ひきこもりなどと相関関係のある孤独死

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 近年、社会問題となっている大人のひきこもり、8050問題と強い相関関係を持つのが、孤独死です。ニッセイ基礎研究所によると、わが国では、年間約3万人が孤独死しているといわれています。しかし、国がその実態把握を行っていないため、正確な数字は分かっていません。

 そのため、日本の孤独死の実態は、まだまだブラックボックスの中だといえます。孤独死に関するデータは、わずかしか出てきていないのが現状ですが、筆者は、前の居住者が部屋で亡くなるなどした「事故物件」の本を出したことをきっかけに興味を持ち、孤独死という現象を4年以上追い続けてきました。

 取材の中で、数えきれないほどの現場に立ち会ってきましたが、その現場は壮絶で、悲惨そのものです。

孤独死の半数以上が65歳未満

 孤独死というと、これまで高齢者の問題だと思われがちでしたが、それを覆す驚きのレポートが5月17日に発表されました。一般社団法人日本少額短期保険協会・孤独死対策委員会の「孤独死現状レポート」によると、孤独死の平均年齢は61歳で、高齢者に満たない年齢での孤独死はなんと、全体の5割を超えるということが分かったのです。

 このレポートでは、地域別でも孤独死の平均年齢を割り出していますが、九州地区の孤独死の平均年齢はなんと、55.8歳という若さです。そして、その8割は男性です。また、発見されるまでの平均日数は17日。亡くなってから2週間以上発見されないという、痛ましい現実が浮き彫りになってきます。

 筆者自身、取材で数々の孤独死現場に入っていますが、このレポートはまさに今、日本社会でこの瞬間にも起こっている孤独死の現状を表していると感じました。高齢者はたとえ孤独死したとしても、早めに見つかることが多いのです。介護保険によるサポートや民生委員、地域の見守りが手厚いという理由があります。

 しかし、若者を含めた現役世代の孤独死は死後何週間、下手したら何カ月も発見されないというケースがほとんどでした。

 孤独死する人は、8割が「セルフネグレクト」だといわれています。セルフネグレクトは、自己放任とも呼ばれ、ごみ屋敷やモノ屋敷、飼いきれないほど多くのペットを飼うなど、自らが自らを死に追い込むような行為で、これに陥ると、ゆっくりと、着実に死が近づいてきます。

 特に、今の梅雨の時期から、7〜8月は孤独死が最も多く発生する時期です。セルフネグレクトに陥って、エアコンをつけなかったり、つけられる環境になかったりして、熱中症で亡くなる人が圧倒的に多いのです。

国は総力挙げて実態把握を

 孤独死現場で取材をしていると、亡くなった人の生前の姿が見えてきます。孤立し、崩れ落ち、誰にも助けを求められなかった現役世代の苦悩があらわになるのです。取材で訪れた、ある55歳のエリートサラリーマンは一部上場企業に勤めていたものの、上司からパワハラを受け、傷つき、家に引きこもるようになりました。

 かつては、イケメンで学生時代は女子生徒からも人気だったこの男性は、50代なのに歯は全て抜け落ち、まるで老人のようだったと、最後に会ったご遺族の妹さんは答えてくれました。孤独死する人は、人生で何らかのきっかけでつまずいて、うまく社会と関われずに崩れ落ちてしまった人なのです。

 これは、誰にでも起こりえることです。

 孤独死は、近隣住民が異様な臭いを察知し、通報することで分かります。遺族は、高額な特殊清掃費用にたじろぎ、慌てふためきます。

 大手ハウスメーカーが手掛けた物件になると、その仕様での修繕が必要になり、700万円ほどの費用を遺族が請求された例もあります。500万〜600万円の高額な請求も珍しくありません。

 今後、AIの発達により、遺体そのものはすぐに発見される未来が来るでしょう。しかし、その前の「社会的孤立」「セルフネグレクト」の問題の解決にはなりません。

 長年取材を続けてきた立場からすると、孤独死について、国は総力を挙げてその実態を把握すべきだと考えます。また、私たち一人一人が、この問題に真剣に向き合う時が来ているのではないでしょうか。