(記者撮影)


ハローキティをデザインしたJR西日本の特急「はるか」(記者撮影)

新幹線に続き、今年1月29日からは関西国際空港と新大阪・京都などを結ぶ「はるか」に「ハローキティはるか」がデビューした。当初は1編成のみだったが、その後本数を増やし、現在ははるかの約半分がキティはるかとなった。関空に降り立った訪日外国人観光客の中には日本に来てからこの列車の存在を知る人も多く、「見たい、乗りたい」という声が続出。こうした声に応えた形となった。

「少し待てばキティはるかがやってくるので、この列車に乗るお客様や写真撮影されるお客様が多く見られる」とJR西日本の担当者は破顔の表情で語る。

環状線にもキティ登場

導入に要した費用はラッピング費用およびサンリオに支払うロイヤルティー。これに対して運賃収入増やグッズ販売の売り上げが得られるが、「広告効果を狙っているので採算は度外視」(JR西日本)という。


大阪環状線に登場した「ハローキティ環状線トレイン」は先頭部分にキティが描かれている(記者撮影)

キティとのコラボはさらに続き、今年4月1日からからは大阪環状線を走る「323系」にキティ列車が登場した。その名は「ハローキティ環状線トレイン」だ。

JR西日本は「大阪環状線改造プロジェクト」と題して、駅舎の改良、高架下の開発などの施策を進めているが、今回のキティ環状線はその一環。323系の1編成について、列車の先頭部分を装飾するほか、車内にもキティの装飾があふれる。

問題は、キティ環状線を見る機会が限られることだ。キティ新幹線は1編成しかないが、運行ダイヤが発表されている。キティはるかは本数が多いので運行ダイヤを発表するほどでもない。しかし、キティ環状線は1編成のみにも関わらず運行ダイヤの発表もない。環状線には323系だけでなく、紀州路快速や大和路快速も乗り入れる。その一方でキティ列車は環状線のほか、桜島線を走ることもある。


「ハローキティ環状線トレイン」は1編成だけ。車内にもキティが(記者撮影)

つまり、キティ列車に出会える確率はかなり低い。「環状線を毎日利用するビジネスパーソンが月に1回出会えるかどうか」(JR西日本広報)という難易度だという。

その意味では、インバウンドへのアピールを狙ったキティ新幹線やキティはるかと違い、キティ環状線は通勤・通学で日常的に環状線を使っている利用者へのサプライズ企画といえる。

キャラ列車は日本の「売り」に

JR九州、JR西日本ともに「個別の列車の乗車率は調べていない」として、利用状況は公表しないが、人気キャラクターをデザインした列車が全国各地を走っていることを考えると、一定の効果は得られているはずだ。


博多駅構内に展開される「ハローキティ新幹線カフェ」(記者撮影)

また、JR西日本は博多駅構内に「ハローキティ新幹線カフェ」をオープンするなど、鉄道車両以外にもキティを展開している。JR九州とJR西日本はどちらがキャラクターとのコラボを積極的に行なっているのか。現状では、幅広く展開しているという点でJR西日本が一歩リードしているように見えるが、ミッキーマウスの誕生日が11月18日であり、さらにイベントを仕掛ける時間の余裕があることを考えると、JR九州も8月1日のミッキー新幹線第2弾以降にも、新たな列車を投入してくるかもしれない。

キャラクターを起用した列車としては、キティ、ミッキーのほかにJR東日本が「ポケモン」を活用した「ポケモンウィズユートレイン」を東日本大震災の被災地向けに走らせており、JR四国は予讃線、土讃線などに多数の「アンパンマン列車」を走らせている。

日本の鉄道は時間に正確なことで世界に知られているが、日本を訪れる外国人観光客は、人気キャラクターのラッピング列車が全国各地を走っていることにも驚かされるに違いない。