ぐっちーさんは「老後2000万円問題ですぐにお金の運用ばかり考えてはいけない」と言う(写真:しげばば/PIXTA)

えー、世間は「老後に2000万円の貯金が必要だ!!」という話でかなり揺れてますね。さらには「還暦の貯蓄額25%が100万円未満 2000万円に遠く届かず」(共同通信社)などという報道もあり、「おいおい、ほんとにどうするんだ」、という気にもさせられます。

「老後2000万円問題」でやってはいけないこととは?


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

まあ、経緯はいろいろあるにせよ「老後に2000万円」などということを言い出す役所も「無責任」だとは思いますが、この問題の注意点は、明らかに他の所にあります。

「一番やってはいけないこと」を、絶対にしないことです。

「あー、おれは200万円しか貯金がないよ」、とか急に心配になって、ハイレバレッジだったり、元本返済すらも危ういトルコや南アフリカなどの国の「劣悪な債券」などを取りに行くことは、絶対に避ける。要は「鴨葱」(カモネギ)にならないように。これが最大の注意点です。

今回は、金融庁が間接的にお墨付きを与えちゃったわけです。「足りませんよ」と。なので、ワタクシに言わせれば、極端すぎると叱られるかもしれませんが、一斉に金融機関に号令を発して「個人の運用に力を入れろ!! 手数料をむしり取れ!!」といったも同然で、個人の運用の奪い合いにお墨付きを与えちゃったも同然なわけです。

「ほら、金融庁も足りないって言ってますよね。え?貯金200万円しかないんですか?ダメですね〜、では金融庁もお墨付きの、この個人向け外貨建て変額保険(実際にはお墨付きなどない)があります。200万円なら最大1000万円になりますので、早く始めましょう!!」などと言われて乗ったら、それこそ人生「ゲームオーバー」です。

200万円が1000万円になるなんてことは、レバレッジ5倍ですから、通常の金融商品ではありえません。200万円に対する5倍のレバレッジはダウンサイドに関してもほぼ同様ですから、つまり200万円が40万円になるリスクを覚悟して運用する・・・羽目になります。例えば安心して大手銀行に預けたつもりが40万円になっちゃったらそりゃ、びっくりでしょう(笑)

そもそも今のマイナス金利時代、100万円が150万円になることすら絵空事のようなもので、まずはこの「金融庁のお墨付き商品」のような勧誘から逃げることが一番のリスクヘッジです。 

しかし、残念ながら、というか予想通り、いくつかの報道を見るとカモネギたちはすでに喜んで行列をなし、狩られつつあるようです・・・・・・どうやら「味噌」まで背負っていた様子・・・・・・(涙)。

余談ですが、投資の記事によく出て来るNISA(少額投資非課税制度)というのは、われわれ専門家から見ても、お薦めできる商品ではありますね。NISAは非課税限度枠が大きく、ある意味「どう運用をしても負けない」(非課税だから)商品なので、むしろまだ申し込んでない場合、これは早めに入った方がいいかもしれない。

「家を売る」「仕事を続ける」・・・選択肢はいくらでもある

それから、もう一つ。金融庁の報告書では収入は21万円で支出は26万円(65歳以上の夫と60歳以上の妻の場合)だとかいうわけです。もちろん、みんなが赤字だと決めつけた書き方をしているわけではありませんが、ワタクシは今、日常の生活では正直そんなに使っていません(笑)。

例えば、家のあるなし、などにもかかわる問題ではありますが(ワタクシは持ち家なし、賃貸)、支払いの前提が「年齢が変わっても未来永劫変わらない」という前提は非常におかしいですよね。ワタクシの場合で言うと30代のころは月に60万円ほどは絶対に生活費がかかっていました。これは子供の教育費などの比率が、非常に大きいわけです。

しかし、ワタクシの生活費を計算すると夫婦2人(還暦手前)で19万円ほど。「年金の金額内」になってしまっています。いろいろなケースを拝見していると、住宅ローンの返済という項目が60歳になってものしかかっていたり(もちろんそういう人はいるでしょうが)、不思議な支払い項目がたくさんあります。今は住宅が余っていますから、さっさと売って小さな賃貸に切り替えればいいことです。

さらに、不思議なのは今まで元気に働いていた人が、なぜ突然仕事を止めるという前提に立つのか?

奥様がスーパーのレジ打ちで月12万円、ご主人が警備員の仕事で月16万円稼げばどうなりますか?年金と合わせて月50万円を超えますから、もう楽勝でしょう。この程度のバイト先なら、東京でも地方でも事欠かない。60歳を過ぎて例えば「マッククルーデビュー」とか、おしゃれじゃないですか??どうしてこの議論からは「バイトする」、という当たり前のことが「欠落する」のでしょうか。

もう一つ、私は50歳の時に岩手県紫波町1年間移住していました。「しろーと農業」で月6万円稼ぎ、リンゴ農家のバイトで15万円。生活費は18万円くらいでした。だいたい「車保有しなくちゃ」と思って「車買う」と言うと、あちこちの人から「うちの車乗れ!」というオファーが舞い込むほどでしたから、50歳の時にでさえ定職なしに貯金が出来ちゃうんです。

岩手県というところは冬の暖房光熱費が高く、かなりエネルギーコストを支払うことになりますが、年金の24万円があれば楽勝で暮らしていけます・・・・・・というような情報がなぜ、出てこないのか??「地方移住の落とし穴」、みたいな特集ばっかりしている大手運用会社、不動産会社がスポンサーをやっているような媒体を見ていて、騙されて「こりゃいかん!」と言っているだけなんです。税金を投入してまで地方移住を誘致しようとしているのに、なぜ「老後を地方で暮らす」、という選択肢が出てこないのか、非常に不思議です。

東南アジアの国などは、すでに日本の非常に高い年金収入に目を付けていて、マレーシア、フィリピンなどが年金世代の招致に力を入れています。ここでもネガティブなことばかり語られますが、実際に体験してみた感覚から言うと「非常に良い」のです。

東南アジアもいろいろありますが、総じて10年前に比べれば政情も安定してきましたし、特に老人介護ということを考えるならこの2国はお薦めです(いつも思うのですが「フィリピンは危ない」とかいう人がメディアにたくさんいて、要するに調査不足で行って騙されてしまった人だけを取材して、そういう記事を書くわけですね。

その媒体のスポンサーが某大手投資信託会社だったりするから笑っちゃいます。しかし、実際体験はしていないでしょう?ワタクシなどは、「ホントはどうなんだ??」と、疑問があればすぐに行って体験してみる。そのうえで発言をします。なぜ、何も知らないのに記事を書くんでしょうか?信じられません)。

とにかく、これらの国には安くて若い人材がいくらでもいる。フィリピンなんて、介護の資格を持った若い人の報酬は月2万円ほどですよ!生活費については、場所にもよりますが、高くても月10万円と見ていればいいですね。日本の国力は、衰えたと言っても向こう20年くらいは間違いなく高いでしょうから、円を持っていれば「最強」です。

繰り返しますが、単に「2000万円足りないらしい!運用しないとやばいぞ!」という、この「鴨葱状態」が一番まずいのです。どうしてこういう他の選択肢がきちんと提示されないのか、それはそれで不思議ですよね。

前述のように、私は50歳の時に仕事で岩手県紫波町に行って、知り合いもたくさんできましたし、子供たちを一緒に育てるようなボランティアに参加することで、地元の住民ともコミュニケーションは十分に取れますし、住むのには全く問題がないわけですね。60歳の段階で「第2の人生をどこで送ろうか?」などと考えながら、40歳台から夫婦で旅行するのもすごく夢があるのではないでしょうか?

アメリカなどでは移住が非常にお気楽で、キャンピングカー1台で全米どこへでも移動していきます。そして気に入ったところに住むのです。こういう高齢移動ローラーみたいな連中は結構たくさんいて、それはそれで楽しそうです。先日、私の友人もニューヨークを引き払い夫婦2人で全米を駆け巡り、結局コロラド州に落ち着いています。もう、子供の教育問題がないので、その意味で縛られる必要がないのです。若い頃は子供のために「良い学校のあるところじゃないと住めない」、とかいろいろ制約がかかるわけですが、もうこの年になれば関係ありませんよね。

ただし、この場合の「お気楽」というのは、制度が充実しているからのお気楽ではないのです。アメリカだと、夫婦二人の健康保険だけで最低でも10万円は必要で、ちょっと病院に行くと翌年は保険料が20万円とかになりますから、病院においそれとはいけないんです。

こんな制度の下でもアメリカでは「お気楽」で楽しむわけで、これは「本人たちの気持ちの問題」、というのが非常に大きい。飜って日本では、官庁を含め、「〇〇がなきゃいけない」、ではなくて「これも要らない、あれもいらない、これだけあれば大丈夫」、という話にどうしてならないのか? あまりにも杓子定規な皆さんにも、問題があるように思います。

運用よりもまずは「お金を貯めること」から

このように老後(年金受け取り開始後)は実に選択肢が多いのに、一律で「2000万円必要ですよ」、と見えるようにやっちゃったのは、やはり金融庁のミスでしょう。まあ、金融機関は大喜びでしょうが「最後は自己責任で」、とか言われるこちらは、かないません。

そして最後に当たり前の話ですが・・・・・・金融商品を選ぶ前にまず、貯金をしましょう。本当は若いころからやれば楽ですが、貯金ができない原因があれば、それはさっさと取り除く。もう、後ろを向いている時間はありません。月5万円貯金すれば5年で300万円、10年で600万円ですから、このくらいまとまってくると運用をする価値が出てきます。それまで運用は必要ありません。騙されないように!! 致しましょう。このテーマについてはまた書きます!(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、競馬関連のお話をするコーナーです。あらかじめご了承ください)

ここからは恒例の競馬コーナーです。

えー、6月23日を持ちまして、春のG1シリーズが終わりました。G1だけに絞りますと、2勝10敗という惨憺たる成績・・・・・・こうやって人様のお目にかける予想が当たらず,密かに買っている1勝馬クラス(500万下)なんかで当てていても、ちっともいいことありませんわな。

しかも、勝ち馬(1着)を外す、という最悪の外し方!!

競馬マニアは、「競馬とはおよそ1着=強い馬、を当てるゲーム」だと思っています。ですから、1着が予想通りくれば2、3着はあまり興味がないし、大体うまく拾えているケースが多いので(いわゆるトリガミはある)満足なんであります。

ところがこの1着が外れる、というのだけは、とにかく自分を許しがたい!春のG1で10レースもまとめて1着を外すなんて、もう「マジで競馬やる資格はないな〜」と思いつつ、最後の宝塚記念に挑んだのですが、来たのはやはりタカラヅカ(牝馬)だった・・・・・・というワタクシにとってはあまりにツマラナイ結末で、これなら「日比谷に見に行って本物を見ていた方がよほど健全だぜ」、と悪態をつきながら今年の春のG1も終わりました。

夏は修行のため山下清モードへ、秋のG1で捲土重来

今、連載者やその関係者の間では、予想した本命馬が1着に来なかった場合のヘッジ手法についての研究が非常に盛んです。どうしちゃったんでしょうか??(笑)。「6番人気」の馬に執着してみたり、はたまた「人気馬を2着に固定して3連単を買う」、などといった手法について、山崎元さんやかんべえ(吉崎達彦)さんも、自分の戦法を披瀝しながら、ワイワイやっています。当然、ワタクシも一応勉強させてもらいますが、今までの発想を捨てるのは大変です。果たして、秋には成果が出るんでしょうか?? 

とりあえず、夏の間は地方へ修行に出かけ、秋のG1では大変身したぐっちーをお目にかけるべく、山下清モードに移ります。7月はアメリカに行っちゃうんでダメなんですが、それでも7月7日(メインレースは七夕賞)は福島競馬場に参戦です。甦るか?? とにかく修行をして秋に再びお目にかかりたいと思っておりますので、またその節はよろしくお願い申し上げます!この競馬コーナーについては「また逢う日まで」(笑)!!