「島原大門」をくぐって、格式高き花街へ

祇園や先斗町などは、いまも舞妓さんたちが行き交う花街として多くの観光客に知られていますが、実は、日本で最初に江戸幕府から公認を受けていた花街が、京都市下京区にある島原です。
写真は島原の入口にある「島原大門」。お城の門と同じ、高麗門形式になっていて、この地の格式の高さをうかがい知ることができます。

見えない結界のような門をくぐり、石畳をまっすぐに進むと左手に見える、広い敷地と立派な古い建物が「きんせ旅館」です。(JR丹波口駅から花屋町通りを歩いた場合は右手にあります)

看板はとっても控えめなので、お見逃しなく。

吉沢亮さん写真集のロケ地にも!

2階建ての「きんせ旅館」は、江戸後期の建築と伝わっていて、2階部分は1日1組だけの宿として、いまも建築当時のままの姿で営業されています。
1階部分は大正時代の後期、当時流行りの大正モダンに改装。

パッと目につくのは、メインホールにある折上げ格天井(ごうてんじょう)。折上げ格天井とは、碁盤の目に木材を組んだ格天井の中央を一段高くした天井の形式で、寺院なら本尊を祀る本堂にのみ使われる格式の高いものです。

店主の安達さんの曽祖父の弟さんが大工の棟梁をされていた関係で、このような素晴らしい意匠になっていますが、この場所、実は20年近く誰も使うことなく放置されていました。

吉沢亮さんが座って撮影した水色のソファー

それを安達さんが、2年間かけてコツコツと片付け、掃除をし、一般の人が気軽に入れるようにカフェとして営業されています。
現代では再現できない博物館級の空間は、2019年の朝ドラ俳優、吉沢亮さんの写真集のロケ地にもなりました。

レトロなランプシェイドは写真集の1枚にも大きく写り込んでいます。さらに吉沢亮さんが肘掛けにもたれかかったソファーも!
撮影当時とは少しレイアウトが変わっていますが、間違いなく同じモノ。ほかの方の迷惑にならないように、そっと撮影してもOK。

「泰山タイル」に「小川三知ステンドグラス」。粋を集めたレトロ建築

「きんせ旅館」は、レトロ建築好きの聖地でもあります。とくにファンが多いのが「泰山タイル」。
工業的に作られた量産タイルではなく、手作りならではの趣ある美術工芸タイルは、風合いや模様がさまざまで、1枚ずつに表情と味わいがあります。

さまざまな場所に使われているので、探してみてください。

玄関やホールに飾られたステンドグラス。こちらは、構図、メリハリのある色使い、旅館の改装時期から、日本のステンドグラスの礎を築いた作家・小川三知(おがわさんち)の作品と推測されます。
蝶やバラ、ツバメなど素敵なデザインのステンドグラスが店内に多数。思わずシャッターを押してしまう美しい空間です。

美しい器で静かにいただく自家焙煎コーヒー

IWASHI COFFE 豆 100g 525円〜販売

「きんせ旅館」の入口には、小さなコーヒーの焙煎所「IWASHI COFFEE(イワシ コーヒー)」が間借りされていて、毎日、直火式の小さい焙煎機で丁寧に豆を焙煎し、豆の販売をしています。

コーヒー ブラジル(中深煎り)500円

「きんせ旅館」で飲めるコーヒーも「IWASHI COFFEE」の豆を使用。レトロモダンな室内にしっくりくるクラシカルなカップで丁寧に淹れられたコーヒーを飲みながら、ゆったりとしたひととき。京都の人混みや喧騒が苦手な方にもおすすめの穴場です。

Photo:瀬田川勝弘
Text : 小西尋子

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