大手保険会社が続々と「健康増進型保険」に参入している。昨年3月から発売されている第一生命「ジャスト」の「健診割」、昨年7月に住友生命が南アフリカの金融サービス会社と組んで開発・発売した「バイタリティ」、そして今年4月に発売開始した明治安田生命「ベストスタイル 健康キャッシュバック」等々。

 健康増進型保険とは、加入契約後に運動するなど健康になるよう努力して、健康診断の結果が改善したりすると保険料の割引やキャッシュバックが受けられる保険。これまでも、契約の際に、非喫煙や血圧、BMI値次第で保険料が割引されるタイプの保険はあった。そうしたタイプは「リスク細分型」と呼ばれる。健康増進型は、リスク細分型のように契約時だけでなく、契約後も継続して健康状態をチェックしていくタイプだ。よって、健康診断を受けなかったり、健康診断の結果が悪くなったりすると、保険料が高くなるタイプのものもある。

 では、実際のところ、健康増進型は人気なのだろうか。都内保険ショップの相談員は次のように話す。
「住友生命のバイタリティ、うちでは1件の成約もない。発売当初、住友の担当者が熱心に説明していったが、われわれがその熱量に付いていけなかった。お客さんもピンと来ない様子だった。ウエアラブル端末もそうだが、われわれは説明するのが大変。大手は保険料の格安競争を続けてきたが、そこから離れたかったのではないか」

 果たして、健康増進型は本当にトクなのか。健康増進型保険に懐疑的な総合保険代理店ファイナンシャルアソシエイツの藤井泰輔代表はこう指摘する。

 「大手生保の商品は、もともとの保険料が高過ぎるので、健康増進型で保険料が2〜3割安くなったり給付金が支払われたりしても、割安感が全くない。新商品を出して切り替えさせようという相変わらずの販売手法(転換)だ」

 中高年齢層で第一や住友、明治安田の保険に入っている人は、若いころに契約した商品が多いかもしれない。そういう昔の保険商品に健康増進特約を付加することはできない仕組みなので、これから健康維持・改善して保険料を安くしようと思ってもできない。

 ファイナンシャルプランナーの高野具子氏は健康増進型のニーズについてこう話す。
「例えば、肥満でたばこを吸うけど何かやらなきゃとモヤモヤしているような人には背中を押してくれる商品になるかも。ただ、保険販売の現場を見ていると、健康増進型を求めて相談に来る人はいない。また、保険会社にとっては、日常的に健康維持努力している人の方が保険金支払いリスクは低い。死亡リスクが低ければ、それだけ長く保険金を払い続けてもらえる」

 健康維持に積極的な人は優良顧客であり、そういう人たちを囲い込みたいという保険会社の思惑も透けて見えてくる。

 健康増進型を検討する場合、将来的に健康維持のモチベーションが続くのかどうか自分に問い掛けてみる必要がある。ジム通いでも散歩でも、ある程度時間に余裕がないと難しい。藤井氏はこう話す。

 「公的保険制度が充実しているにもかかわらず、日本人はムダな保険に入り過ぎ。保険に年間35兆円も払っているが、これは韓国の国家予算並みだ。大手生保の社員らは自分たちが販売しているものに入らず、格安でお得なものに入っている。高齢者は特に保険を見直して整理する時期であり、健康増進型に限らず、新たに考える必要はない」

 現在、かんぽ生命の不適切営業が大きな社会問題となっているが、軽々しく新しい保険商品に飛びつくようなことだけはしないようにしたい。