カレーハウスCoCo壱番屋の、驚くべき「生存率」の仕組みについて解説する(東洋経済オンライン編集部撮影)

日夜テクノロジーが進化する中で、ビジネスの手法、言い換えれば「儲けるための仕組み」も、どんどん変わってきている。あるサービスや企業に対して、「格安なのに、なぜやっていける?」「利用料ゼロで、どう稼いでいる?」など、疑問を抱いたことのある人もいるだろう。こうした「儲けの仕組み」について解説する当連載。第4回のテーマは、店舗数世界一のカレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」について。

飲食店の生存競争は厳しい。ある調査によると、「開店後2年以内に廃業する」飲食店は、約半数にも達するという。そんな状況の中でも、出店すれば「10店に1店しか潰れない」という「驚異の生存率」を示しているのが「カレーハウスCoCo壱番屋」だ(以下、CoCo壱番屋)。

CoCo壱番屋は、国内で直営店159店、フランチャイズ1108店の合計1267店を展開し、海外店を含めると、全世界で1439店舗(同)に達する。店舗数の増大と歩調を合わせるかのように、メニューも充実。

「手仕込とん勝つカレー」「手仕込ささみカツカレー」はいずれも登場から3カ月で200万食以上を売り上げた。さらにスパイスカレーシリーズも9カ月で約260万食のヒットもあって、業績も堅調に推移。

世界最大のカレーチェーン

CoCo壱番屋を運営する壱番屋の2019年2月期の決算では、売上高が502億1400万円、営業利益が44億4200万円で、営業利益率は約8.8%。ここ10年間の営業利益率は平均で10.2%と、外食産業としては高い水準をキープしている。

ある食品メーカーの調査では、日本人1人につき「年間73杯」もカレーを食べている。単純に計算すると「5日に1杯」。会社員なら、月曜日から金曜日までのランチで「1回はカレー」ということになる。今や日本の国民食ともいえるカレーで、国内最大のチェーン、いやギネス認定の世界最大のカレーチェーンを展開しているのが壱番屋である。

売上高でいえば、2017年2月期こそ、決算期をそれまでの5月決算から2月決算に変更したことで落ち込んだが、それを除けば、2010年以降、増収を続けている。

CoCo壱番屋が、なぜ「10店に1店しか潰れない」のか。その理由は同社独自の、のれん分け制度である「ブルームシステム」にある。

「ロイヤルティ」が存在しない

同社の国内店舗数1267店のうち、フランチャイズ1108店がブルームシステムによってのれん分けした店舗である。のれん分けしたフランチャイズには、他のフランチャイズと比べて、大きく異なる点がある。それは、「本部にロイヤルティを支払う必要がない」のだ。

フランチャイズオーナーにしてみれば、「カレーハウスCoCo壱番屋」の看板で店舗を持てて、その店で儲けたお金は「自分の収入」にできる。ロイヤルティを払わなくていい分、店舗の経営は安定するし、自分の収入が増やせるのでモチベーションも上がる。

さらに、このブルームシステムでは、フランチャイズオーナーになる条件として、「まずは壱番屋の社員になること」を規定している。通常のフランチャイズでは、オーナーを募集して、研修を受けさせて独立開業となるのが一般的だが、ブルームシステムではまずは正社員として働く。そして、いくつもの店舗でカレーチェーンの店舗運営を学び、その後に独立するという流れだ。

しかも、全員が独立を認められるわけではない。昇進制度で一定以上にならないと独立できない。つまり、独立開業のオーナーになる前に店舗経営のノウハウを徹底的にたたき込み、独立後はロイヤルティを取らずに、店舗の経営をオーナーに任せる。だからこそ、フランチャイズの継続率が約90%にも達し、生存競争の厳しい飲食業界にあっても「10店に1店しか潰れない」のだ。

それでは、フランチャイズからロイヤルティを取らないのであれば、CoCo壱番屋の本部は、いったいどうやって儲けているのか。それは、フランチャイズにカレーソースなどの使用材料を「卸売り」して儲けているのだ。

CoCo壱番屋のフランチャイズになるとロイヤルティを取られない代わりに、カレーソースなどの使用材料を本部か本部指定の業者から仕入れなければならない。つまり、本部は、使用材料の原価にマージンをのせてフランチャイズに売ることができる。そこで、利益を得ているのだ。

このシステムなら、フランチャイズが増えれば増えるほど、本部にとっては「確実な売り先」が増えることになる。原価にマージンをのせて売れるので、本部にとってフランチャイズは「確実に利益を得られる売り先」だ。フランチャイズが存在し続ければ、「儲かり続ける」システムともいえる。

確実に儲けるための仕組み

「ロイヤルティをとらない」ということで、「フランチャイズをやってみたい」という人を多く集め、社員として経験を積ませることで店舗経営のノウハウも学ばせる。この取り組みよって潰れないフランチャイズをどんどん増やして、そこに使用材料を売り込み確実に儲ける。ここに、壱番屋の儲けの仕組みがある。

CoCo壱番屋はカレーチェーンでありながら、一般の来店客からの売り上げだけにこだわるのではない。むしろ、来店客においしいカレーを出し、リピーターを増やし、そこで利益を上げていくという。カレー屋本来の儲け方を追求するのは、各フランチャイズが取り組むべきことともいえる。本部は、フランチャイズをいかに増やし、いかに生存させ続けるかが何よりも大切というわけだ。