娘の小学校入学から2ヵ月あまりが経過し、大きな生活の変化や刺激を日々目の当たりにしている我が家。

保育園時代との違いに、親としても戸惑うことが多いが、学校や学童、習い事、その他たくさんの居場所ができればいいな、と考えながら読んだ一冊を、同じような境遇の親御さんたちにぜひご紹介したい。


タイトルの通り、子どもの「自己肯定感」がテーマだ。
著者は放課後の学校に地域の人々を“市民先生”として招き、さまざまな「放課後プログラム」を開催するNPO法人、放課後NPOアフタースクール・代表理事の平岩国泰(ひらいわ くにやす)さん。

子どもの「自己肯定感」はどうやって育まれていくのか、そのために親ができることは何なのか。「アフタースクール」を通じて15年間で累計5万人以上の子どもたちと関わってきた平岩氏にインタビューを行った。

■地域との繋がりが薄くなり、色んなモデルを見る機会が減ったことで、子どもたちが新しいことにトライしづらいのかも


―― 「アフタースクール」の活動を行う中で、子どもたちの自己肯定感が低いのではないかと感じたことから本著の執筆に至ったとのことでしたが、その経緯を少し詳しく教えていただけますか?


平岩国泰さん(以下、敬称略):僕たちは首都圏を中心に、放課後の小学校施設を利用して、「アフタースクール」を運営しています。
「アフタースクール」では地域の人々を“市民先生”として招いて、子どもたちに勉強や遊びやさまざまなアクティビティを教えてもらい、地域社会とともに子育てすることを目的としています。
その中で、新しいプログラムをやろうとしたときに、「やったことがないからやりたくない」とか「できないからやりたくない」という子どもからの声を耳にすることがたびたびありました。

チャレンジしたくないとか、自分がやりたいことが分からないお子さんが多く、その背景には「自己肯定感の低さ」があるのではないかと思ったんですね。自己肯定感とは、「自分はここにいていい」という感覚のことで、自己肯定感を持っている子は、放っておいても新しいことにトライするし、失敗しても、くじけずに、繰り返しチャレンジする傾向がある、と長年の活動の中で感じてきたことです。

実際、子どもの数が減ってきているので、昔のように上の兄弟のやっていることをとりあえず真似してみるとか、地域全体で遊ぶ時間は昔と比べて確実に減っています。僕たちのアフタースクールが地域での見守り、という役割も担ってはいますが、地域の人が学校帰りの児童に声をかけたら不審者扱いされて通報されてしまったなんて話もあるので、学校側も地域も警戒しているし、萎縮してしまう傾向にはあるんですよ。

結果、子どもたちはいろんなモデルを見る機会が少なくなって、トライすることの難しさが増しているのも事実なんですよね。

とはいっても、自転車に乗れるようになったら、「何であのときは乗れなかったんだろう」って乗れなかった時のことはもう思い出せなくなるじゃないですか。成功体験の前に失敗体験も非常に重要なプロセスで、「できなかったとこからできる」ということがとても大切ですから。

■安心して笑っていられる場所があれば、それだけで子どもの自己肯定感は上がっていく


―― 子どもが減ったことによって、親も「この子をちゃんと育てなくてはいけない」という気持ちが強くなって、必要以上に手をかけたり、先回りしてしまうところもあるんでしょうか。

平岩:親自身がこれでいいのか、あれでいいのかって子どもに対して心配になりすぎている印象はありますね。
ただ、子育てには本質的には答えがないし、これでよかったのかなんてわからないまま大きくなって……ということを昔からみんなやってきたわけですよ。

今の親御さんはすごく責任感が強いんだけど、子どもはあくまでも自分では別の人間で、たとえば彼らが就職する20年とか先の話なんて、きっと自分の感性では分からない世界に入ってくると思うんです。だから、子どもが自分自身で幸せや夢をつかみ取れるような応援するくらいでよくて、親がその子の人生の責任を負うなんて考える必要はないんですね。

だから子どもにこうなってほしい、ああなってほしいと子どもについての夢を語るよりも、親自身が夢とか、そんな壮大なものじゃなくても好きなことを追いかけている姿を子どもに見せるほうがいいんじゃないかと思います。もちろん、最低限のお世話や行動は必要だけど、精神そのものを子育てに注ぎこむことはないんじゃないでしょうか。

―― 親が自分を犠牲にして、子どもにすべてを捧げることで、子どもも辛い想いをしたっていうのは、いわゆる「毒親」の話でもよくありますよね。

平岩:そのように育った子どもは自己肯定感が低くなってしまいますよね。
親である前に、1人の人間だし、40代くらいは働くにも、何かやりたいことをやるにもいい年齢じゃないですか。うちのアフタースクールに来ている子どもたちに一度、「お父さんやお母さんは何しているときが楽しそう?」って訊いてみたら、研究職のお母さんを持つ子が「家で顕微鏡を覗いているとき」って話していたんですね。そして、その子自身もお母さんのその様子を見ているのも楽しいのだと。

子どもに自分の仕事の話をするのってすごく良いと思うんです、子どもにしたら学べることもたくさんあるし、大人の仲間入りをしたような気持ちにもなれますから。

もちろん、「わかっているけどできない」って気持ちに陥ってしまうこともあるでしょうから、著書では自己肯定感を育成するためのステップとして、具体例を示しています。
子どもの特徴や長所を見つけるための「リフレーミング」という手法や、子どものポートフォリオを作って、好きなことをやりたいことを見つける手助けにするとか、いくつか紹介している中でどれかひとつくらい合いそうなものがあればいいなとは思いますが、すべてやらなくてはいけないという話ではありません。

親が楽しそうに朗らかにしていれば、子どもだって嬉しいだろうし、自分も安心して笑っていられる場所があれば、それだけで自己肯定感は上がっていくと思うんです。ベースはそれくらいのゆるやかな感じで捉えてもらえたらと思います。

■親も先生も失敗する。その姿を見せることで子どもとの関係性も良くなるはず


―― 周りと比べて、「私は子どもに〇〇できてない」って罪悪感を抱いたり、焦っている親御さんに届くといいですね。

平岩:先日、自分の子どもとも話していたんですけど、親だって同様に「できない」側にいるんですよね。
子どもが10回に5回くらいできないことがあるとしたら、大人だって10回に1回、忘れ物をするとか、時間を守れないとかありますよね。10回に1回どころじゃない人もいるでしょう。

そこを「僕も失敗しちゃうけど、気をつけようね」って同じ側から同じ方向を見るのと、「何でできないんだ!」って対面とか上からしかりつけちゃうのでは、後者はもったいないと思うんですよ。親の失敗談から子どもが学ぶこともたくさんありますからね。

―― 親が完璧で絶対な存在だと従うしかなくなっちゃいますもんね。

平岩:学校の先生も同様に、求められるものが多すぎて鎧を着せられているところがあるかもしれません。
ある学校で、先生が弱みを見せるとか、じつはいじめられた経験があるとか告白するセッションがあるワークショップがあったのですが、「先生もそんな経験をしたんだ」っていうところから、「いじめはよくない」ってところまで生徒たちにはものすごい共感の広がりを見せていました。

だから親も先生も生き物だし、失敗するし、ってことを見せられたほうが、子どもとの関係もよくなるんじゃないかなって思います。

僕は常々、「未来が過去を作る」と思っているんですね。未来が良くなれば、「あの時頑張ったから今の自分がいるんだな」みたいに過去がよく思えるじゃないですか。今、この瞬間の記憶が良くなるか、悪くなるかは未来が決めるので、子どもが何歳までに〇〇しないと致命的、みたいな考え方はできればしたくないなと思っているんです。

小さいうちに読み聞かせしないとその子の言語能力が終わるなんてこともないし、英語を早くから始めないといけないということもないと思います。だって大人になってから英語が喋れるようになった人もごまんといますから。

そう思うと、40〜50代の大人、自分も含めてですけど、人生100年と考えたらこれから伸びていくところや成長する部分があって、大人だからできることもあるはずです。だから、子どもが何歳までにどうなるために「今、〇〇しなくてはいけない」ではなくて、常に「今から」って思えるといいですよね。

▼放課後NPOアフタースクール


真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。