加部氏が考案する東京五輪の予想布陣。

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 結果と経験の綱引きになったコパ・アメリカ(以下コパ)は、収穫も手にした反面、中途半端な実験に終始した印象も否めない。もちろん南米側から漏れて来た「大会を舐めている」との指摘は的外れでしかないが、準備期間も手段も不十分な東京五輪へ向けての強化を第一義とするなら、最後まで堂々と方針を貫けば良かった。大会に応じてどんなメンバーを送るかは各国協会の諸事情に即した裁量に任されており、例えば王国ブラジルは2001年コンフェデレーションズカップを捨てて、翌年の日韓ワールドカップを制している。
 
 逆に今回の日本は、五輪世代の選手を5人もベンチに置いたままにするなら、結果追求に最善を尽くしても良かった。またもし本当に今回招集した選手たちで来年金メダルを目指すなら、準々決勝進出を賭けた重要な一戦こそ、百戦錬磨の川島永嗣や岡崎慎司ではなく、大迫敬介や上田綺世で挑戦するべきだった。 
 
 3戦を通して明らかになったのは、冨安健洋、柴崎岳、久保建英の縦の軸が揃わないと五輪本番で上位進出を狙うのは難しいということだ。ただし柴崎はオーバーエイジ(OA)なので、所属クラブ側が招集を拒む権利を持つ。柴崎は謎に包まれた選手で、大半の出場した試合では期待以上のパフォーマンスを見せ、しかも大舞台になるほど勝負強い。攻撃面での視野の広さと、それを活かす展開力には定評があり、守備面での読みも確実に研ぎ澄まされている。つまりこれほど所属クラブで過小評価され続ける選手も珍しく、逆に何かのきっかけで価値が急騰する可能性を秘めている。
 
 もちろんそれは日本サッカー界にとって喜ばしいことだが、その時はクラブ側から五輪参加を拒否されるリスクが高まる。だが森保一監督の青写真には、柴崎抜きの想定が用意されている様子はない。もし柴崎を招集できなければ、代役候補はOAなら小林祐希、大島僚太あたりが浮かぶが、コパには未招集。年齢枠内では田中碧が最有力で、代表2試合目のエクアドル戦で著しくパフォーマンスを改善した板倉滉との元川崎コンビが実現するかもしれない。もっとも板倉にはライバルが豊富で、中山雄太、高宇洋、斎藤未月らが凌ぎを削ることになる。
 
 一方で不可思議だったのが、直前のキリンカップで慌ただしく3バックを試しながら、コパ3戦をすべて4バックで戦ったことだ。結局3バックはワールドカップ予選を睨むオプションで、どうやら東京五輪の4バック採用は動きそうもない。ところが現状では日本全体を見渡してもサイドバックの選択肢が限られている。今回左は杉岡大暉が3戦ともフル出場し、なんとか定着させたいという指揮官の想いが滲み出た。一方右は橋岡大樹の復帰待ちなのだろうが、両サイドともに代えが効かない状況なのを考えると、OAで室屋成の起用は考えておくべきかもしれない(理想は酒井宏樹だが、さすがに招集が難しい)。
 
 2列目に最も人材が豊富なのは通常通りだ。年齢枠内なら右から三好康児、久保、安部裕葵が有力だが、コパでの久保との相性を見ても、森保一監督は中島翔哉のOA招集を考えているはずだ。さらにサイドからの崩しを強調するなら相馬勇紀や好調横浜の原動力になっている遠藤渓太などオプションも少なくない。
 
 一方最前線は得点源として、オフ・ザ・ボールの駆け引きに長けた上田の株が急上昇した。ただしポストワークやフィニッシュの精度などに課題も残り、トゥーロン国際でアピールした旗手玲央と同じく大学生なので、五輪を託すには日常の環境が緩いのが気がかりだ。逆にこれから1年間で、Jクラブ側にも育成面での奮起を促したい。
 
 そしてそれはセンターバックにも通じることで、中山、町田浩樹、立田悠悟らに十分なメドが立たなければ、コパ同様に植田直通のOA招集案が浮上するかもしれない。
 
文●加部 究(スポーツライター)