開催国フランスのサッカーファンから高い評価を受けたオランダ戦でのなでしこジャパン。しかし、選手たちは悔しさを露わにした。(C) Getty Images

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 フランス・レンヌのスタジアムに「ジャポン、ジャポン」の大コールが起こった。ボールに向かってくる相手選手を軽快なパスで外し、まるで闘牛士のようにゴールを目指す。高倉麻子監督の率いるチームは、一戦ごとに完成度を上げて、このオランダ戦で過去最高のパフォーマンスを見せた。開催国の観客を熱狂させたチームは、なぜ、不運なPKで大会を去らなければならなかったのか。
 
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 まず誰もが抱く疑問は、いわゆるピーキングの問題。初戦から力を出し惜しみせず、チームを仕上げていれば、さらに完成度が上がったのではないかということだ。
 
 実は、高倉監督も初戦のアルゼンチン戦を軽んじる気はさらさらなかった。2019年の6月という期限に向けて、アメリカ、欧州遠征の5戦、そして直前の試合(スペイン戦)でチームを仕上げるつもりでいた。スケジュールに誤算が生じたのは、2月のアメリカ遠征だった。コンディション不良やインフルエンザなどで、試合に出られない選手が続出したのである。
 
「私自身も『ある程度、固めながら』とは考えていたのですけれども、そこでもケガ人が出た。ゴールキーパーも3人とも連れて行けず、センターラインがほとんどいない状況で、あの大会でさえも新戦力をテストするしかなくなったのは計算外でした」(高倉監督)
 
 高倉監督が、新戦力のテストと開き直って対応した結果、チームはふたつの大きな収穫を手にする。大型CBの南萌華が強豪相手にいいパフォーマンスを見せ、阪口夢穂の穴を埋めるゲームメーカー、杉田妃和がチームにすっとフィットしたのだ。このふたりは、結局、大会初戦のアルゼンチン戦でも、先発出場することになった。
 
 とは言え、新しいパーツをセットすれば、慣熟するまでは時間がかかる。国内合宿で特に守備面について、カウンター時の戻り方など約束事を固めたが、攻撃の部分はそれまで得点を重ねてきたこともあって、ある程度やれるという自信があったかも知れない。
 
 しかし、それは対等に勝利を目指したサッカーをするFIFAランキング上位国との対戦が続いていたから。初戦の相手・アルゼンチンは引き分けの延長線上に勝利を見出すようなチームだった。
 
「大会前は強豪とばかり試合をやって、ああいう自陣に引いて固めて来るようなチームとの対戦がなかった。崩し方で認識が違った」と長谷川唯。
 
 杉田と三浦成美のダブルボランチも、大会初戦でどこまでリスクを冒すべきか、計りかねていた。前半45分間のほとんどは、相手のブロックの外でボールを回す時間となり、後半、開き直って前に出たものの、ゴールには至らず、アルゼンチンに価値ある大会初の勝点をプレゼントしてしまった。
 メンバー発表の際には、しばらく戦線から離れている阪口と、直近のゲームを欠場した岩渕真奈の選出が話題になったが、その後もアクシデントは続いた。なでしこリーグ中断前の時期にきて、植木理子が怪我をする(国内合宿には合流したが後日、チームを離脱)。小林里歌子も、阪口と交代でエアロバイクをこぎ、海外組の宇津木瑠美も違和感を訴える。アルゼンチン戦直前には籾木結花が足をひねり、開幕戦にはトレーニングシューズを履いてピッチに姿を現わした。
 
 サッカーにケガはつきものと言っても、これだけ多くの選手が一気にトラブルを起こすとは、想像しがたい。阪口、岩渕のふたりについては、事前にリスクとメリットを天秤にかけて選んでいた指揮官も、スタッフを入れても紅白戦が組めなくなるほどの非常事態には頭を抱えた。
 
「前回大会が、あれだけケガもなく、同じメンバーで戦えたというのが奇跡的なことじゃないのかなという気がしています。選手は、ハードスケジュールの中で目いっぱいやっているわけで、ケガをした選手も、したくてやっているわけじゃない」(高倉監督)