初心者の入部率が高い、川口市立上青木中・大野先生が考える「部活動の役割」

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野球人口が年々減少する中、中学校の部活動において、独自の取り組みで新入生が増えている地区がある。それが、埼玉県南東部に位置する川口市だ。そんな川口市内で2019年度、初心者の入部率がもっとも高かったのが川口市立上青木中だ。新入生10名中8名が中学から野球を始めた生徒で、そのうち3名が女子生徒。三学年合わせると19名中、12名が初心者となる。前回に続き、大野尭之監督に、部員増の要因を教えてもらった。

■週休2日は指導者にとってもプラス

――中学から野球を始めた子どもたちに、どのような指導をしているのでしょうか。

大野 一番重視するのは、運動能力を高めることです。ボールを打ったり投げたりすることももちろん大事ですけど、それと並行して、運動能力を上げるトレーニングをする。それが、技術の上達にもつながっていると感じています。トレーニングに関しては、株式会社COZYの小嶋満さんにサポートいただいています。

――「複数の競技をすることが、身体操作性を高めることにつながる」という考え方もあります。

大野 それは実感しています。小学生のときにバスケットをやっていた女子部員(中1)がいるのですが、野球をやってみてもステップワークがうまい。あと、テニスをやっていた男子部員(中1)は、ボールを打つ感覚が抜群に上手。小学生のときにほかのスポーツをやっていたからこそ、身に付いたものがあると思います。

――練習の活動日は週5日ですか?

大野 部活動ガイドラインに則って、週休2日(日曜・月曜が休み)です。活動時間に関しても平日はおおよそ2時間、休日は3時間になります。

――「もっと練習したい!」と思いませんか?

大野 ガイドラインが入ってきたことで、勇気を持って、週2日休めるようになりました。正直、休みたいですね。なぜかというと、休まないと、初心者の子たちを教えられないからです。学校の授業と同じで、上達させていくためには、いろいろな仕掛けが必要になります。ただノックを打っているだけでは、なかなかうまくなっていきません。仕掛けを準備するためにも、休みは必要ですね。

――休みがないと、その準備ができないと。

大野 そういうことです。事前の段取りが大事ですね。

――「週休2日」に対する、子どもたちの反応はどうですか?

大野 これが不思議なもので、友達同士で土手に行くなどして、自主的に練習しています。いいことですよね。

――いい意味でお腹いっぱいになっていないのでしょうね。

■部活動=生涯スポーツの入り口

――ここ最近の流れを見ていると、部活動が縮小傾向にありますが、中学校における部活動の役割をどのように考えていますか?

大野 まず言えることは、部活動は絶対に必要、ということです。私の場合は野球部を見ているので「スポーツ」という観点になりますが、生涯スポーツとしての入り口が中学校になかったとすると、スポーツに触れることなく、大人になる子が増えていくと思うのです。スポーツをすることで、学校の授業とはまた違った何かを学べるはずです。たとえば、挨拶や礼儀、時間の使い方など、社会に出ても役立つことを学べるとしたら、部活動には大きな意義があると思います。

――部活動を地域スポーツクラブに移す話も出てきています。

大野 その考えもわかりますが、地域にその受け皿があるのかとなると、現時点ではどうでしょうか。それに、どうしてもお金がかかってくる話です。お金を払える家庭しか、スポーツができなくなるのには抵抗があります。

――ちなみに部費はどのぐらいですか?

大野 保護者会費として、月に1000円です。さまざまな家庭があるので、電車やバスを使った遠征もやっていません。練習試合は自転車で行ける範囲にとどめて、極力、お金がかからないようにしています。

――軟式野球の意義はどう考えていますか?

大野 中学から野球をやりたい子にとっては、恐怖感の少ないボールだと思います。それに中学校のグラウンドでの活動と考えたときに、環境的に硬球を扱うのは無理です。軟式野球と硬式野球がうまく共存することで、子どもたちが選択できる環境があるのが理想ではないでしょうか。

(取材・写真:大利実)