かんぽ生命保険が顧客に不利益となる契約を繰り返していた問題で、この事実を報じた西日本新聞に、現職の郵便局長を含む日本郵政グループ関係者から50件を超す「内部告発」や憤りの声が寄せられている。

 「現役の郵便局長をしております。郵便局の実態を暴く記事を支持しております」。この人物は、郵便局の過剰なノルマやサービスの低下、離職率の高さなどを嘆きつつ、郵便局長たちの中には「(かんぽ生命保険の)不適切営業は対岸の火事であり、ノルマのためにはやむなし。大したことと思っていない」という空気があると打ち明けた。

 顧客に契約内容を説明しないなど保険業法違反に当たる営業行為や、内規違反の不適正な営業が全国で繰り返されていることをめぐっては「現実離れした重い営業ノルマが背景にある」と指摘されている。日本郵政の長門正貢社長は不適切な営業を認めて陳謝した6月下旬の記者会見で、ノルマ廃止も含めた再発防止策を検討することにも言及した。

 ただ、関東の郵便局で保険の渉外営業を担当している現役社員は「(不適切営業について)あれだけの報道があってなお、現場は数字を毎日求められています。過剰なノルマは何も変わっておらず、管理職から詰められる毎日です。そして、こうしている間にもたくさんのお客さまがだまされ、被害が出ているのが現場です」とつづった。不適切営業の温床として、「過剰なノルマ、管理職からのどう喝、懲罰研修などはもちろんですが、圧倒的に給料が低いことも原因の一つ」と指摘。数年前に渉外社員の基本給が削減され、「保険の契約がとれなければ生活できません。保険の契約を取って稼ぐしかなく、結果的に不適切営業をしてしまうという流れです。現場は限界に来ています」と苦しい胸の内を明かした。

 匿名を条件に、不適切営業の「手口」を赤裸々に明かす声も数多く寄せられている。

 現役社員とみられる人物は、無料通信アプリLINEを通じて、こう書いた。「事前にゆうちょ銀行の預金残高を調べた上で、高齢者宅を訪問する。70歳以上だと契約に子どもの同席が必要になるので、次のように説明する。『貯蓄残高が多いと高齢者施設に入所できないので、貯蓄を減らした方がいい。その貯蓄をかんぽ生命保険や投資信託に移せば、資産隠しができて施設に入れる』」。そして「こんなことはやりたくないが、毎日のようにノルマに追われて、退職者も増え、一人一人の社員の負担がとんでもないことになっている」とSOSを取材班に送った。

 別の元社員によると、「貯蓄や満額保険金など数百万円単位のお金を、相続対策や節税と称して保険契約に結びつける話法がある」という。「高い実績を挙げている社員の多くが、この話法に手を染めている。どんな手を使おうとも営業成績がいい社員が評価されるという仕組みがおかしいと思い、退職した」

 保険営業を長く担当していたという元社員は「営業成績は上位だった」と自身を振り返った上で、問題の根本には「契約を取った客のサポートを社員にさせない会社の体質がある。『以前の客ではなく、新しい客から契約を取ってこい』と指示され、以前の客に会うと反省文を書かされた」と明かす。上司にばれないように休日になじみの顧客を訪問していたという。元社員は「郵便局そしてかんぽ生命は、お客さまあっての仕事。お客さまを最優先することの大切さを分かってほしい」と訴えた。

 本紙が昨年の夏以降、繰り返し報じている年賀状や暑中・残暑見舞い用はがき「かもめ〜る」の「自腹営業」問題でも、日本郵政の長門正貢社長は販売ノルマの廃止を表明している。ただ、同社関係者は「廃止されたのは、あくまで個人ノルマで、班単位のノルマは依然として存在している。達成できないと同僚に迷惑を掛けるので、個人ノルマより厄介だ。班、課、局…。ノルマは幾重にもある。そもそも年賀状やかもめ〜るに競争企業はないのに、なぜノルマがあるのか」と憤った。

 取材班に寄せられた声からみえてきたのは、郵便局の仕事に誇りを持ちつつ、郵便局を信頼してくれる客を大事に思って現状を憂う社員も多いということ。郵便局で保険営業をしているという現役職員は、こうつづった。

 「真実を明らかにし、うみを出し切ることこそが、未来の郵便局の信頼回復に繋がる」