三菱重工業は25日、ボンバルディアの小型ジェット旅客機CRJ関連事業を買収することで合意したと発表した。両社によれば、事業譲渡契約が正式に発効するには、各国当局の審査などをクリアすることが条件にはなるが、2020年上半期までには必要手続きが完了する見通しであるとしている。

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 6月5日に航空関連ブログ「The Air Current」のスクープにより、両社が買収に向けて交渉中であることが明らかになった。両社もこの事実を認め、早ければ6月17日〜23日に開催された「パリ航空ショー」の期間中にも正式発表があるのではないかと、取り沙汰されていた。

 買収額は約5憶5,000万ドル(約580億円)で、ボンバルディアの債務約2憶ドル(約210億円)も引き受けるとのことである。

 今回の買収により、三菱重工は、ボンバルディアのCRJ関連事業及びカナダと米国にある4カ所のサービス関連拠点も取得することになる。もちろん、傘下の三菱航空機が開発中の小型ジェット旅客機、「スペースジェット」(旧MRJ=三菱リージョナルジェット)の開発及び受注の推進を目的とするものである。

 三菱航空機は先のパリ航空ショーにおいて、MRJから「スペースジェット」に名称変更し、M90(90席クラス)を地上展示した。従来は90席クラスを主体に売り込みをしていたが、今後は70席クラス「Spacejet M100」を主体にするとしている。

 これは、北米市場を見据えた戦略で、「スコープ・クローズ」という労使協定に準拠するためのものだ。この協定は、米国の航空会社とパイロット組合の契約で、リージョナル航空機の座席、大きさ、重量などの制限を定めるものである。航空会社ごとで多少の相違はあるものの、「座席数は最大76席、最大離陸重量は39トン」で合意されている。

 この協定は現在次回更新の交渉が各航空会社で進められているが、当初航空機メーカーが目論んでいたように緩和されるかどうかは、不透明な状況だ。もし緩和されなければ、三菱航空機の90席モデルは条件を超過しており、北米市場での販売は困難である。そのため同社では、かねてより70席クラスの開発も進めていた。

 三菱航空機によれば、パリ航空ショーにおいて、北米の顧客とM100型機15機受注の覚書を締結したとのことである。今年末までに設計の詳細を決定のうえ、2023年の量産体制を目指すとしている。