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●トガりまくったゲーミングノート

デルのゲーミングPCブランド「ALIENWARE」は、定期的にトガッたPCを投入してくる。特にフラグシップとなる「AREA 51」シリーズは先鋭的だ。先行するデスクトップPCも個性的なデザインだったが、ノートPCの「ALIENWARE AREA-51m」も非常にユニークな特徴を備えている。

ALIENWARE AREA-51mはもちろんハイエンドモデルの位置付けとなる。ほかのALIENWAREノートPCは昨今のトレンドにのっとり、スリム化が進んでいるが、ALIENWARE AREA-51mは肉厚で大型のきょう体を採用しており、貪欲にテクノロジーを詰め込み、パフォーマンスを追求する。

本製品のトガッているところは、ただの肉厚ゲーミングノートPCとは違い、CPUやGPUなど、一般的なノートPCでは交換不可能な主要パーツを交換・アップグレード可能としているのだ。

基本スペックは、第9世代Intel Core iプロセッサにNVIDIA GeForce RTX 20シリーズとなっているが、当初はエントリーモデル、途中でパフォーマンス不足を感じたら上位のCPU、GPUに交換していくといったことも可能。例えば、新しいGPUが出た際に交換用のオプションパーツが用意されるなら、最新のグラフィックスに換装できる。

○初期のALIENWARE現代風にアレンジした外観

まずは外観から紹介していこう。今回の評価機のカラーはルナライト(シルバーグレー)。メインカラーがルナライトで、後部のみダークグレーのツートーンだ。ゲーミングノートPCでホワイト系カラーはめずらしく、個性を主張したいユーザーの興味を引くのではないだろうか。ALIENWAREのスタンダードカラーである「ダークサイド オブ ザ ムーン(ダークグレー)」も用意されている。

液晶天板では、おなじみの光るグレイ(宇宙人)エンブレムも目を引くが、右下の「A51」マークもアクセントになっている。

全体的なフォルムとしては、手前がスリム、奥が肉厚の傾斜デザインだ。こうしたデザインは、デルは「Alienware初期のデザインにヒントを得た」ものという。とはいえ現代風にアレンジされたそれは、いまのトレンドを取り込みスタイリッシュになっている。

ゲーミングノートPCでお約束のLED発光は、液晶天板裏の角度からはグレイのエンブレム、背面排気口の縁取り部分、正面からはキーボードバックライトとキーボード上のグレイのエンブレム、そしてタッチパッド部分だ。LEDの制御はALIENWAREシリーズ共通のAlienFXから行う。

液晶パネルのサイズは17.3型。過去に18.4型という超巨大ノートをリリースしたこともあるALIENWAREからすればひと回り小さいが、一般的にはノートPCにおける最大パネルサイズである。

大画面の17.3型ならば、ほかのパネルサイズと比べて不満を感じることが少ないだろう。さらに、狭額縁ベゼルを採用しているため、実際にフットプリントはそこまで大きいわけではない。

解像度は1,920×1,080ドットのフルHDで、駆動方式はIPS、非光沢で映り込みもそこまで多くはなかった。解像度はさらに上の4Kを望む声もあるだろう。ただし、4Kパネルの解像度そのままに60fps超のフレームレートを求めようとすると、現在のGPUでは画質を落とさざるを得ない。

また、eスポーツでは144fpsのように高いフレームレートが要求される。GPU性能とのバランスを考えると、1,920×1,080ドットが今後もしばらくスタンダードであると思われる。

●2.5Gbit LANなど最新のインタフェースを取り入れる

キーボードはAlienware TactXキーボードを採用しており、アンチゴースト、nキーロールオーバーに対応するなどゲーマー向けの機能を備える。キーストロークは2.2mm。マクロキーも利用できるほか、LEDバックライトを搭載しており、AlienFXから1キー単位で発色の設定が可能だ。

評価機は日本語配列のものだった。右Altがない点や、PrtSc、Pause、InsertがFnキーとの併用になっているところが変わっているものの、そこまで使用頻度の高いキーではないので、気にならないだろう。

ほか、標準キーの左に1列、10キーの上に1列、コマンドキーを備えている。左側の1列は、標準キーからスペースを置いて配置されているので、打ち間違えも生じにくい印象だ。そしてタッチパッドは面発光するタイプで、暗い場所でも領域を見失うことがない。

インタフェースは、左右側面と背面の3面に分けて搭載している。左側面にはUSB Type-C(Thunderbolt 3)、USB 3.0 Type-A、オーディオ入出力、右側面にはUSB 3.0 Type-A×2と左右はシンプルな配置だ。

背面はHDMI、Mini DisplayPort、2.5Gbit LAN、Alienware Graphics Amplifier用端子、ACアダプタ用ジャック×2を設けている。

ここでのポイントは2.5Gbit LANに対応しているところ。2.5GbEは、ギガビットイーサネット(1Gbps)で用いられているカテゴリ5e/6ケーブルを用いて2.5Gbps接続を可能とするものだ。通常のギガビットイーサネット対応ルータと接続した場合でも効果が出るケースもある。

また、これに対応するマルチギガビットイーサネット(一般的に1GbE以上の2.5GbE、5GbE、10GbEのすべてあるいはいずれかをサポートするネットワーク機器)と呼ばれる、家庭向けのスイッチングハブやルータも徐々に登場しはじめている。

Alienware Graphics Amplifier用端子は、同名の外付けGPUボックス用の専用端子だ。GPUを交換可能な本製品では「アップグレード方法」としてのAlienware Graphics Amplifierがどれだけ有効なのかは不明だが、すでにAlienware Graphics Amplifierを持っている場合はそれを活用できる。

さらに考えようによっては、これをGPU用ではなく一般的なPCI Express拡張カードを外付けするボックスとして活用することも考えられる。映像編集ワークステーションのように強力なCPUとGPU、さらにエンコード用の拡張カードを必要とする用途などもカバーできるのではないだろうか。

ACアダプタは2つ同梱されていた。2つのACアダプタによって電力をまかなう手法は、デルに限らずハイエンドカテゴリのゲーミングノートPCでは時々見かけるものだが、一般的には同形のACアダプタを2つセットで使う。

しかし、ALIENWARE AREA-51mのものは出力の異なる2タイプを組み合わせている。1つは弁当箱のように大きな330W出力のもの、もう1つはそれよりも少し小ぶりの180W出力のものだ。合計510Wの出力で、デスクトップ版のCPUとGPUを組み合わせた本製品の要求する電力に対応する。

テストした範囲では、片方のみを接続した状態でもその電力供給とバッテリーの状態から最適なモードで動作しているようだ。例えば、自宅では2つのACアダプタを接続してフルパワーで動作、持ち歩く場合は小さいほうのACアダプタを携行し、パフォーマンスノートとして利用するといった使い方がイメージできる。

●ノートPCにデスクトップ級パーツを搭載

ALIENWARE AREA-51mの内部スペックに迫っていこう。同シリーズは、執筆時点で4モデル展開されており、カスタマイズにも対応するが、基本的に評価機をベースに話を進める。

ハイスペックで高価なモデルでレビューすることになるが、より手ごろな価格・スペックのモデルもあるので、そちらは製品ページを参照して欲しい。

評価機のCPUは、Intel Core i9-9900K。型番を見ると分かるように本来デスクトップPC向けとして使われるCPUだ。執筆時点ではノートPC向けにも8コア/16スレッドモデルが登場しているので、この点では同じ。

Turbo Boost時の最大クロックも、ノートPC向け最上位のCore i9-9980HKがCore i9-9900Kと同じ5GHzを達成している。

ただし、デスクトップPC向けのCPUは、定格クロックが高い。Core i9-9980Hは2.4GHzだが、Core i9-9900Kは3.6GHzだ。この点で、マルチスレッド実行中の動作クロックが高い分、体感速度も通常のノートPC向けCPUよりレスポンスがよいと思われる。

ラインナップを見ても、最小でCore i7-9700、ほかCore i7-9700KやCore i9-99900と、基本的にCore i7以上のグレードのデスクトップPC向けCPUが採用されている。

CPUの交換は、デスクトップ向けCPUと同じような形で行うことになる。ヒートシンクの取り外しやグリスの塗り替えなど、自作PCかあるいはそれ以上のスキルを要するが、交換可能としている点は評価できる。サービスマニュアルにはその手順が写真とイラストで解説されているので、これを参考に作業しよう。

GPUはNVIDIA GeForce RTX 2080が搭載されていた。Max-Q表記はなかったので通常版と思われる。製品スペックでは、「ファクトリオーバークロック」と記載されているが、GPU-Z上から見ると、定格が1.575GHz、ブースト時が1.755GHzと、これはノートPC版よりもかなり高く、デスクトップ版の定格とFounders Editionの中間といったところだ。

CUDAコア数についてはデスクトップ版もノート版も2,944基で同じ。つまり、性能的にもデスクトップ版に準ずると予想される。ほかのモデルでは、GeForce RTX 2060/2070も用意されている。

「DGFF」と同社が呼ぶグラフィックスカードの交換も、基本的にはCPUと同様、ヒートシンクの取り外しが必要だ。カードといってもデル独自のデザインだから、この規格に合ったカードが用意されていないとそもそも交換できない。

メモリは、DDR4-2400で32GBが搭載されていた。16GBモジュール2枚のデュアルチャネルだ。スペック表では、4 DIMM構成で16GB×4枚、64GBまで増設可能とある。

○高速ストレージを贅沢に使う

ストレージはCドライブがRAID構成で2基のIntel Optane SSD 800p(SSDPEK1W120GAD、128GB)を搭載。評価機では、DドライブにSeagate FireCuda SSHD(ST1000LX015、1TB)を採用していた。

Intel Optane SSDは、通常のSSDで用いられるNANDではなく、Intel 3D XPointを用いており、書き換え回数やランダムアクセス性能が高い。ただしOptane SSD 800pシリーズは容量が最大でも118GBと少なく、PCI Express Gen3 x2接続なので転送速度も単体では1.5GB/s程度になる。

そこを解消すべくRAID化しており、2つ合わせて約240GB、シーケンシャル速度で約3GB/sとスキのないスペックに仕上げている。Optane SSD 800pは高価なので、それを2基用いるのはかなり贅沢だ。

DドライブのFireCuda SSHDは、HDDをベースにSSDキャッシュを積んだ製品だ。HDD部分は2.5インチの5,400rpmと控えめのスペックだが、転送速度を計測すれば、シーケンシャルで150MB/s前後、ランダムアクセスも1MB/s程度出ている。とはいえ、基本的には少し快適なHDDといったあたり。プログラムを置くというよりはデータドライブとして活用するとよい。

ストレージのオプションは非常に豊富で、コストを抑えるならばSSHDのみの構成も可能なようだ。また、SSDもいくつかのモデル、容量、RAIDが選べる。

●圧倒的なパフォーマンス。レイトレーシングも十分実用的に

それでは、ALIENWARE AREA-51mのパフォーマンスをベンチマークで検証していこう。先に述べたとおり、ここからは評価機のCore i9-9900K+GeForce RTX 2080のパフォーマンスである。

同シリーズでもCPU、GPUの異なるモデルではスコアに大きな違いが生じる。ALIENWARE AREA-51mシリーズの最高スペック時のパフォーマンスとして見ていただければ幸いだ。

まずはCPU性能。CINEBENCH R15では、Multi CPUが1916.63cb、Single CPUでは207.04cbだった。2000目前のマルチスレッド性能、200を超えるシングルスレッド性能なので、CPU性能不足を感じることはまずないだろう。CINEBENCH R20でも、4770cb、497cbでノートPCとしてはトップクラスのパフォーマンスだ。

アプリケーション性能を見るPCMark 10は、Extendedスコアが9317とすでに10000ポイントに迫る。Essentialsシナリオ、Digital Content Creationシナリオも10000ポイントを超え、Productivityシナリオも9000ポイント台に乗せている。

CPU、GPUともに高性能、さらに潤沢なメモリ、ランダムアクセス性能も十分なストレージ構成なので、PCにおける全般の用途で高いパフォーマンスを発揮することができると言える。

3DMarkを見ても、どれも高いスコアだ。標準のFire Strikeでは22815となり、DirectX 12のTimeSpyも10380を記録した。もちろん、デスクトップ版を含めれば上位にGeForce RTX 2080 Tiがあるわけだが、ノートPCでこれを搭載することは難しく、GeForce RTX 2080ファクトリーオーバークロックのこのスコアが、ノートPCにおけるトップスコアと思ってよいだろう。

これだけ高性能だとVRもさぞ快適だろう。まずOculusに新モデルRift Sが登場したのでその互換性テストを実行してみたが、もちろんオールグリーンだった。

次にVRMarkを実行してみた。もっとも軽量なOrange Roomでは11457ポイントでAverage FPSも249.76fpsとかなり高い。やや重いCyan Roomも10442ポイントで227.63fps、もっとも重いBlue Roomはさすがに3390ポイントで73.9fpsだったが、Cyan Roomまでターゲットfpsを超えているので、現在のVRタイトルの多くをカバーできる。

実タイトルのゲームベンチマークを見ていこう。解像度は基本的に1,920×1,080ドットとしている。

まずはFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク。かなり重いタイトルだが、高品質時で10724ポイント、「とても快適」評価なのでプレイに問題はない。標準品質なら13921ポイントで最大評価の「非常に快適」に上がった。

次も比較的重いTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsを試したが、最高プリセットの「ウルトラ」時で平均73fps、最小62.25fpsとなり、最高の画質をパネル解像度そのまま、常時60fps超で楽しめることが証明された。続くShadow of the Tomb Raiderも、「最高」プリセットで118fpsという結果だ。

GeForce RTX 20シリーズの独自機能として、リアルタイムレイトレーシングとDLSSの効果をMetro Exodusで試した。Metoro Exodusのビルトインベンチマークでは、RTXというリアルタイムレイトレーシングとDLSSがオンのプリセットがあるが、この2つの項目以外はUltraプリセットに準じている。

まずUltraプリセット時は平均75.41fpsだった。対するRTXプリセットは64.76fpsだ。リアルタイムレイトレーシングはかなり重い処理だが、DLSSがフレームレートを持ち上げて10fps程度の低下に抑え、60fpsを超えているので十分に楽しめる性能である。

●アップグレードの「仕組み」によって長く使えそうなALIENWARE

ALIENWAREノートのフラグシップはやはりこうでなければいけない。ゲームプレイを盛り上げるデザインやギミック、デスクトップ級のパーツを詰め込んだパフォーマンス、そしてALIENWARE AREA-51mで盛り込まれたのがパーツ単位でのアップグレード可能な仕組みだ。

デザインに関しては、人それぞれ好みがあるので感じ方はさまざまだろう。筆者の印象としては、写真で見るよりも実物のほうがよい感じだった。17.3型という数字上よりも小型だし、ルナライトカラーもアリだ。

パフォーマンスはベンチマーク結果のとおり。特に今回の評価機のようなハイエンド構成では、現行タイトルが最高の画質で十分に楽しめる。ほかのモデルもどれもGeForce RTXなので、最新グラフィックスを体感できるという点でモチベーションになるだろう。

アップグレードについては、次世代GPUが発表された際にどうなるか見守る必要があるものの、こうした仕組みはないよりもあることが重要だ。現在の多くのノートPCでは、ユーザーが本体の分解、メンテナンスやメモリの増設などを許さないものが多い。

そんな中で、万が一の時には自分でメンテナンスでき、パーツの交換やアップグレードができる本製品は、仕組みがあるという時点で長く愛着を持って使える要件を満たしている。

将来のGPUを搭載するDGFFがリリースされれば、さらにハッピーというわけだ。こう考えれば、購入の決め手がそろった製品と言えるだろう。