6月23日は沖縄慰霊の日。

1945年6月23日に沖縄戦の組織的戦闘が終結したことにちなみ、アメリカ施政権下の琉球政府および沖縄県が定めた記念日。この日は沖縄県内の官公庁は休日となり、糸満市の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行なわれる。

沖縄戦とは、1945年沖縄諸島に上陸したアメリカ軍とイギリス軍を主体とする連合国軍と日本軍との間で行われた地上戦のことで、多くの民間人がこの戦いに巻き込まれて命を落とした。

74年経った今でも語り継がれている沖縄戦。時代とともにこの歴史的記憶が風化しないよう、沖縄戦をモチーフにした映画も作られ続けている。

そこで今回は、沖縄戦を描いた映画8本をご紹介しよう。

ひめゆりの塔』(1982)

純粋に健気に

1945年3月24日沖縄師範女子部と県立第一高女の生徒200名は、軍の命令によって「ひめゆり部隊」と呼ばれる特志看護婦となり、陸軍病院に配属される。

同監督による同名映画(53)を自身でリメイク。脚本も同じなので両者を見比べてみると興味深いが、今回は沖縄現地でロケを敢行しているのが特徴だ。従軍服姿の可憐な女子学生が、たどたどしい手つきで一生懸命防空壕を掘ったり、負傷者の手当てをしたりする様子を見ると、その後の運命を知っているだけに胸がきゅうっと痛む。

アメリカ軍がいよいよ上陸し、砲弾を避けながら彼女たちは南へと逃げていく。そんな極限状態にありながら、束の間みんなで川遊びをするシーンの刹那的な美しさよ。彼女たちの若さと無邪気さが一斉に弾けて、それは命の最後の輝きだ。生徒たちの思いを受け止める先生の気高さと強さが尊く、大人はこうありたいものである。

『海辺の生と死』(2017)

沖縄の小さな島で

太平洋戦争末期の奄美群島・カゲロウ島で国民学校の代用教員を務める主人公は、島に赴任してきた海軍中尉の人柄に惹かれていく。

共に作家である島尾ミホ・島尾敏雄夫婦の出会いをモチーフにした作品。戦況が悪化するにつれ、本土から遠く離れた小さな島でも空襲警報が鳴り響くようになると、それまで穏やかに暮らしていた住民たちは、次第に死を意識するようになる。海の向こうから災いがじわじわと近づいてくる恐ろしさよ。

深い緑と海に囲まれた美しい自然。現地の人たちは沖縄の方言をしゃべり、島唄を口ずさむ。2人は手紙で気持ちを伝えあい、海辺で秘密の夜デート。満島ひかりの一途な思いが際立つのは、これが戦時中の恋愛だから。恋人を特攻隊に送り出す側の悲痛な叫びが、聞こえてくる。

『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971)

沖縄のために生きろ

太平洋戦争の戦況が悪化してきた1944年、サイパン島が陥落すると、政府は沖縄を本土防衛の第一線とみなし、大兵力を次々と送り込んでくる。

沖縄戦の全貌を描いた作品で、「日本人なら一度は観るべき」と言われ、庵野秀明も100回くらい観たという戦争映画の傑作。軍部内の様子が具体的に示され、上官のあまりにもダメな言動が笑いを誘う。小林桂樹・丹波哲郎・仲代達矢という豪華な無責任トリオと、何があっても冷静な軍医大尉役の岸田森が見どころだ。

助けてもらえることを知らず、自ら死を選んでしまう日本人。沖縄戦でいかに犬死が多かったことか。沖縄は本土のためにあるという国の考え方や、あれよという間に悲惨な結末になだれ込んでいく日本的な構図。民間人たちが巻き込まれていく姿も、お涙頂戴なしでスパッと描き切った新藤兼人の脚本が光る。 

『ハクソー・リッジ』(2016)

命を救い続ける

第二次世界大戦中、戦場でも「人の命を奪ってはいけない」という宗教的信念を貫いて疎まれていた兵士が、衛生兵として沖縄戦に参加することになる。

「ハクソー・リッジ」とは、沖縄で日米両軍の激戦地となった断崖絶壁のこと。人を殺そうとしないので軍法会議にかけられた彼は、結局武器を持たずに戦場へ行くことを許され、敵味方の分け隔てなく治療して多くの命を救った実在の人物である。ちなみに彼は、「良心的兵役拒否者」として初めて名誉勲章が与えられたという。

しかし、舞台となるハクソー・リッジで過酷な戦闘が繰り広げられている描写はあるものの、そこはアメリカ視線。沖縄住民について語られるシーンはなく、日本では賛否両論だ。なので、あくまでも主人公の行動を賛美するハリウッド系エンタメ作品として、楽しむべし。

『沖縄 うりずんの雨』(2015)

生々しい話を淡々と

沖縄戦で戦った元アメリカ兵と元日本兵、そして沖縄住民の証言を中心に、多大な犠牲を払ってきた沖縄の近代史に深く切り込んだドキュメンタリー。

12週間に及ぶ過酷な地上戦で、4人に1人の住民が命を落としたという沖縄戦。アメリカの国立公文書館所蔵の映像なども交えながらその真実に迫ったのは、なんとアメリカ人監督だった。戦後も基地問題に揺れ、平和を求めて戦う沖縄の人々。「沖縄戦」「占領」「凌辱」「明日へ」というタイトルだけを見ても、彼らの苦難の歴史が伝わってくる。

怒りと失望。沖縄が抱えるその2つの感情は、一体どこから来ているのだろう。「死ぬことしか考えていなかった」と当時を振り返るおばあちゃん。レイプをしたことを後悔しているアメリカ人兵士。アメリカ軍が当時の様子をきちんと記録し、貴重な映像を残してくれたのはありがたい。

『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995)

戦争に行くんだよ

1995年ラグビー場で相手にタックルした瞬間に意識を失った主人公は、気がつくと全身濡れながら行進する学生集団の中にいた。

第二次世界大戦で戦死した学徒兵たちの遺書を基にした映画『きけ、わだつみの声』(50)に続く映画化。戦後50年記念作品としてフィリピンでの撮影を敢行し、臨場感のある迫力映像を実現させた。

主人公がタイムトリップしたのは、1943年10月21日に行われた学徒出陣の大壮行会。そこで彼が知り合った3人のラガーマンそれぞれの運命を描く。兵役を拒否する現代の若者と、国のために命を投げ出す当時の若者。彼らが特攻隊や沖縄戦線で何を思いながら戦っていたのか。平和の尊さが身に染みる作品。

『STAR SAND 星砂物語』(2017)

戦争はイヤだから

2016年東京で暮らす女子大学生は、卒業論文の資料として教授から日記を手渡されるが、そこには1945年に沖縄の小島にいた16歳の少女の体験が綴られていた。

原作も脚本も手掛けている監督はアメリカ人。大学に何となく通い、周りにも馴染めないで毎日無気力に生きていた彼女が、戦時中の若者たちが何を考え、何を夢見て生きていたかを知り、平和のありがたさや命の尊さについて改めて気がつく物語だ。

沖縄戦から遠く離れた小さな島で独り暮らしをする少女。日本人とアメリカ人の脱走兵。この3人が奇妙な信頼関係で結ばれていくのは、「戦争から逃げた」という共通点があるから。ところが、それを許さない男の登場によって、彼らの世界は崩れてしまう。沖縄の美しい海と少女の瑞々しさが、人間の醜さや愚かさを浮き彫りにする。

『沖縄スパイ戦史』(2018)

裏の沖縄戦

沖縄戦の終結後も、沖縄北部ではゲリラ戦やスパイ戦が繰り広げられていたという衝撃的な事実を取材したドキュメンタリー。

沖縄基地問題を作品にしてきた監督とジャーナリストが、沖縄戦の知られざる真実に迫った問題作。この歴史的事実の裏には、陸軍中野学校出身の工作員たちの存在があったという証言があまりにも恐ろしく、まさかそんな映画みたいなことが…と身も心も凍ってしまう。

沖縄戦後も継続されていた少年兵によるゲリラ戦。地上戦のなかった八重山列島では、住民が危険な場所へ強制疎開させられ、その結果3,000人以上がマラリアで死亡。それを威圧的に指揮したのが、それまで好青年として慕われていた男だったというのだから、工作員の豹変ぶりにゾッとする。戦場となった沖縄が受けた傷は、かくも根が深い。

いかがでしたか?

知っているつもりでいても、まだまだ知らないことの多い沖縄戦。

最近はドキュメンタリー映画やアメリカ人監督による作品なども作られるようになり、決して関心が薄らいでいるわけではないことを物語っている。

今後も沖縄戦に関する新たな事実や証言が掘り起こされ、それが映画という形でより多くの人の目に触れることで、この歴史を広く知られるようになってほしいものである。