バスの乗り降りがスムースになれば運行にもつながる

 ブリヂストンは、横浜国立大学・交通と都市研究室、公益社団法人・日本交通計画教会、株式会社アドヴァンスと共同で、「バス停バリアレス縁石」を開発。岡山県・岡山市の後楽園にあるバス停にて実用が開始されており、開発の経緯やどのような技術が盛り込まれているのか、技術説明会が開催された。

 まずはじめに、今の日本の都市交通に関して横浜国立大学の中村文彦教授は、「現在、自家用車に依存しすぎているのではないか? そして、バスはもっといろいろなことができると考えております。日本のバス停は、バスが停車した際に離れているため、乗り降りがしにくいです。もっとバス停に近づいて停車できれば、よりスムースに乗り降りができ、停車時間の節約も可能になります。そうなれば、バスの運用ももっとスムースになるはずです」と、日本のバス事情について解説。

 中村教授によると、すでに海外ではバスがギリギリまでバス停に寄せられるような縁石の工夫が見られるという。そこで、欧州のバス停で採用されているカッセルカーブプラスという縁石を取り寄せ、横浜国立大学内に試験的に設置。バス会社にも協力してもらい実験したところ、従来の縁石はバス停とバスの距離は平均約40cmだったが、輸入した縁石では平均約10cm以下まで寄せることが可能になったという。

 しかし、このままではバスのドア形状によっては開閉時に縁石に接触してしまったり、タイヤが縁石に当たってしまうことによることのダメージといった課題も見つかった。そのため、国産版の縁石開発が必要だという結論に至ったという。

 また、公益社団法人 日本交通計画協会の萩原 岳さんは「現在の状況では、場所によっては乗降の際に路面へ一度降りなければならないということもある。バリアフリーのためにということでノンステップバスの普及も進んでいるが、車両自体がノンステップになっていても乗り降りのバス停がバスと正着して段差がなくならなければ、本当のバリアフリーとは言えないのでは?」とコメント。

 参考として取り上げたフランスでは、公共交通機関のユニバーサルデザイン化が法制度で定められており、バス停に関してはバスとバス停の水平方向ならびに垂直方向の離隔は50mm以内に収めようという目標がある。これが実現されているため、ベビーカーや車いすも、そのままスムースに乗り降りが可能になっているという。これに対応するため、ヨーロッパではバリアレス縁石の採用が進んでおり、バスの正着は一般化している。

これで完成ではなく利用者の声を反映して進化する可能性もある

 ところで、ブリヂストンと縁石という組み合わせはあまりイメージが湧かないと思うが、これは同社のCSRの考え方“Our Way to Serve”を体現する、顧客価値・社会価値提供の一例とのこと。今回の縁石開発あたって、ブリヂストン ソリューション技術企画部 部長の田村大祐さんは、まず横浜国立大学に設置されているカッセルカーブプラス縁石を国産版にアレンジするために必要な課題を抽出することから始めたという。

「バスのドライバーには、縁石には絶対に当ててはいけないという文化があります。ドライバーに対して、縁石へ寄せてくださいとお願いするのは、大きな負担となってしまいます。それは、経験豊富なベテランドライバーになるほど大きくなります。そして、もうひとつの課題はタイヤが縁石に当たるということです。タイヤのサイドは元々接触しても大丈夫なように設計されていません。接触した際の衝撃を緩和させ、ダメージを小さくするという2点が、大きな課題となりました」

 ブリヂストンは横浜国立大学の中村教授と共同で、これらふたつの課題をクリアするべく2017年6月に独自の正着縁石を開発。縁石に寄せるのが難しいようであれば、車両が自然とバス停へ寄っていけるよう、スロープ形状を設けたり、停車した際に縁石とバスが接触しないよう、段差を設けるなど接触回避形状を採用。そして、タイヤが接触した際のダメージを軽減させるため、ラウンド形状とした。これにより、緩やかにタイヤが接触するためダメージ軽減に効果があるという。

 ブリヂストンのテストコース内に試験設置し、外部からバスドライバーを招いて効果を確認したところ、非常に運転しやすいというコメントが寄せられたそう。衝撃も少なく、正着距離も非常に小さくすることができたという。

 じつは、このブリヂストンと横浜国立大学の共同開発のほかに、前出の日本交通計画協会と土木建築用資材の開発を行っている株式会社アドヴァンスも、バリアレス縁石の開発を行っていた。これらを同時進行でふたつ開発するのではなく、1チームでより良いものを開発し、素晴らしさを伝えていきたいという思いのもと、それぞれの良いところを融合させて進化させることになったという。

「融合させるといっても、一番の課題はいかに正着させるかです。それぞれの形状をうまく取り入れ、現時点で最高といえる縁石が完成しました」と田村さん。このバリアレス縁石は、6月10日より岡山県岡山市の「岡山市後楽園前」バス停に導入され、運用が始まっている。

 もちろんこれで完成というわけではなく、実際に運用した際に見えた課題をフィードバックさせ、進化していく可能性もある。そして肝心のタイヤも、サイドウォールが削れた際の対策として、摩耗しにくいゴムシートを張り替えることが可能になるようなタイヤも開発しているという。

 燃料電池で走行可能なバスが誕生し、海外ではEVバスも増えている。バスの進化は車両だけでなく、バス停など周辺環境も合わせて進化していくことが必須だ。このバリアレス縁石は、スムースなバス運用に欠かすことのできない存在となることだろう。