【春日学園少年野球クラブ】練習は週に半日、新しい形を目指す少年野球チーム(前編)

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「週1回、半日の練習で結果を出している少年野球のチームがありますよ」

そう紹介してくれたのは筑波大学の川村卓監督だった。そのチームがつくば市を中心に活動している春日学園少年野球クラブだ。チームの創設は2015年3月。それまでにない形の少年野球を目指して活動しているというチームの練習を取材した。

冒頭でも触れたように、春日学園少年野球クラブの練習は週1回、半日と決められている。これは「(練習時間)週末1/4ルール」というクラブの方針によるものだ。そしてチームの指導について、筑波大学大学院のコーチ学専攻の学生が主体になって行われている。少年野球チームは保護者や地域の野球経験者が指導者を務めているケースが多いことを考えると、確かに従来のチームとは大きく異なると言えるだろう。クラブを創設した岡本嘉一代表によると、コーチの権限は指導だけではないという。

「練習内容はもちろんですが、試合でどの選手を起用するかといところまで大学院生のコーチにお願いしています。監督は別にいますが、あくまで練習、試合の取り組みの中心はコーチです。そこまでやってもらわないと、せっかく来てもらっている意味がないですから。子ども達にとっても、野球のことやコーチングを専門的に学んでいる人から指導を受けた方が良いことは間違いないですからね」

取材当日の練習はちょうど上級生(5,6年生)チームの監督が都合により不在だったが、そんなことは全く感じさせずにスムーズに練習が始まっていた。それも普段からコーチ主体で取り組んでいるからだと言えるだろう。

そしてまず特徴的だったのがアップである。全員で揃ってランニングするところまでは一般的なものだったが、その後のメニューが非常に豊富なのである。最初に行ったのはつま先立ちでの歩く動きと前屈を取り入れたもの。

その後は四つん這いで進み、途中で仰向けに向き直して後ろ向きに進むというもの。そして全身を使ったスキップを通常の方向と後ろ向きに行ったり、片足を持ってケンケンするような動きも取り入れていた。

これらは全て普段使わない身体の部分、筋肉を動きの中で刺激してやるためのものだという。ストレッチというと立った状態や座った状態で行うメニューが一般的だが、そうではなく身体を動かしながら行うことであらゆる動作の取得に繋がる効果があるそうだ。

その後もダッシュの要素を入れたメニューを行っていたが、これも単純に真っ直ぐ走るものではなかった。まず行っていたのは後ろを見ながら走り、体の向きを切り替えながら進むというもの。外野手の背走の動きに通じるものがある。そしてその後のダッシュもコーチの指の本数を目で確認するもの、コーチの声を耳で確認するものといったように、あらゆるものをスタートのキーとして行っていた。これらも小学生年代の子どもにあらゆる刺激を与える意味で有効なものと言えるだろう。

アップの次はキャッチボールに入ったが、これも単純に肩を温めるというものとは異なっていた。まずは膝をついて下半身を使わない状態で行い、その後はボールをあえて地面においてそれを拾って投げるという動きを取り入れていた。指導している佐治大志コーチにその狙いについて聞くと、非常に分かりやすい回答が返ってきた。

「子どもの場合、高校生や大学生と違って動きの再現性が低いんですね。分かりやすく言うとばらつきが大きいんです。だからまずは動きを制限して上半身だけで投げることで、ばらつきを小さくしてやることが目的です。落ちているボールを拾って投げる動きに関しては、投げる腕の回内、回外動作が強調されやすくなるんですね。いきなり全身で使ってただ投げるよりも、動きの取得はしやすいと思います」

大人や高校生がやっているメニューをただなぞるのではなく、小学生という熟練度の低い年代に合わせてアップやキャッチボールも工夫しているところは専門的にコーチングを学んだスタッフがいる賜物と言えるだろう。岡本代表の話も、アップとキャッチボールを見るだけで非常に納得がいくものだった。

レポート後編に続きます

(取材・撮影:西尾典文)