韓国政府は経済報復措置への対抗策として、日本産の自動車やアパレル製品への輸入手続きを厳しく行うことを検討している。写真は2018年11月に都内で開催されたレクサスの新型UXの発表会(撮影:尾形文繁)

日本の経済制裁措置に対抗し、韓国政府が世界貿易機関(WTO)への提訴を検討している。それに加えて、韓国政府が繰り出す「報復カード」に関心が集まっている。

具体的には、日本産の自動車とアパレル製品の輸入手続きを厳しく行う、あるいはNAND型フラッシュメモリーなどの日本への輸出を減らすべきとの意見が出ている。

該当品目は日韓間貿易において相対的に韓国側の黒字が大きいことに加え、輸入が減っても韓国国内の産業への影響が大きくないものになりそうだ。また、日本政府に対して一定の痛みを与えることができる消費財でもある。日本が打ち出したように、非関税障壁を設けて輸出しようとするたびに韓国政府に申請、承認を得なければならない方法も検討されている。

「ユニクロ」も輸入規制強化の対象に

韓国貿易協会によれば、2018年の韓国の自動車分野での対日赤字は1兆2000億ウォン(約1200億円)規模だ。乗用車に限れば、2018年に395万ドル(約4.3億円)を輸出した一方、日本は韓国で11億9130万ドル(約1280億円)規模の自動車を販売した。2018年1〜11月に韓国で販売された日本車は5万3000台だが、日本で販売された韓国車は300台程度にすぎない。

韓国に進出した代表的な日本のファッションブランド「ユニクロ」なども、輸入規制強化の対象となりうる。ユニクロを運営するファーストリテイリングコリアは2018年度(2017年9月〜2018年8月)に、売上高1兆3732億ウォン(約1350億円)、営業利益で2344億ウォン(約230億円)の営業利益をあげた。2015年以降、4年連続で売上高1兆ウォンを達成している。

韓国の産業通商資源省のある幹部は「WTOに提訴することは世界の世論に訴えるという側面が強い。今年初頭から日本は韓国に対して経済的な報復を行うという話が出ていたので、韓国政府も対抗策を用意していた」という。実際に、韓国側には対抗カードがあるという話だ。

通関の際に、例えば自動車では排出ガスと騒音、ファッション製品は知的財産権違反などを理由に挙げて、書類審査などを厳しくすることはできる。しかし、このような行為もまた、WTOへ提訴するに十分な口実を日本に与えることになる。そのため、韓国政府が報復措置を決めても、公式に措置の実施を認めることはしない方針だ。

「報復が報復が呼ぶ」ことへの懸念の声も

サムスン電子とSKハイニックスなどの韓国企業が世界シェア6割を占めるメモリー・半導体分野もまた、日本が相対的に弱い分野だとの指摘が出ている。ソニーやシャープなどの日本企業は、テレビを生産する際にサムスンディスプレーやLGディスプレーの有機発光ダイオード(OLED)パネルを輸入して最終完成品を作っているのがその一例だ。

ただ、「報復がさらなる報復を呼ぶ」ことを心配する声もある。韓国・産業研究院システム産業研究室のキム・ギョンウ室長は「韓国の自動車市場における日本車のシェアは7%を下回る程度。さらに、全般的な輸入規制を強化するとなれば、日本への輸出に依存する韓国の中小企業には死活問題になる」と指摘する。半導体もまた、日本は韓国ではなく、台湾を代替輸入先として活用できるためだ。

日本の挑発にいちいち対応していたら、後で緊張した関係を落ち着かせようとしても手がつけられないのではとの意見がある。財界関係者は「日本が政治問題を経済・通商問題として対応してきても、韓国が同じやり方で対応する必要はない」と述べた。