有権者らとハイタッチする安倍首相(C)日刊ゲンダイ

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「自公、改選過半数の勢い」――。参院選突入後、大手メディアが最初に行った「選挙情勢調査」は、どこも“自民圧勝”だった。勝敗を決する32ある1人区も軒並み自民候補の勝利。朝日新聞は、「自民リード23」「競り合い5」「野党リード4」としている。

“応援団”が離反…安倍自民 参院選2人擁立の複数区で黄信号

 しかし、自民党は本当にそこまで強いのか。自民党陣営からも、戸惑いの声が上がっている。

「大手メディアの調査通りなら、大勝した6年前と同じくらいの議席数になります。でも、人の集まりは良くないし、反応も良くない。6年前とはまったく違う。現場からは“ちょっと雰囲気が良くない”という声が上がっていた。なのに、情勢調査では圧勝ですからね」(自民党関係者)

 大手メディアが実施した情勢調査は、自民党に強く出過ぎている可能性が高いという。

「調査は公示日の4日と翌5日に行われています。この時期に世論調査をすれば、自民党に強く出るのは当然です。野党候補はまだ名前が浸透していないからです。たとえば、32ある1人区のうち、野党候補は長野と佐賀を除いてすべて新顔です。しかも、擁立が遅れた。まだ知名度が低いのです。しかも、32選挙区のうち、18選挙区は党派色を消すために“無所属”として擁立している。世論調査で『自民候補の○○と、無所属の○○のどちらに一票を入れますか』と聞かれると、やはり有権者の多くは政党の公認候補を選ぶ。選挙期間は17日間ある。野党候補の知名度が上がっていけば、情勢は変わっていくはずです」(政治評論家・本澤二郎氏)

 しかも、朝日新聞の調査の場合、投票行動を明らかにしていない人が5割に達している。

 4日と5日に行われた情勢調査は、自民党のピーク、野党の底という可能性も高い。

■アナウンス効果も

 実際、「自民リード」23選挙区のうち、青森、福島、山梨、三重、奈良、香川、大分、佐賀、長崎の9選挙区は「逆転可能選挙区」だ。

「ある調査では、山梨の野党候補は、1週間で10ポイントも数字を伸ばし、自民候補との差を縮めています。徐々に名前が浸透しはじめているのでしょう。同じような傾向の選挙区がいくつもあります。青森、福島は、前回3年前は野党統一候補が勝利している。三重は民主党の代表だった岡田克也氏の地元です。佐賀、大分、長崎の九州3県は、自民党も激戦区とみています」(野党選対関係者)

 複数区でも、自民党の2人目の候補が落選する可能性のある選挙区が、北海道、東京、千葉、広島と4つある。

 朝日新聞の情勢調査では、4選挙区とも自民党が2議席を取りそうな勢いだが、1人の候補者に自民票が集中すると、2人目は危ない。典型例が東京だ。丸川珠代氏が票を集めすぎると、武見敬三氏は次点に沈む恐れがある。

 さらに、大阪選挙区(4人区)に出馬している太田房江氏も安泰ではない。自民党は太田氏1人しか擁立していないが、2人擁立している維新の会が保守票を大量に奪うと、よもやの落選もあり得る。

「投票日の当日に投票先を決める有権者も数多くいます。98年の橋本政権の時の参院選は、投票日直前に風が変わり、自民党が大敗しています。“自民党が勝ちすぎるのは良くない”と有権者が考えるアナウンス効果もあるでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 自民党が勝利するかどうかは、投票率次第だ。投票率が10ポイント上がれば、野党が次々に逆転していくとみられている。