現在、開催中の女子W杯でこちらの期待を下回るサッカーを見せているなでしこジャパン。思うことはあっても、積極的に何かを書きたくなる気持ちは湧かない。選手個人の出来不出来についてはとりわけだ。日本の女子サッカー選手の待遇に理由がある。満足な報酬を得ている選手はほとんどいない。評論や批評の対象として相応しくないのだ。
 
 五輪で期待の選手がメダルを逃したりすると、ワイドショーに出演するコメンテーターの中には「国民の税金でオリンピックに行ってるのだから」と、厳しいコメントを吐く人が毎度必ず現れるが、その理屈が通じる選手はごくわずか。マイナー競技の選手にそれを言うのは残酷というモノだ。平素から、その競技の観戦に駆けつけ、応援している人ならいざ知らず、そうではなく五輪の時しか関心を示さない人たちに、五輪を語る資格はないと思う。
 
 さらにいえば、東京五輪を観戦する資格もないと言いたくなる。
 
 数日前、五輪チケットの当選発表が行われるとSNS上には、その悲喜こもごもを報告し合う投稿が目立った。それを眺めながら違和感を覚えたことは、すべての応募者が横並びの状態にあるということだ。平素から観戦に出かけている人ほど、当選しやすい仕組みでないとおかしいのではないか。それこそ不公平と言うものではないか。競泳なら競泳、陸上なら陸上の大会にいつもチケット代を払って観戦している人、すなわちその競技に愛がある人に、一定の優先権が与えられるべきでだと思う。
 
 イングランドのサッカー協会は、代表戦の観戦をポイント化し、W杯やユーロ等、ビッグマッチの観戦チケットを、その順番に従って優先的に販売している。東京五輪の開催が決定した瞬間から、各競技がこのように観戦歴をポイント化するシステムを構築していれば、スタンドはいまから盛況だったに違いない。
 
 五輪のチケットはプレミアでも、その予選を兼ねた日本選手権のスタンドはガラガラ。これでは、五輪好きとスポーツ好きとが合致しているように見えない。

 ナンバーワン人気は競泳だという。日本人選手はそれなりに強く、会場もインドアで真夏の観戦にはうってつけだ。しかし、たとえば競泳の日本選手権のスタンドは埋まっていない。価格が一番高いのは、陸上の男子100mが行われる日のチケットだと聞くが、その日本選手権の観戦者も毎度10000人程度しかいない。スポーツ好きなのか。五輪というお祭り好きなのか。
 
 次回の女子W杯、2023年大会の開催に日本は名乗りを挙げている。もし招致に成功しても、大会ははたして盛り上がるだろうか。
 
 なでしこリーグの1試合あたりの観衆は、2018年の実績によれば934人だ。潜在的なファンは決して多くない。とはいえ、お祭り好きだ。W杯本大会のスタンドはほぼ満員になるだろう。日本戦に関しては。
 
 問題は日本戦以外だ。比較対象を今回の開催国フランスに求めると俄然、心配になる。

 日本対アルゼンチン戦=25055人、日本対スコットランド戦=13210人、日本対イングランド戦=14319人。

 これは日本がグループリーグを戦った3試合の観衆だが、日本で開催されたら、外国同士のグループリーグの試合に、これほどの観衆は集まるだろうか。この数字は、スポーツを観戦する文化がフランスにはしっかり根付いていることの証明に他ならない。

 なでしこジャパンが決勝でアメリカをPK戦の末に下し優勝したのは2011年のドイツ大会になるが、この時、決勝が行われたフランクフルトのスタジアムは超満員に膨れあがった。開催国ドイツは、アメリカとともに優勝候補に推されながら、準々決勝で日本に敗退。にもかかわらず、ドイツ人の観衆は決勝戦のスタンドを満員に埋めた。舞台を万端に整えた。無理なく普通にという感じで。

 開催国としてのあるべき理想像を見た気がしたが、今回のフランスも負けていない。さすがドイツ、さすがフランスだ。日本にその真似ができるだろうか。五輪の女子決勝は、五輪なので、日本の姿がそこに無くても満員になるだろうが、W杯はどうなのか。怪しいと言わざるを得ない。

 W杯はもとより五輪もドイツやフランスのようなスポーツ好き、スポーツ観戦好きの気質溢れる国で開催されるのが理想だ。日本はまだその域に達していない。個人的にはそう思っている。陸上、水泳、体操と言えば、五輪を代表する競技になるが、それぞれの日本選手権のスタンドは、なぜ埋まらないのか。その一方で、五輪の観戦チケットには、当選確率数パーセントというプレミアムになる。そしてその一方で、メダル候補が五輪本番でメダルを逃すと、税金という怖い言葉を持ち出して叱責する人が現れる。

 見習うべきは女子W杯のスタンドだ。日本に欠けている気質が、そこに凝縮されているような気がしてならないのである。