堀江貴文氏

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「税金泥棒め」――このフレーズが入った実業家の堀江貴文氏のツイートが波紋を呼んでいる。ツイートは6月18日のもので、金融庁の報告書問題を受けてデモをする人たちについて、「ほんとそんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め」と評したことが、一部から大きな反発を買ったのである。

 堀江氏は23日にはテレビ番組「サンデージャポン」に出演し、「税金泥棒」というフレーズは「クソ野郎」と同じようなニュアンスの捨て台詞に過ぎないと解説。ツイートの根本には、何でも倒閣に結びつけるデモ参加者たちへの強い違和感があることも語った。

 さらに、同日、こうもツイートしている。

「だいたい俺を叩いてどーすんだって思うけどね。年金行政に関わってるわけじゃないし政治的な権力持ってるわけでもない。年金システムの改善がしたいのなら俺に絡まず政治家に直接話しにいくといいよ。デモなんかするよりよっぽど効率的。ツイッターで気軽に絡める俺に絡んで満足してんなボケ」

堀江貴文氏

 この「ボケ」も当然、捨て台詞のバリエーションなのだが、ここに噛みついたのが、政治学者の山口二郎氏である。

「他人を泥棒呼ばわりして、ただで済むと思うなよ。このボケ。」(6月24日)

 山口氏は北海道大学名誉教授にして法政大学法学部教授でもある。そもそもストレートな物言いが人気の要因でもある堀江氏とは様々な意味で立場が異なる。

 そんなこともあって、今度はこのツイート自体もまた炎上気味となり、「恐喝じゃないか」「教職者にあるまじき物言い」等々、大量の批判を寄せられる事態になっているのである。

「反日勢力の陰謀」、「安倍のせいだ」、罵詈雑言の嵐、対話不能……。「右」でも「左」でもない「無知」なのだ。 『ネトウヨとパヨク』物江潤[著]新潮社

 もっとも、山口氏の「前科」を知る人にとっては、こうした物言いもあまり驚くようなものではないのかもしれない。日頃から政治家への批判の時はかなりエキセントリックな表現を用いることが多く、「代表作」とも言えるのが、安保法制廃止を求める際に叫んだ「安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」というフレーズなのだ。この時も、いやしくも大学教授がこういう表現を公然としていいものか、という議論が起こった。

 しかしながら、いくら激しい物言いをしたところで、年金問題は何も解決に進まない。また、政治家でもない人にツイッターで絡んだところで何も進まないのは、堀江氏の指摘する通りだろう。

 本来ならば冷静な議論を主導すべき学者までもが、なぜ「ボケ」といった路線に走ってしまうのか。

『ネトウヨとパヨク』の著者で、SNSを通じた議論を数多く経験してきた物江潤氏はこう語る。

「本来、議論をまともに進めたいのであれば、守るべきルールというのがあります。事実を提示し、理由を述べたうえで、主張をする。ところがツイッターの場合は、文字数が短いこともあって、こうしたルールをきちんと守っていると、かえって支持を得にくい。論理的な説明を好む人は、ツイッターと相性が悪いのです。というのも、緻密な論理を備えた主張はどうしても長文になりがちだからです。

 むしろツイッターで支持されやすいのは乱暴な断言やレッテル貼りです。堀江さんの言葉は乱暴だったでしょうが、その後真意をある程度丁寧に説明なさったのですから、山口さんは学者としてその説明に対して論理的に反論すればよかったのではないでしょうか。相手が乱暴だから、こっちも、では対話が成立しません。

 私は著書でネトウヨやパヨクと呼ばれる人たちの共通点は、対話不能であることだ、という仮説を述べました。残念ながら、そうした傾向を持つ人は増えている気がします」

 山口氏は、「民主政治が直面するさまざまな課題」を大学で教えているという。課題の中には、対話の困難さも含まれているのだろうか。

 その後も山口氏は堀江氏に対して「ロケットを打ち上げたければ、日本国外の広大な原野でやれ。税金泥棒発言を撤回、謝罪しないまま北海道で愛想を振りまくんじゃないぞ、このボケ。」(6月25日)と挑発的なツイートをしているが……。

デイリー新潮編集部

2019年7月4日 掲載