巨人・坂本勇人(左)と日本ハム・大田泰示【写真:Getty Images、荒川祐史】

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日本ハム3年目の今季は打率.285&13本塁打&47打点「打撃の引き出しが増えている」

 日本ハムの大田泰示外野手がリーグ戦再開後の奮闘を誓った。今季は72試合出場し、打率.285、13本塁打、47打点。主力選手としてリーグ優勝争いの力となっている。巨人からトレード移籍3年目。大田の現在地に迫った。

 周囲を驚かせたトレード移籍は大正解だった。大田は開幕から強打の2番打者として君臨。巨人時代は未完の大器のまま1軍定着できなかったが、北の大地でレギュラーとして活躍している。

「(1軍定着は)自信になるというより、より考えが深くなるというか……。自分の経験の中でこうした方がいい、ああした方がいいと、より自分の打撃の引き出しが増えていると思います。試合に出るにつれて、いい意味での慣れも出てきています。最低限これをやれば、いい結果が出るんじゃないか。そういうのもあります」

 巨人では16年の62試合が最多出場だった。毎シーズン覚醒が期待されたが、12球団で1、2を争う分厚い選手層に跳ね返されてきた。大田が1、2軍を行ったり来たりする中、阿部慎之助、坂本勇人、村田修一、長野久義らが絶対的レギュラーとして君臨していた。

「僕が入った時から何年も何年もずっとレギュラーに出ている選手がいて、その先輩方がきっちりと成績を残す。今になっては、その先輩方の苦労や凄さだったり、あるいはその時の準備の仕方、行動の1つ1つが今の自分にとって、いい教科書になってくれています」

「勇人さんは歳が近くて、僕が入った時からレギュラーとして出ている。苦労しながらも年々成績を上げて……。(学んだことは)試合前のルーチンもそうだし、試合に入る中で『この投手はこう打った方がいい』とか。アプローチの仕方は選手それぞれですけど、アプローチの考え方は勉強になっています」

 巨人時代の大田にとって坂本は“憧れ”だった。年齢2歳違いの先輩から、今後への励みを得た。14日の古巣・巨人戦(札幌ドーム)、5回2死の守備。坂本勇人の右翼フェンス際への大飛球に、フェンスに体をぶつけながらジャンプしてキャッチ。抜けていれば長打は確実の大飛球。坂本勇から「ナイスキャッチ」と言わんばかりにヘルメットを取って称えられた。

「今やジャイアンツのキャプテンで、本当に看板を背負っている人が……。後輩の僕からしてみれば、嬉しかったです。勇人さんは凄い選手。そして心があるなと。声をかけてくれたり、『移籍してよかったな』と言ってくれますし。それは勇人さんだけでなく、阿部さんもそうですが、プレーで勇人さんがああやってくれたのはすごく嬉しかったです」

大田にとって坂本勇は“憧れ”「凄い選手。そして心のある」

 坂本勇とは巨人時代に1月のグアム自主トレで汗を流し、シーズン中も食事によく誘ってくれた仲だ。巨人時代には再三“ゲキ”を受けていたという。

「ずっと期待してもらっていたというか、気にかけてもらっていました。『オマエが結果出さなあかんねん』、『結果出さないと、そろそろまずいぞ』みたいなことも言ってもらっていました。巨人時代はずっと(言われてました)。褒めてくれた時もありました」

 翌15日の試合前に坂本勇から「捕ってるじゃねぇよ」と冗談交じりに言われたというが、その表情は嬉しそう。「ジャイアンツで若い時から出ているのは本当に『すげぇな』って思います。僕はトレードでファイターズで試合に出ているけど、勇人さんみたいな存在には全然及ばない。そういう先輩から(脱帽)してもらったのは嬉しかったですね」と繰り返した。

 今年6月9日に29歳。他球団では中堅クラスでも日本ハムでは自身より年下の選手が目立つ。大田からも「若い選手たち」と後輩を気遣う発言が増えてきた。

「このチームでは僕より下の選手ばかり。トレードした時から、そういう気持ちになりました。勇人さんもそういうことをジャイアンツで感じながらプレーしていたと思う。若い時に経験しながら、成長していって、今や球界を代表する遊撃手でジャイアンツのキャプテン。自分もファイターズに来て、勇人さんの苦労というか……。(坂本さんは)よく言っていたじゃないですか? 『若手がしっかりしろよ』とか、『自覚を持って、危機感を持ってやれ』とか。本当に、そういう気持ちを僕はファイターズに来て感じることができました」

 チームは21日からの中日3連戦(ナゴヤドーム)で3連敗してリーグ4位。それでも、首位・楽天と3ゲーム差で28日からリーグ戦を再開する。

「チームは生き物。今みたいに連敗したり連勝したりが、うちのチームは激しい。若さで勢いがあるし、若さが裏目に出てミスが出たりする。いい意味で勢いのあるチームだと思う。僕は11年目だけど、背中で見せながらプレーで見せながら。みんながやる気になるように。そうやっていたら後輩もやりやすいだろうし、優勝も手に届くと思う」

 巨人時代はとてつもなく大きかった坂本勇。その先輩を追っかけ、大田は日本ハムでチームリーダーとなっていく。(小谷真弥 / Masaya Kotani)