熊谷に対するジャッジは誰もが「おかしい」と認めているが、敗北の原因は決して審判の出来不出来だけではない。 (C) Getty Images

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 女子ワールドカップで日本はなぜオランダを相手に敗退してしまった(1-2)のか――。理由はあまりにも明らかで、皆が知っていることだ。

 それは、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が、意図的でも何でもなかったクマガイ(熊谷紗希)のハンドに、PK判定を下したからである。ほんの3日後におこなわれたアメリカ・フランス戦(2-1)では、試合終了4分前にまったく同じハンドを犯したアメリカを前に、PK判定に値しないと決定したにもかかわらず、だ。

 チーム戦略やチームが描いた軌跡を、ころころ変わる審判の判定ぶりに結びつけて分析するのは不条理だが、もしあのPK判定がなかったら、私は「今ワールドカップでの日本の巨大な強みは、後半戦にプレーを加速できる力をもっていた点だった」と綴った記事を世に出していただろう。

 だが、結果は敗北。われわれは必然的に「日本の最大の弱点は、試合をスタートさせるのが遅すぎた点にあり、凡庸すぎた前半戦から、体勢を立て直すことができなかった」と書くことになってしまった。

 彼女たちが敗退した原因は全てがそこに集約されると思う。オランダ戦以外でも意味があった試合で、その弱点がいい意味で変容することはなかった。

 日本は初戦で、アルゼンチン相手に人々を納得させる試合ができなかった(0-0)後、次のスコットランド戦(2-1)では、いいスタートを切りながらも、1点差に追い上げられるという難しい勝ち方をした。そして、日本にとってこの大会で初めて同等の力量をもつ相手とぶつかる、意義のある試合となったイングランド戦に、0-2で敗北してしまった。

 双方が決勝トーナメント進出を決めていたこの試合こそ、アサコ・タカクラ(高倉麻子)監督が率いるチームの致命的弱点を、くっきりと光の中に浮き上がらせた。その弱点こそ、ラウンドオブ16でオランダに敗戦する(1-2)ことになった決定的原因だったといえよう。

 とにかく、前半があまりにも弱かった。ボールの後ろをひたすら追いかけるばかりで、デュエルにインパクトはまるで無し。ボールを支配されながら、試合最終盤になってようやく調子を取り戻した。特に、スガサワ(菅澤優衣香)がセンターフォワードとして投入された後に、だいぶよくなったと感じた。これだけがイングランド戦の真実だった。

 決勝トーナメント1回戦でオランダと激突したときも、ゲームの入り方、前半が、あまりにもうまくいっていなかった。なでしこたちはピッチの両サイドで、オランダ代表のインテンシティーに窒息させられてしまったのだ。
 猛攻にさらされた守備はどうかと言えば、所属クラブのリヨンで担当もしていないポジションに置かれたクマガイが、できる限りの努力をしていた。が、やはりスピード不足は否めず。ミッドフィールドに密度が欠如していたのを見る度に、私はクマガイをワンライン上げて起用した方が有益だったのでは、と首を傾げてしまった。

 何にせよ、日本は決勝トーナメント1回戦で敗退するには惜しすぎるチームだった。日本ほど多彩なバリエーションで攻撃構図を描けるチームは、数少ないからである。なでしこたちのプレーは、「現代版PK判定」の犠牲にならねばならないような低レベルではなく、もっといい結果に値していた。

 あれほどムーブメントをつくり、複数が示し合わせた走りを見せ――特にハセガワ(長谷川唯)とイワブチ(岩渕真奈)がそうであるように――クリエイティブな能力を備えたチームも稀だ。ハーフタイム直前に1−1の同点を実現したシーンで、岩渕が長谷川に出したラストパスは、今ワールドカップで最も美しい「作品」だったと思う。

 それでも次にはやはり、こう言わねばならない。「ゴール前での非効率が日本女性たちの致命傷になってしまった」と。そのせいで日本はこの大会を、無駄にしてしまったのだ。

 ただ、ひとつ言いたいのは、もし本当にアサコ・タカクラのメンバーチョイスがよくなかったとするならば、日本は本大会のファイナリストとなったオランダを相手に、決勝トーナメント1回戦であれほどまでには試合を支配できなかったことだろう。スギタ(杉田妃和)の活発な動きもあったし、数えきれないほどのチャンスもつくり、後半で巻き返していたのだから。

 なでしこたちは、来年に予定されている東京開催のオリンピックでは、今大会と同じような失敗は、避けねばならない。それと、別のセンターバック・コンビを見つけることから始めるべきだと思う。もっとスピードがあり、もっと安定したコンビを作ることだ。

 そして、敵が疲れてくるのを待ってからやっと自己表現を始めるような中盤ではなく、試合の立ち上がりから、猛烈なインテンシティーに応じられるミッドフィールドを構築するべきだ。

文●ヴァンサン・デュリック(フランス『L'Equipe』紙記者)
翻訳●結城麻里