「結果に関して言えば、不公平なスコアだったと言える。日本は3度も4度も決定機を作り出している。勝てたとは言わないが、僅差、もしくは引き分けでもおかしくない試合内容だった」

 スペイン人指導者ミケル・エチャリ(72歳)は、コパ・アメリカ初戦でチリに0−4で大敗した日本の戦いについて、そう語っている。

 エチャリは昨年まで15年間にわたってバスク代表(FIFA非公認)監督を務め、南米のウルグアイ、ペルー、ボリビア、ベネズエラとも対戦し、ほとんど負けていない。その攻略を知り尽くす男だ。


チリ戦で代表初先発を果たした久保建英(左)と中島翔哉

「日本は試合が始まってから、左サイドの中島翔哉(アル・ドゥハイル)がチリのアンカーであるエリック・プルガルを消そうとしていた。そこが戦術的に心臓部だったからで、意図は悪くない。しかし、結果的に日本は左サイドを空けてしまった。前田大然(松本山雅)、柴崎岳(ヘタフェ)、中山雄太(ズヴォレ)の3人がポジションをずらし、対応すべきだっただろう」

 エチャリは独特の視点で、チリ戦を振り返っている。

「これは私の推測でしかない。しかし森保一監督は、3−4−2−1での戦い方も頭に入れて試合をスタートさせたのではないか。チリが強力な3トップを擁する4−3−3(4−1−2−3)で挑んできたことで、原輝綺(サガン鳥栖)を右サイドバックに下げ、4−4−2に切り替えた可能性もある。もしそうなら、賢明な判断だった。

 今回のコパ・アメリカでは、日本には代表選手を招集する拘束力がなかったという話であり、布陣には若い選手が目立っている。チリは老獪な戦いをする選手ばかり。その点、日本の若さが目立つことになった。

 ただ、日本の立ち上がりは悪くない。久保建英(レアル・マドリード)はスキルの高さを見せているし、上田綺世(法政大)も質の高い動きを示し、柴崎は中盤の指揮官として君臨していた。柴崎から上田のホットラインは、ひとつの脅威を与えている。

 しかし、プレッシングはアンカーのプルガルがいつも浮いた状態になって、効率的ではなかった。そこで、中島が積極的にフタをするために寄せる。その判断自体は誤りではなかったが、結果的に左サイドを空けてしまった。

 前半も30分を過ぎると、南米王者チリがペースを握る。プルガルが配球役としてリズムをつかむと、空いた左サイドを右サイドバックのマウリシオ・イスラが猛襲。右CK付近まで少なくとも5回は侵入した。右からの強烈な攻めによって、左サイドではアレクシス・サンチェスが、原の裏や横のスペースを容易に取り始める。そこに左サイドバックのジャン・ボーセジュールも絡むことで、攻めを厚くする。インサイドハーフのチャルレス・アランギスもゴール前に出没。完全に日本を押し込んだ。

 そして前半41分、チリはたび重なる攻撃で右CKを得ている。アランギスが蹴ったボールに、プルガルがヘディングで合わせた。中山と競り合ったシーンは、イージーな空中戦だった」

 エチャリはそう言って、チリの先制点までの攻防を丁寧に振り返っている。畳み込まれた格好だったと言えるだろう。

「それでも日本は戦意を失っていない。先制点を奪われたあと、敵陣でボールを奪うと、柴崎がすかさず縦パスを入れ、それを受けた上田はGKをかわして決定機を作っている。しかし、シュートは枠を捉えなかった。追いついていれば、戦術的に違う局面を作れたはずだ。

 リードされた後半も、日本はチリの老練な攻撃に後手に回る。2点目は左サイドを、コンビネーションを使って破られ、中央に折り返したボールを、バルガスに直接叩かれた。冨安健洋(シント・トロイデン)にかすって、わずかに方向が変わってしまった。

 0−2と突き放されかけたが、その後は日本がペースを握った。チリが手を緩めたのもあっただろう。つけ込むように何度も好機を作り出した。

 右サイドからの柴崎のパスに、上田がファーから突っ込むも、これをしっかり当てられない。ゴール前でボールを受けた久保がするするとディファンスの間を抜け出すが、GKと1対1での左足シュートは枠に飛ばなかった。さらに、久保とのコンビネーションを使って左から侵入した安部裕葵(鹿島アントラーズ)は、シュートを選択せず、クロスを折り返すが、ファーポストの上田はまたも合わせられない。

 耐えしのいだチリは後半37分、アランギスが右サイドの深い位置でボールを受け、左足でクロスを送り、これをアレクシス・サンチェスが決めて、簡単に0−3とした。その1分後には、日本がハイボールの対応に戸惑うなか、バルガスが裏に抜け出し、前に出たGK大迫敬介(サンフレッチェ広島)の鼻先を破って0−4とし、勝利を決定づけている。チリの攻撃は抜け目がなく、効率的だった」

 エチャリは、日本が多くの好機を作ったことを高く評価した。しかし、それを決められず、失点を重ねてしまい、大差をつけられたのも動かざる事実だった。スペインの目利きは、冷静にコパ・アメリカの初戦をこう総括した。

「日本の立ち上がりは悪くなかったし、後半もゲームを支配した時間があった。しかし、チリの決定力、老練さに屈した。これだけのチャンスを決められないと苦しくなる。ただ、悲観することはない。日本はシステムに戦いを適応させながら、貴重な経験を積んでいる。0−4というスコアにはなったが、細かい点を修正、改善することで、南米の強豪相手でも対等に戦えるはずだ」
(つづく)