指揮官として苦悩する部分についても語ってくれた福西監督。「言い過ぎても、言わな過ぎてもだめ」と選手との距離感にも気遣いを見せる。写真:田中研治

写真拡大 (全5枚)

 南葛SCは6月19日時点で7節を終え、4勝1分け2敗の4位。5節の三菱UFJ銀行戦では大量8ゴールを挙げるなど、そのポテンシャルは随所に発揮され、上位をキープしている。しかし、「性格上、1試合でも負けるのは大嫌い」という福西崇史監督には耐え忍ぶ試合が続いているようだ。
 
 関東リーグ昇格を目指す南葛SCを率いる福西監督の思考に迫る本インタビュー企画。第2回では、東京都リーグで戦うことの難しさと、それに伴うチームづくりや選手たちとの向き合い方、さらには指揮官自身の監督としての心構えについて話を聞いた。
 
――◆――◆――
 
「リーグが始まって、まず『南葛SCに勝ってやろう』という相手の意気込みが凄いと思いました。もちろん強いチームと対戦する場合はそのような心構えになるものですが、思っている以上に気持ちを出してくる。一つひとつのプレーにも気迫がある。そこで自分たちが受け身になってしまった時点で、ペースを失ってしまいます」
 
 ここまでで印象深かった試合としては、第4節の駒澤大学GIOCO世田谷戦を挙げる。0-2と、今シーズンのリーグ戦で初めて敗戦を喫した試合だ。運動量が豊富な大学生の選手に前へ前へと圧力をかけられ続け、受け身になったことでペースを失い、その推進力に逆らえないままボールをゴールに押し込まれた。
 
「チームにとって気を引き締めなきゃいけない部分が表われた試合であり、自分の中でも、サッカーは簡単ではない、と再確認させられる試合でした。試合の入り方については、気持ちをもっと出すように言い続けています。入りが悪いと相手に勢いを与えてしまうので、先に叩くぐらいの強い気持ちが必要。意識改革はしっかりしていかないといけません」
 
 自身、全盛を誇ったジュビロ磐田時代に闘志をむき出しにしてくる相手を幾度となく黙らせてきた経験がある。
 
「当時はどの対戦相手も、目の色が違っていました。そんな相手を断ち切るためには、最初から仕掛けなければいけません。早々に得点を奪うか、何も通用させないようにする。勢いをつけさせてしまうから苦戦するんです。終了間際に失点し引き分けた、開幕戦の明治学院スカーレット戦もそう。相手に『まだいける』と思わせているからで、戦意を断ち切っていない。選手にはそういう話をしているので分かってくれていると思います。でも、具体的にどうしたらいいか分からない状態。個々にやりたい気持ちはあってもチームとしてやれていないのが歯がゆいですね」
 
 選手たちの口からは第2戦後のミーティングで、対戦相手の気持ちの強さを感じる話が出てきたという。
 
「選手たちが自覚してくれない限り、僕がいくら口を酸っぱくして言ったところで効果はない。そういう意味では、選手たちの反応は嬉しかったです。選手たちのことを徹底管理して、思ったことをやらせるタイプの監督もいます。でも僕は選手たちに気付きを促して、自身で考え、動き、乗り越えていってほしいと考えています」
 
 福西監督は選手たちを信じる。なぜなら、信じるに足る根拠があるからだ。
 昨シーズンは選手として南葛SCに身を置き、今シーズンからは監督として南葛SCを見ている福西監督には、はっきりとした変化が見えている部分がある。
 
「練習の雰囲気がまるで変わりました。昨シーズンより週の練習が1回増えましたし、厳しさがあります」
 
 練習は基本週4回。福西監督もできうる限り参加する。おかげで葛飾区の地理にもだいぶ明るくなった。練習メニューには自らプレーヤーとして参加することも。
 
「まず昨シーズン、僕も含めて悔しさを味わった選手たちの成長が確実に必要だと思っています。あの悔しさは味わった者でしか分かりませんから、彼らが新しく上のカテゴリから加入してきた選手たちに気持ちを伝えなければいけない役割を担っている。自分もあの悔しさを知っているからこそ、チームの方向性をつけやすいと言えます。自分ももしかしたらまた出場するかもしれないし…ってそれはないですけど(笑)。さらに、彼らが成長することで、上のカテゴリから来た選手ものうのうとしていられなくなる。実際、頑張ってくれているぶん、刺激のある状況が出てきています。これをもっと続け、活性化することで選手個々が高いレベルで融合してチームがひとつになっていくのかな、と」