2018年7月に発売されたSUBARUのSUV「フォレスター」(撮影:風間仁一郎)

SUBARU(スバル)のSUV(スポーツ多目的車)「フォレスター」がフルモデルチェンジしてから、約1年が経とうとしている。

フォレスターは、1997年に誕生した。当初はステーションワゴンの最低地上高をやや高めにしたといったような位置づけで、今日のSUVに近い姿となったのは2007年の3代目からで、現行車で5代目となる。

販売台数はまずまずの推移

スバル1000以来続く水平対向4気筒エンジンと、1970年代初頭からの4輪駆動技術に支えられ、フォレスターは独自の存在感を持ち、SUVとしての優れた性能が底堅い人気を保ってきた。


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そのうえで、5代目フォレスターが目指したのは、スバルの企業スローガンである「安心と愉しさ」を体現するような、乗る人すべてが楽しく、快適な空間を共有できるクルマである。あわせて、電動化技術として水平対向エンジンを活かしたハイブリッドシステムのe-BOXERの搭載や、インプレッサで先に採用された歩行者保護エアバッグなどの安全装備も充実させている。

国内での発売は昨年7月からだが、その2カ月前から先行予約が行われ、最初の約1カ月で4000台を超える受注を得た。これは、月の販売計画である2500台を超える数であった。

その後の推移を日本自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位で見てみると、2018年8月に3000台超の販売台数で22位となり、同年9月には5000台超で18位、10月も4000台弱で20位となった。それ以降も、月平均3000台強で推移するなど、当初目標をクリアしており、まずまずと言えそうだ。

5代目の現行フォレスターで目新しいのは、ハイブリッドのe-BOXERの存在だ。水平対向4気筒エンジンと変速機の間に薄型のモーターを挟み込み、若干のモーター走行を可能にしながら、エンジン出力をモーターで補って、加速と燃費を改善するハイブリッドシステムである。


大きな荷室はフォレスターの特徴の1つだ(撮影:風間仁一郎)

水平対向エンジンは、どうしても燃焼室の径が大きくなりがち(ビッグ・ボア)で、燃費を改善しにくい傾向にある。またそれは、ピストンストロークが短い傾向(ショート・ストローク)をも示しており、ことに発進の際など低回転域でのトルク不足を生じやすい。そこを、低速から大トルクを出す特性のモーターに助けられる意味は大きい。

先に、XVでこうしたハイブリッド化を行っているが、その当時はスバル自身もあまり積極的な訴求を行っておらず、今回のフォレスターのように主力動力の1つに位置づけられるのは初めてのことになる。

スバル車に対する消費者の意識も変化

消費者の期待もここにきていよいよ高まったとみえ、e-BOXERとガソリンエンジンの販売比率は、55:45とのことで、ハイブリッド車が勝ることになった。スバルが永年にわたり特徴としてきた水平対向エンジンと4輪駆動の組み合わせは、求める性能として低重心と4輪駆動力制御があり、このことはバッテリーを床下に搭載し、エンジンより緻密な制御を行えるモーターを使う電気自動車(EV)でより達成可能だ。その道筋に、今回のe-BOXERは位置しているといえる。

こうした顧客の意識の変化は、人気の装備を見ても明らかになりつつある。販売の現場では、運転支援技術としてのアイサイトや、歩行者エアバッグなど安全装備への評判が高いという。また、公的機関として安全を評価するJNCAP(自動車アセスメント)による2018年の評価において、歩行者エアバッグの装備により衝突時の歩行者保護で一段高い評価を受けたフォレスターは、大賞を受賞している。

これまで、スバリストと呼ばれた愛好家たちは、伝統の水平対向エンジンや、世界ラリー選手権(WRC)などで活躍したターボエンジン、そして4輪駆動への憧れを最大にしてきた。だが、近年のスバル車の購入者の視線は、安全性に大きく傾いてきている。そのうえで、EVへ向けた電動化は、アイサイトなど安全性を含めた運転支援性能を飛躍的に高める可能性も秘めているのである。

フォレスターの販売動向は、そうした時代の変化と社会的な要求、また顧客のスバルへの期待の変化といったことも、示しているといえそうだ。

もう1つ、フォレスターで関心の集まる装備が、4輪駆動制御のX-MODE(エックス・モード)である。X-MODEとは、4輪の駆動とブレーキを制御することにより、未舗装の悪路でもタイヤを過度に滑らせることなく的確に安定した走りを確保する機能である。

実際、本格的4輪駆動車で限界の走行を試す専用コースで試走したことがあるが、X-MODEを使うことにより、速度調整さえ慎重に行えば誰もが安全に走破できる能力を発揮する。


フォレスターの運転席(撮影:風間仁一郎)

ほかのSUVでは、悪路走破を主体とする本格派4輪駆動車に比べ、悪路での走行性能ではやや見劣りのするのが一般的だ。フォレスターは、永年の4輪駆動技術を積み上げ、独自の悪路走破性を実現してきた経緯がある。

そこに、近年ではマツダがCX-5などでの4輪駆動性能を高めてきた。目指したのは、スバルの4輪駆動車の性能だ。競合の動きを意識して、スバルもさらに精緻な4輪駆動制御へ進化させ、それがフォレスターに適用されている。

こうした非日常的な4輪駆動の機能や性能については、トヨタも意識し、最新のRAV4で新しい4輪駆動制御を実用化している。そのように、フォレスターは競合他社に指標とされる4輪駆動性能を備えてきたのである。

アメリカでも販売は好調

このフォレスターの人気は、主力市場となる北米でも手堅いようである。アメリカは、都市部を離れると茫漠とした荒野が目の前に広がる広大な国である。このため、SUVの人気も見た目だけでなく実用の部分を含め高く維持されている。そうした中で、フォレスターはもとより、レガシィのアウトバックもスバル人気を二分する人気車種である。

新型の5代目フォレスターは、昨年秋からのアメリカ販売開始であったにもかかわらず、2018年の販売台数は前型を含めて年間17万1000台強、アウトバックは17万8000台強という結果だ。販売台数の実績からも、両車は人気を二分している様子が見えてくる。

なおかつ、フォレスターは秋以降の新型投入にもかかわらずアウトバックと近い販売台数といった棲み分けであるから、新型で販売が進む今年の実績ではフォレスターがアウトバックを上回るかもしれない。

そうなれば、日本とアメリカでフォレスターは最量販車種になる。フォレスターは、同車の狙い通り盤石の商品力を持つと評価できるだろう。発売開始から1年の成果としては、“花丸”といえるのではないか。