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表と裏

日本初開催となったG20財務大臣・中央銀行総裁会議。6月8日の討議で、麻生太郎財務相は10月1日に消費税率を10%へと引き上げる方針を説明した。

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福岡で開かれた本会議では、世界経済の先行きについて「様々な下方リスクを抱えながらも年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」との認識を共有した。海外の経済首脳たちは、日本の消費増税をどのように評価しているのか。

一般的にいえば、国際会議の場において、会期中に議長国を批判することはまずない。したがって表向きでは日本政府の消費増税路線について異を唱える国は存在しない。そもそも国家にとっての税(に関する取り決め)は、各国が持つ主権そのものであり、他国が四の五の言うことはまずない。

では、世界のエコノミストたちはどのように考えているのだろうか。

2016年、官邸で世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」があった。それに出席したノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、「世界経済は難局にあり、'16年はより弱くなるだろう」との見解を示した。そのうえで、「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」と述べ、'17年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。

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この意見を'19年の現状に照らし合わせると、'20年の世界経済は米中貿易戦争の影響が予想され、'16年より深刻な状況にあるとみてよい。今スティグリッツ教授に意見を求めても、同じ答えが返ってくるだろう。

財務省の大きな勘違い

'17年に来日したクリストファー・シムズ米プリンストン大教授も、「消費増税は財政再建のために必要であっても、2%の物価目標達成後に実施するのが望ましい」と主張した。ちなみにポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授も、今年に入り消費増税は見送るべきだと発言している。これら経済学の権威の回答が、消費増税に対する海外の本音と見るべきだ。

このところグローバル経済は軟調だ。次の消費増税のタイミングと、経済の下り坂に入る瞬間が重なったらどうなるか。前回消費増税時に起きた景気失速が繰り返されるかもしれない。

今後の世界経済の減速は、IMF(国際通貨基金)も警告し、中国などは減税措置の経済対策を打ち出そうとしている。その時に消費増税とは、各国の経済首脳も耳を疑ったに違いない。ところが財務省は、開催国には批判が及ばないことを見越して、財務大臣に消費増税を言わせた。これで世界各国の「お墨付き」を受けたとするわけだ。

会議で発した「年後半から来年にかけ、堅調さを回復する」という言葉は、あまりにも希望的観測すぎる。経済政策は最悪の場合を常に想定するのがセオリーだが、政府は大きな勘違いをしている。

先のクルーグマン教授も、世界経済の見通しはかなり不透明で、その要因の一つが米中貿易戦争であると指摘している。アメリカではトランプ大統領が関税率を設定する完全な自由裁量を持ち、その先行き不安がリーマン・ショック級の事態を引き起こす可能性を控えている。財務省の希望的観測を信じていたら、日本経済は深刻なダメージを受けるだろう。

『週刊現代』2019年6月22・29日号より