シミュレーションとジャッジされた柏は主審に猛抗議した。写真:滝川敏之

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[ACLラウンド16第2戦]広島3-2鹿島/6月25日/広域公園
 
 柏好文の言葉はいつも以上に語気が強く、そして悔しさからか、彼の目は赤くなっているようにも感じた。
 
 ホームで行なわれたACLラウンド16第2戦、広島は鹿島に3−2で勝利。しかし、第1戦を0−1で落としていたため、アウェーゴール数の差で敗退となった。もちろん、ベスト8進出を逃した悔しさもあるが、柏が感情的になったのは理由がある。それは、82分のシーンだ。
 
 ペナルティエリア右から柏が相手DFと競り合って倒れながらクロスを上げると、このボールをパトリックが押し込んでネットを揺らした……と思われたが、アリ・アルカイシ主審はノーゴールと判定。柏をシミュレーションとジャッジしたのだ。この場面について、イエローカードを提示された柏が口を開いた。
 
「審判にはシミュレーションと言われました。どういう状況であれ、ゴールに直結するボールを出しているので、ゴールになったという事実があると思います。倒されたか、倒されてないかというよりかは、その状況のなかでもしっかりとパスを出して、ゴールに直結するボールを出しているという事実がある。
 
 シミュレーションというよりかは、もらいにいったダイブでその状況が流れる場合とは違っているわけで、決定的なパスを出しているという事実がある。そういう意味では、そこで勝敗が決定する。僕たちの意見としては、ゴールに行くまでの過程として、最後までしっかり見て欲しかったというのはあります」
 そうは言っても柏は「勝負事で審判も人間がやっていることなので、受け入れがたいジャッジは多かったですけど、それも含めての勝負」と述べ、レフェリーの判定も勝負の一部としている。

 だからこそ、ベスト16敗退という結果については、ジャッジに納得がいかなくても受け入れるしかない。そのうえで、柏は悔しさをこらえて、「鹿島には自分たちの分も頑張って欲しいとピッチ上でも伝えた」。さらには「日本勢として、アジアの舞台で活躍してほしいと思います。自分たちは負けた身なので、応援することしかできないです」と鹿島にエールを贈っている。
 
 悔しくて、悔しくてたまらないはずなのに、目の前のライバルを応援する柏の姿勢は、プロの鑑と言えるだろう。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)