途中投入された菅澤。限られた時間でチャンスを創出したが…。 (C) REUTERS/AFLO

写真拡大 (全2枚)

 女子ワールドカップは23日から決勝トーナメントが始まったが、グループリーグ最終戦でイングランドに2−0で敗れた「なでしこジャパン」には、開催国フランスのアナリストたちから、強烈なパンチが次々に飛び出す事態となってしまった。
 
 19日のグループリーグ第3戦、下馬評では「強豪対決」「見もの」と期待されていた。だからこそ、フランスでの試合中継はゴールデンタイムの21時からで、中継局もこれまでの『Canal+Sport』より一段ランクの高い『Canal+』だった。だが早い段階から展開は消化試合の様相を呈したため、批判されてしまった。

 解説を担当したのは、知日家ではなさそうなジェシカ・ウアラ=ドゥモーさん。冒頭から「彼女たちはテクニックとタクティックがすごくいいそうですが、驚くほどアスリート能力に欠けていますね。パワーがほとんどなく、スピードさえあまりないです」と失望を滲ませていた。

 ハーフタイムのスタジオ討論では、「女子フットボールの歴史的大国である日本は、ステータスを引き受けていないし、そもそもやる気も見えない。明らかに東京オリンピックに向けて準備していて、それが見え見えだ!」と強烈な批判すら飛び出したのだ。

 とはいえ、終盤にいくつかのシュートシーンが出た際は、さすがに賛辞も出た。

 78分に交代出場した菅澤優衣香が、胸トラップからシュートに持ち込むと、ドゥモーさんが「さっきのシュートよりはいいですが、ポジショニングがうまくできなかったですね」と語った。だが、82分に再び菅澤が右足を伸ばしてゴール枠をとらえそうになると、「いい選手です、素晴らしい選手です」とついに高評価が与えられ、男子の実況でも知られるステファン・ギーも「彼女を先発にして試合をスタートした方がよかったのになあ」と微笑んだ。

 だがその喜びもつかの間、ドゥモーさんの憂いは続いた。85分の岩渕真奈のシュートにも「コントロールはよかったのですが、枠内をとらえられませんねえ」と嘆息。「日本の世代交代はまだ全然できていません」、「スペクタクルが見られると期待していたのに、まるっきり…」と失望感を露わにした。
 ちなみに、この試合は夜の討論番組『L’EQUIPE DU SOIR』でも話題に上った。

 バルサ通で知られるエリック・ブラン氏(元ラグビー選手)は、「女子フットを今日初めて見たが、パスをよくつないでいてなかなかよかった。フィニッシュできないところだけが問題だが、個人的には好きになった」と、名こそ挙げなかったものの、日本を想定してポジティブ面を指摘した。

 だがこれを受けた『France Football』誌のナビル・ジェリット記者は、怒りを滲ませて興奮ぎみに「俺はハッキリ言ってやるぞ! 日本はラスト30メートルでいっさい何もできなかった! まるで何もなかったのだ!」と痛烈なパンチを返すという有様だった。

 批判的な空気が流れるなか、ポジティブな要素で日本が取り上げられたのは、キーパー問題だった。「ヤマシタ(山下杏也加)とイングランド代表GKカレン・バードスレーは女子GKをめぐる議論にピリオドを打ったか」のテーマで討論になったのだ。

 というのも、「フィールドでは心地よいプレーが見られるが、GKだけは目が当てられない」が、これまで女子フットボールの定評だったからだ。だがこの日は、山下の男子選手顔負けのスーパーセーブが何度も映し出され、日本の救いになった。

 翌20日付『L’EQUIPE』紙、も「日本のGKアヤカ・ヤマシタがビッグスケールのセーブを連発しなかったら、スコアはもっと重くなっていたかもしれない」と称賛した。一方、攻撃については「岩渕と菅澤が次々輝いたが、ゴールには至らなかった」と、前夜での討論番組でも取り上げられた”決定力不足”を、改めて突き付けた。

 対戦相手のイングランドについては、「8人もメンバーを変えて臨んだにもかかわらず、どちらかというとたやすく日本を打ち破った」、「人食い鬼アメリカに次いで、かつてなく本格的に優勝候補に浮上した」と勝利を分析。一方、日本については、「(日本の)監督も不安を隠していなかった」と結論づけている。

 つまり、日本はワールドカップの大舞台で期待を裏切ってしまった。厳しい視線が注がれている彼女たちが次に迎えるのは、決勝トーナメントのオランダ戦。果たしてなでしこは、ここから奮起し、形勢逆転できるだろうか。

文●結城麻里
text by Marie YUUKI