布田 尚大 / 株式会社drapology

写真拡大 (全6枚)

自分が運営するdrapology(ドレイポロジー)という株式会社はポリシーに

go ETHICALbe Dopestay BUSINESS

を掲げています。なので、無印良品やスマイルズみたいな、文化的な信条があって、地球環境や社会情勢への配慮といった社会性はさらっとしっかり実装していて、しかも一定以上に事業規模を拡大している企業が好き。好きが高じて遠山代表はじめ、スマイルズのクリエイティブの中核を担う方々にインタビューさせて頂き、スマイルズの新規事業創出の方法をマーケティングの学会で発表させてもらったこともあります。


(発表スライドの最初のページ。発表概要はこちらから。所属・肩書きは当時のものとなります。)


◆ 意味のイノベーションという手法

その発表の際、現状のナレッジや既存研究の整理のため、デザイン思考についての色々な本を読んだのですが、その時にたまたま知った下記の『突破するデザイン』で総合的に解説されている「意味のイノベーション」って考え方にめっちゃはまりました。


(※『突破するデザイン』の書影。こちらの版元ドットコムから引用しています。)


意味のイノベーションとは、ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンディ教授が提唱する、イノベーションを実現するための方法論。ざっくり言うと問題解決のためのソリューション(HOW?)ではなく意味(WHY?)に着目し、「私たちが人々に愛してほしいものは何か?」という主観的な問いを重視しながら、プロダクト・サービス開発を進める手法です。日本では、自分も少しお付き合いのある立命館デザインマネジメントラボが包括的に研究を進めています。あまり国内の実践事例を見かけないのですが、自分もこの手法を使いながら、ブランドの新規立ち上げプロジェクトを進めていたりします。


◆ 意味と社会学

少し昔の話になりますが、自分は大学の学部と修士課程で社会学の理論研究をやっていました。当時は言説/ナラティブ(物語)/表象/社会的構成主義といった日常ではまず使わないキーワードをもとに研究を進めていたのですが、これらは多かれ少なかれ事象や現象の「意味」に着目して議論をするための概念でした。
それに興味を持ったのは、さらに時間を遡ること数年、大学浪人時代によく会っていて、今はドイツで哲学の研究者になっている幼稚園からの友人の「哲学講義」がすごく面白かったからです。うろ覚えですが、最初に教えてくれたのは20世紀を代表する哲学者の一人ミシェル・フーコーの『狂気の歴史』だった気がします。


(※『狂気の歴史』の書影。こちらの版元ドットコムから引用しています。)


死ぬほど簡単に粗く内容を要約すると、「狂気」とされているものは時代によって賛美されたり排除されたりと、意味づけがめちゃくちゃ異なっていることを示している書籍です。こういう一見当たり前に見える事象や現象が実は全然当たり前じゃないことを看破するのは社会学の1つの特長で、自分がすごく好きなところです。生きづらさや差別や貧困などの社会課題を明らかにして、変革するための契機になると思うからです。


◆ 社会変革のための意味のビジネス

上述した『突破するデザイン』ではApple、任天堂Wii、スイスの時計ブランドSwatchなど、様々な意味のイノベーションの例が出てきて、どれも魅力的で鮮やかで興味深いのですが、自分としては、フーコーが『狂気の歴史』が扱ったような、社会的に抑圧され、偏っている現象や事象を解き放つための事業が、すごく革新的で最高にクールな「意味のビジネス」だと考えています。それはパワポ資料の1スライドで完結するような安易な市場の再定義とかポジショニングマップ、「デザインの力によるリブランディング」とは異次元の深度を持ちうるし、社会を変えること=膨大なマーケットを創造することなので、事業としてめちゃくちゃ儲かる可能性も内包していると思っています。


◆ illuminateという意味のイノベーション

そしてこれを地でいっている事業の1つが、自分も携わる生理用品のプロジェクトilluminateです。(※外部のアドバイザーやプランナーとしてではなく、筆者である布田が「中の人」として参画しています。)illuminateは、話題にあげずらく、こっそり買うことを是とする空気もあり、したがって適切な情報と商品が十分に行き渡っていない生理用品を知り、選び、購入することを通して、より多くの人が、より多くの選択肢を持ち、自由に選択できることをビジョンに掲げています。つまり生理や生理用品の意味を革新するプロジェクトです。


(公式Webページはこちらからも。)


自分の身体には生理はこないし、参画をしたことを色んな人に話すとキョトンとした顔をされることもあるのですが、こういう思考の文脈があるから自分はコミットしました。社会全体の変革を射程にしていて、かつ個々人の私的なんだけど実はとても社会的な深いペインを解消しうる事業は、そうない。現在行なっているilluminateのクラウドファンディングで、代表のハヤカワ五味はデザインによる社会変革について言及してますが、デザインの機能の1つは情報整理で、情報とは意味です。デザインとは、本質的に意味を扱う道具なんだと思います。


(クラウドファンディングのページはこちらからも。)自分は嗜好的にラストワンマイル系のサービスとかほぼ顕在化した需給のマッチングサービスとかはあんまり面白味を感じないのですが、illuminateは冒頭drapologyのポリシーであるgo ETHICAL、be Dope、stay BUSINESSを体現しているし、意味のイノベーションの新しいケースになると思っています。精力的に活動をしていきますので、ぜひご注目してもらえたら嬉しいです。