布田 尚大 / 株式会社drapology

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 株式会社drapology(ドレイポロジー)のサービスの1つは、"act as COO"。具体的には、クリエイター・企業の美意識の1番の 翻訳者/実践者として、徹底して事業にコミットすることです。COOというキーワードを掲げる自分自身は、今まで

エシカルファッションブランドINHEELS 株式会社リバースプロジェクトストア 生理用品のプロジェクトilluminate

と、3つの事業でCOOとして活動してきています。

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 また、自社で行う赤澤えるとのファッションブランドも会社のCEOは自分ですが、ブランドとしては赤澤のクリエイションを事業に落とし込む役割を担っているので、COOの立ち位置です。


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 これらの仕事経験の中で自分は「COOはこれからもっと必要になるし、なりたいと思っている人もぼちぼちいるけど、なり方や求められるスキルセット、キャリアプランがイマイチ明示化されていないな・・・」と感じています。そこで、自分の経験を元に、2回に分けてCOOにまつわるあれこれを書いてみたいと思います。


どんな会社のCOOの話?

 そもそもCOOとは何をする人か?COOはChief Operating Officerの略で、日本語にすると「最高業務執行役員」です。つまり、代表のビジョン・プランをあらゆる方法を使って現実にしていく責任者です。なのですが、どんな企業のCOOかによって、求められる素養がかなり異なってくると感じています。自分が取り組んでいるのは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」をフォロソフィーに掲げるマザーハウスの代表取締役の山崎さんがこちらでやっているような、「思いをカタチにする企業」のCOOです。

 会社員より儲かるからとか「好きを仕事に」的な起業や、成長市場でPMF(プロダクトマーケットフィット)させて資金調達からの急速スケールでM&AかIPOでキャピタルゲインっていうエコノミードリブンなスタートアップのCOOはこのお話の対象ではありません。おいしいマーケットでもなく、自分の心地よい生活に必ずしも直結しないかもしれないけど、それでも実現したい世界像があるから楽しく頑張って仕事してますって人がやっている企業にフォーカスしています。


なぜ「思いをカタチにする企業」のCOOを切り取って話すのか?

 現代はSNSの進展とWebサービスの普及による起業コストの低減、それに起因する働き方の多様化で、思いを持ったクリエイターが急速に影響力を持つようになっています。そういうクリエイターの世界観や実行力、モノを売る力は本当に素晴らしい。仕事をしていてすごく楽しいです。刺激だらけです。イノベーションを起こす方法論やクリエイティビティを発揮するための思考法などは世にあまたありますが、本物のクリエイターを見てると、現在のナレッジではまだ再現性に課題があると思います。(自分自身がそんな研究をしているからこその実感です。)

 ただ、SNSでの発信や様々な企業・団体とのちょっとしたコラボレーションやイベント登壇を超え、自分の思想を体現し、かつサステナブルに成長を見込める事業を行おうとすると、どうしてもそれを支えるビジネスパートナーが必要になります。しかし、エコノミードリブンなスタートアップであれば資金調達したお金でフルコミットのCOOや従業員を雇いPMFに向けたPDCAを高速で回しまくるアクションができますが、「思いをカタチにする企業」は必ずしも成長市場に属していないので、そういったアクションが取りづらいです。現にINHEELS、REBIRTH PROJECT、illuminateは「いわゆる」スタートアップ的な組織体制ではありません。

 また、スタートアップは一応エコシステムができているためCOOとなる人材の定型的なルートがありますが、(外コン・外銀から起業とか、そこそこの規模のベンチャー退職してジョインとか)「思いをカタチにする企業」はそれと比べると明確なルートがありません。なので、現在の自分のワークスタイルである、それぞれのミッションに強烈に共振しつつ、自分の経済的観点も踏まえ複業もありでバリューを出すタイプのCOOについて、書いてみようと思っています。

COOの仕事とキャリア

上に書いたように代表のビジョン・プランをあらゆる方法を使って現実にしていく責任者なので、定型的な業務はあまりありません。一例をあげると、

クライアントへの企画提案のプラニングと資料作成 在庫管理や物流工程の外注のための企業選定と仕様策定と見積もり調整 アイテム制作に必要な人と素材探し 制作アイテムや販促施策に関してのクリエイターとの壁打ち 卸先との受発注のやりとり 新規取引先の開拓と調整 融資を受けるための金融機関探し

とかです。バックオフィスからフロントオフィスまで幅広いです。比較的小さいチームでやっているので、今後人が増えてくると組織に関するトピックもがっつり増えそうな感じがします。

 次に、このような業務経験を踏まえた上で、今後どんなキャリアがありそうなのか、書いてみようと思います。自分は現在全ての仕事をやりがいと楽しさをもってやらせてもらっているし、それぞれの企業間で協働できる可能性も感じるので当分この形態を継続しようと思っていますが、COOを目指す人のキャリアプラン構築の一助になればと思います。

◆ 子会社の代表 「思いをカタチにする企業」の特色として、顕在化した/しやすいニーズを対象とせず、なんなら価値観そのものを変えていこうとするので、プロダクトやサービス開発から教育や啓発といった普及活動など、バリューチェーンが長くなる傾向があります。そのため、そのチェーンの中の一部を切り出して会社化し、その代表を務める、というキャリアが割とある気がします。グループ会社全体の方向性はもちろんクリエイターがメインに管掌します。

◆ 1社にフルコミット 人間関係や待遇といった一般的な退職理由以外に、ある企業で他社との競争が激化した場合や、組織が拡大して管掌領域が大きく広がるなど、事業環境の変化によってはありえそうです。

◆ 新規事業立ち上げや各種プランニング 現在も一部やっていたります。いわゆる「クライアントワーク」的な形です。COOとしてのコミットが名実ともにワークしていることを実感しています。


次回予告

以上、「思いをカタチにする企業」のCOOについて書いてきました。かなり客観的に書いてきましたが、何より伝えたいのは、

この仕事の仕方は本当にやりがいがあって死ぬほど楽しい!

です。かなり高い自由度を持ちながら、中長期で企業価値の向上や事業の中長期のソーシャルインパクトにコミットできる機会をもらえている自分は幸せだなと思いますし、こういう働き方をする人が増えたらいいな、と心から思っています。なので、後編ではこういう仕事をするにあたって自分が必要だと思うスキルセットと、COOになりそう/キャリアとして希望している人を見ていて思うところを書いてみようと思います。

このテキストがみなさまにとって何か役立つところがあれば幸いです。


【筆者】

株式会社drapology 代表取締役 布田尚大(ふだなおひろ)

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強い美意識を持ったクリエイター・企業のCOO・事業運営のあり方を追求。株式会社リバースプロジェクトストア COO/illuminateプロジェクトCOO。渋谷ファッション&アート専門学校 非常勤講師/日本マーケティング学会会員。2008年一橋大学 社会学部/2010年 同大学院 社会学研究科修士課程 修了。WSD28期ワークショップデザイナー。1983年東京生まれ。元エシカルファッションブランドINHEELS COO。

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