アメリカではダウが史上最高値を更新。日経平均が上昇するには何が必要なのだろうか(写真:新華社/アフロ)

先週末の7月12日の東証1部売買代金は、わずか1兆8000億円弱だった。オプションSQ(特別清算指数)の算出日にもかかわらず、である。もちろん「3連休前の模様眺め」とも言えるが、これで9日連続の2兆円割れだ。日本株市場は、まるで毎日が3連休前のような閑散相場が続く。いったいこれからどうなるのだろうか?

「先行指標」安川電機の決算に悲観は不要

まず業績だが、産業用ロボットの大手である安川電機の決算から振り返ってみよう。同社は3月が本決算だった時代も「製造業決算の先陣を切る」という意味で、その期の日本メーカーの趨勢を占う重要な指標だった。2018年2月期から2月が本決算になってますます重みが増している。

その同社の第1四半期(3〜5月期)決算の純利益は前年同期比70%減の47億円となり、予想以上の厳しさを示した。事前予想でも大幅減益ではあったが予想を超える数字に、市場は「ミニショック状態」で、後半の製造業の回復に疑問符がついている。

しかし、決算内容を見ればわかる通り受注は増えており、同社は通期の純益見通し350億円も変えていない。通常なら第1四半期の通期進捗率がわずか13.4%では目標達成は不可能にもかかわらず、である。

また「ショック安」と言ったが、同社の株価チャートを見ると長期の平均売買コストである200日移動平均を維持しており、まだ上げ下げのリズムの中で、後半の企業業績「回復不発」を暗示する「チャートの崩壊」にはなっていない。

確かに日経平均株価の趨勢を決めるのは企業決算である。だが、厳しいと言われるわりには、いまのところ企業側の予想EPS(1株益)は1789円で、昨年12月13日の史上最高値1794円にあと5円と迫っている。

また、足並みをそろえている先進国の中央銀行の「再緩和体制」で、年後半も世界の金余りは続く。行き場を失った資金は債券に流れ、マイナス金利債は現在1300〜1400兆円になったと言われる。次の事態として、マイナス金利の債券からあふれ出た資金が、アメリカの高利回り社債に向かい、さらには業績基盤の堅固な企業の3〜4%の株式配当利回りに回ってくると考えるのは当然ではないか。

果たして、7月第1週に現物・先物とも買い転換した外国人投資家の売買動向が、その兆候なのだろうか。一方で今まで外国人が先物を売ってきたことによって、7月5日現在の裁定買い残は5125億円、売り残9583億円だ。つまりネット裁定残はマイナス4458億円と、異常な需給関係がさらにレベルアップした格好になっている。世界のファンドのヘッジ売り市場となっている日本の現状を考えると、一気の改善は望めないが、まずはその影響度の薄い中小型株の水準訂正が期待される。

カギを握る銀行株、ダウ3万ドル説にも現実味

さらに、TOPIX(東証株価指数)のサブインデックスの1つである銀行株指数は、りそな銀行(当時)への2兆円公的資金投入等のあった2003年の金融不安時代と同水準にまで低下している。どうやら横浜銀行・千葉銀行の包括提携をきっかけとしてもう一度地銀再編が始まりそうだが、2003年以降の同銀行株指数は、ドル円相場の動きと極めて近い連動性を見せている。そのドル円は日米金利差と連動する。もちろん日本の絶対的金利レベルも重要である。

日本が2003年の金融不安から立ち直ったのは、銀行の既存株主権を消滅させなかった「日銀特別融資」がきっかけだったが、当時の1.5%前後の10年債利回りに代表される「金利」が機能したことが大きい。しかし、今はマイナス金利であり、それこそが銀行の復元力を削いでいる。株式市場の相場循環から言うと、アメリカ株は昨年の引き締め政策で1度死んだ。その後の緩和策で流動性相場が復活し、再び新しい相場のスタートラインに立ったところだ。

重要なのは、これから業績相場に移ることができるかどうかであり、そのシグナルは金利上昇となって現れるはずだ。つまり、今は流動性相場のため金利低下が株価上昇の要因だが、ダウ3万ドル以上に進むためには景気がさらに上昇し、企業業績がさらに改善するとともに、金利が上昇することも条件になる。

すでに先週のアメリカの10年債利回りの足(チャート)を見ると、金利は反転したかもしれない。それを確かめるには、今週の同国の金融株の決算と、それに反応する株価を見たい。株価の先見性からアメリカの今後が見えてくると言えそうだ。その結果、日本の金利も動き出す可能性もある。銀行株の動きこそが、株式市場全体のカギを握るという所以だ。

さて、日本の個人投資家は力の出ない状況が続いている。東証1部売買代金9日連続2兆円割れが起きている原因は、消費税増税以降の日本経済の不透明感にあるが、個人投資家の投資意欲が戻っていないことにも起因する。

日経平均は現在、昨年10月の高値2万4448円と同12月の安値1万8948円のほぼ中間点にあり、それほど大きなダメージは受けていないように見える。しかし、信用取引の損益率を見ると約マイナス15%前後で保ち合っている。この数字は、日経平均の見た目以上に個人投資家の傷が深いことを示しており、それゆえ追加投資の意欲が起きていない。信用取引の損益率で言えばマイナス1ケタあたり(2万2000円台)までの回復がないと個人投資家の再出動は無理のようだ。

だが、相場の日柄調整(日数の経過)からは、そろそろ局面が変わっても良いころだ。上昇への変化は「陰の極」から始まると言われる。売買代金やネット裁定残のマイナスなど、陰の極と思われる事象が続いており「今が買い場」のシグナルも点灯したまま、色あせつつある。こうなったら「我慢比べ」だ。以上のことから、今週の日経平均予想レンジは2万1400円〜2万2000円としたい。